実機レビュー コムテック360°+リアカメラの2カメラドラレコ「HDR360GW」の評価

※2020年5月16日更新~実機レビューを追記しました。

こんにちは!ドライブレコーダー専門家の鈴木朝臣です。

コムテックから360°ドラレコ第二弾が発売されています。

同社の360°ドライブレコーダーと言えば、2018年7月に発売されている「HDR360G」がありますが、このモデルは何も知らない人が買うと期待外れに感じるらしく、激しく賛否が割れたモデルでした。

コムテック 360°ドライブレコーダー「HDR360G」のレビュー、評価
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というのは、他のほとんどの360°ドライブレコーダーと同様に少ない画素数で広範囲の映像を記録する為に、精彩感が低くナンバーの読み取り能力も絶望的に低い上に、後方の様子があまり良く映らないという欠点を持っているからです。

※改めて画質を検証した結果、ナンバー認識精度の低さは「絶望的」ではありませんでした。

無論、この欠点は他の360°ドラレコと共通である為、「HDR360G」が特別に劣っている訳ではないのですが、テレビCMやネットの広告、テレビのワイドショーなどで360°ドラレコが脚光を浴びた際には、360°ドラレコの欠点に触れる事など皆無に近い状態でしたので、こう言ったデメリットを知らないままに購入したユーザーが不満を抱いているのであろうと推察されます。

今回発売されている「HDR360G」はこれらの2つの360°ドラレコの欠点を一つだけ克服した2カメラ構成のモデルとなっています。

「HDR360GW」のスペック

「HDR360GW」のスペックは以下の表の通りです。

HDR360GWHDR360G
19.12発売18.07発売
1856×1856/27.5fps/HDR/WDR
1920×1080/28fps/HDR
1856×1856/29fps/WDR
フロント:500万画素CMOS
LED信号対応
前:180°×240°
後:水平136°
視野角:180°×240°
microSD付属32GB/最大32GBmicroSD付属16GB/最大32GB
GPS内蔵
駐車監視モード
常時録画+衝撃録画(5fps)/自動起動
専用ケーブル
HDROP-014
「ドライブレコーダーの持込取り付け」が出来るお店

仕様表を見る限りは「HDR360G」と共通している点が多いのですが、イメージセンサーはともかくチップセットは上位クラスのものに交換しているらしく、後方にフルハイビジョン/HDR対応のリアカメラを追加した上に、フロントの360°カメラも新たにHDR補正をサポートしているようです。

旧モデルの「HDR360G」はWDRモデルでしたので、昼間はそこそこ白飛びしますし、夜間も車内外の明るさがイマイチという印象を持っていますが、後継機の「HDR360GW」はHDRの恩恵で昼夜ともに幾分全体の見やすさが増しているように感じます。

リアカメラは都内の市街地での撮影の為かかなり明るく映っていますが、暗視の能力がどれほどのものかは不明です。

セット内容とデザイン

こちらの動画でも概要をレビューしています。

セット内容については以下の通りとなります。

①フロントカメラ筐体

②リアカメラ

③カメラ接続ケーブル(アナログ4極  9m)

④シガー電源ケーブル(3PIN)

⑤32GBのmicroSDカード

⑥板状マウント

⑦六角レンチ

⑧ドラレコステッカー

⑨取扱説明書

⑩その他取付用品

フロント筐体

フロント筐体はスタンダードな箱型2カメラドラレコと比べるとやや大振りですが、マウントが板状でガラスにピッタリ張り付くタイプですので車内に取り付けた際にはそれほど圧迫感は感じないでしょう。

先代の「HDR360G」と比較すると厚みがなくスリムになっています。(左が「HDR360GW」)

ボタン類はフロントに4つ、液晶サイズはドラレコとしてはスタンダードな2.4型で先代と同じサイズ

右側面にはカメラ表示切り替えのボタンとmicroSDカードスロット、レンズの角度を固定しているツマミが付いています。

左側面にはAV出力端子とリセットボタン

上側には電源端子とリアカメラ接続端子が配置されています。

マウントはスライド式による脱着が可能な板状タイプです。

リアカメラ

リアカメラは同社の2カメラドラレコと同様の長方形のコンパクトタイプです。

なお、カメラの向きを固定するマウントのボルトは最近の「ZDR025」などでは工具と必要としないツマミタイプとなっていますが、本機は六角ボルトタイプです。

【ZDR025】

リアカメラ接続ケーブルは、両側がL字の4極アナログプラグ、ケーブル長は9mとなっています。

電源ケーブル

電源ケーブルは最近のコムテックのドラレコと同じく3PINのカプラータイプです。

車内への取付けについて

今回は初期型のリーフに「HDR360GW」の取り付けを行いました。

フロントカメラはミラー裏に隠してレンズ部分だけを下から出すようにするとスッキリします。

リアカメラのケーブルは9mと長めですので、ミニバンなどの場合でも配線をマット下などに這わせる事が出来るでしょう。

インターフェイスについて

電源ONから録画開始までの起動時間は18秒程度と、2カメラドライブレコーダーとしては遅めです。

操作系のボタンにはそれぞれの役割が印字されておりインターフェイスも分かり易いものではありますが、先代の「HDR360G」と比べると液晶部分がフロントガラスに対してより平行に近くなったので、画面を覗き込んで操作をする必要があり長時間の操作は首が痛くなります。

フロントカメラの画質はHDRとWDRの選択式、リアカメラはHDR固定、録画映像の露出調整などの設定項目はありません。

映像のライブビューは右サイドのボタンで表示するカメラの切り替えが可能です。

フロントカメラの魚眼、フロントカメラの前後分割、リアカメラとの分割、リアカメラの単体表示などから選択できます。

※実際の操作の様子は動画で解説しています。

動画の再生方法について

本機の液晶での再生についてはフロントカメラの録画形式がこちらのような魚眼に固定されますので、動画の視認性は最悪の部類に入ります。

動画再生はサイドのDISPボタンで①魚眼と②前後分割表示③リア単体から選ぶ事が可能ですが、液晶サイズが2.4型と一般的なドラレコと変わらないので視認性は良くありません。

なお、microSDカードに保存された録画ファイルはPCの汎用ビュワーでも再生出来ますが、フロントが魚眼ですので原則としては専用ビュワーを使います。

PCの専用ビュワーはこちらのページからダウンロードが可能です。

■「HDR360GW」専用ビュワー

基本はこのようにフロントカメラ、リアカメラ、Google Mapの3つのウィンドウが個別に表示される形となります。

フロントカメラの動画表示はマウスポインターで視点を動かすVR表示、視点が固定の前後分割表示、動画の左右がループするパノラマ表示の3つから選びます。

再生しているウィンドウの動画をダブルクリックする事で、その映像を全画面表示にする事も可能です。

虫眼鏡のアイコンをクリックすると、動画の任意の場所を拡大表示する事も出来ます。

再生速度は2/4倍速の早送り、0.5倍速のスロー再生への切り替えも可能となっています。

ドラレコのビュワーとしては多機能な部類に入りますが、最近注目されている明るさの調整などの機能はありません。

主な機能はこちらの通りです。

①2カメラ同期再生

②映像の拡大

③再生速度の変更(1/2~4倍速)

④地図への走行軌跡の表示

⑤速度の表示

⑥Gセンサーグラフの表示

⑦上下左右反転再生

※実際の再生の様子は動画で解説しています。

ドライブレコーダーとしての画質について

今回は「HDR360GW」のフロントカメラの画質を先代の「HDR360G」と、リアカメラはコムテックのドライブレコーダーの中で最も実用性が高い「ZDR025」を比較を行いました。

比較ポイントはこちらの6つの項目です。

①録画視野角

②ナンバー読み取り精度

③逆光補正能力

④夜間のナンバー読み取り精度

⑤夜間の明るさ

⑥暗視能力

「HDR360G」とのフロントカメラの動画比較

「HDR360G」との録画映像の比較結果はこちらの通りです。

録画視野角について

録画視野角はいずれも180°×240°との事ですが、並べて比較した結果では視野角は全く同じでした。

リーフの場合には至近距離の信号もしっかり映る上、リアもガラスの上の方まで撮影範囲内に入っています。

360°ドライブレコーダーとしては必要充分でこれ以上は意味のない視野角だと思います。

ナンバー読み取り精度について

「HDR360GW」「HDR360G」のフロントカメラの解像度はいずれも「1856×1856」で、有効画素数は344万画素です。

スタンダードなフルハイビジョンのドライブレコーダーは「1920×1080」の解像度で、有効画素数は207万画素ですが、「HDR360GW」の撮影範囲は6倍程度になりますので、理論上のナンバーの読み取り精度はスタンダードな視野角のドライブレコーダーであれば50~60万画素相当になります。

前方の車にぶつからない程度に接近した状態ではどうにかナンバーを読み取る事が出来ましたが…

走行中の読み取りはまず不可能です。

駐車監視ではどうにか読み取りが可能なレベルですが、自分の車のノーズの長さや相手の車のナンバーの位置によっては読み取り出来ない可能性もありますので、駐車監視の用途でも万全ではないように思います。

因みにスタンダード2カメラドラレコの中で最もナンバー認識精度が低いクラスの「ZDR025」と比べても2ランク程度認識精度は落ちますが…

それでも360°ドライブレコーダーの中では良く頑張っているとも言えます。

逆光補正能力について

本機の先代の「HDR360G」との画質面での最大の違いは、HDRモードが追加された点になります。

「HDR360G」と同様にWDRモードも選べますが、今回はHDRモードで比較を行いました。

トンネル入り口付近では「HDR360G」と比べると複雑な処理をしている為か、露出調整が反映されるのがワンテンポ遅く、一瞬暗くなります。

露出調整が入った後には全体が明るくなり、白飛びも「HDR360G」よりも少なくなるという結果でした。

屋内駐車場でも同様の傾向が見られ、調整が掛かる前の段階ではやたらと暗くなります。

調整が入るとこの通り、明るく白飛びも抑えられています。

夜間のナンバー読み取り精度について

「HDR360GW」は解像度の問題でナンバー認識は苦手ですが、夜間のヘッドライトが強く反射した状態のナンバープレートも車間をギリギリまで詰めればどうにか読み取る事が出来ました。

この視野角で解像度が4Kくらいあれば、1台で何でも出来る超優良モデルになれそうですが、現段階では解像度がまだ足りていない印象です。

夜間の明るさについて

夜間のネオンと街灯が多い市街地では「HDR360G」と比べると車内・車外とも随分明るく映っていますが…

ネオンが減ってくると街灯がそこそこあっても途端に暗くなります。

どうやら暗視能力に振ったチューニングはされていないようですので、この辺りはまだまだ改善の余地がありそうです。

暗視能力について

暗視能力についてはほぼゼロで、街灯が少ない場所ではサイド・車内とも真っ暗です。

同じ場所でほとんど同じ時間にVANTRUEの3カメラモデル「N4」で撮影した映像を専用のビュワーで再生した動画がこちらです。

こう言ったものを見せられると、トータルではまだまだ360°ドラレコよりもマルチカメラ方式の方に分がありそうだと感じます。

【2022年向けに再評価】実機レビュー VANTRUE「N4」3カメラSTARVISドラレコ
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「ZDR025」とのリアカメラの動画比較

コムテックの2カメラドラレコの中で最もリアカメラの実用性が高いと考えられる「ZDR025」との比較結果はこちらの通りです。

なお、「HDR360GW」のリアカメラは露出の調整は出来ませんが、「ZDR025」については露出を最高まで上げています。

録画視野角について

録画視野角については仕様表のレンズ視野角と同等の水平136°で、「ZDR025」とほとんど同じでした。

スタンダードな2カメラドライブレコーダーのリアカメラの録画視野角は水平110°台ですので、「HDR360GW」は最も広い部類に入ります。

ナンバー読み取り精度について

ナンバーの読み取り精度は「ZDR025」と概ね同程度ですが、いずれも視野角が広いのでフルハイビジョンクラスとしては最低の部類に入ります。

逆光補正能力について

トンネル内での逆光補正についてはいずれもHDRの効果で白飛びは良く抑えられていますが、「HDR360GW」は黒潰れが出易くなっています。

屋内駐車場でも同様の傾向が見られます。

夜間のナンバー読み取り精度について

「HDR360GW」のリアカメラは、何故か夜間のにじみが強く後続車両のナンバー認識精度は最低ランクでした。

「ZDR025」もクリア感が強い方ではないですが、それと比べてもぼんやりした感じの映像になっています。

夜間の明るさについて

夜間のネオンが多い市街地での明るさは「ZDR025」と同程度ですので、2カメラドライブレコーダーの中でもかなり明るい部類に入ります。

街灯が減った状態でも「ZDR025」と同等の明るさを維持していますので、一般的なSTARVISモデルと比べても明るさの面では上回っており、明るさ上位10位以内には入りそうです。

暗視能力について

街灯が更に減ってくると「ZDR025」よりも若干暗くはなりますが、こちらも一般的なSTARVISモデルと同程度以上の明るさです。

リアカメラは「ZDR025」と比べると実用性が1ランク落ちますが、それでも2カメラドラレコ全体の中では非常に良い部類に入ります。

西日本LED信号の見え方について

「HDR360GW」の録画フレームレートは前27.5/後28fpsですので全国のLED信号も同期することなくしっかり映る筈です。

ドライブレコーダーのLED信号対策のまとめ
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駐車監視について

「HDR360GW」には駐車監視モードは存在するものの、フロントカメラのナンバー認識精度が低い為、当て逃げ対策としては向いていません。

リーフではナンバーがどうにか読み取れましたが、全ての車種で読み取れるかどうかは分かりません。

こちらの常時電源ケーブルを使用した状態でエンジンをOFFにすると、30秒後に5fpsの常時録画+衝撃検知の駐車監視モードが起動します。

駐車監視のタイマーは30分/1~12時間/常時オン、カットオフ電圧は11.7~12.2V(23.4~24.4V)、衝撃感度は高/中/低の3通りです。

衝撃感度が最高設定の状態ではドアの開閉の衝撃を検知してイベント録画を行いました。

なお、コムテックの他の製品は駐車監視中に衝撃録画を行うとエンジンを掛けた際にイベントアナウンスがありますが、本機にはアナウンス機能はありません。

※実際の駐車監視の挙動はこちらの動画内で解説しています。

外部電源を使用した駐車監視について

ドラレコ専用の外部バッテリーiCELLを使用した駐車監視の駆動予想時間はこちらの通りです。

iCELLB6AB12AB40A
容量76Wh153Wh422Wh
駆動時間15.3時間30.6時間76時間
満充電50分100分150分

ikeep「iCELL B6A/B12A」

ikeep「iCELL B40A」

microSDでの録画時間について

「HDR360GW」の2カメラ録画時のデータサイズは、一時間当たり16.6GB程度となります。

なお、microSDカードの容量は32GBまでサポートされていますが、以下の256/512GBのカードで2時間以上の録画を行った結果では、不具合は見られませんでした。

 地デジへのノイズの影響について

地デジへのノイズ干渉に関しては、初期型リーフ+純正ナビの組み合わせで起動テストを行いましたが、フルセグがギリギリ映る場所で電源をオンにしても変化はありませんでした。

ラジオへの干渉も確認できませんでしたが、ノイズ干渉に関しては車種やカーナビ、アンテナの位置により影響が出る場合もありますので結果は参考程度に捉えて下さい。

ドライブレコーダーのノイズ対策と、ノイズが少ないであろうドライブレコーダー
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「HDR360GW」の総評

最後に「HDR360GW」の総評です。

先代の「HDR360G」と比較するとフロントの360°カメラ部分は白飛びに強くなり、ネオンと街灯が多い市街地での夜間の明るさは改善されています。

360°カメラ部分のみ点数明るさ暗視能力白飛び防止黒潰れ防止ナンバー認識
AKY-V360S20点★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
CS-360FH18点★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ZDR03716点★★★★★★★★★★★★★★★★★
PDR900SP13点★★★★★★★★★★
DRV-C75013点★★★★★★★★★★★★
Q-20P13点★★★★★★★★★★★★
HDR360GW12点★★★★★★★★
HDR360G11.5点★★★★★★★★
=2pt、=1pt、☆=0.5pt

ただし、最近のドラレコで主流となっている夜間特化型STARVISセンサーを搭載した製品と比べると、ネオンがない場所では明らかに見劣りする明るさとなっており、そこそこ街灯が有る場所でも車内とサイドは真っ暗になります。

360°ドラレコ自体がこんなもんと言えばそれまでですが、カーメイトの「ダクション360S」などは価格帯が全く違うものの暗視能力は「HDR360GW」よりも随分高めです。

また、本体の動画再生機能は魚眼・前後分割と切り替えられますが、液晶サイズはそれほど大きくはないので、いざ事故に遭った際の現場での動画の視認性は良くありません。

やはりここは大型タッチパネル液晶、またはスマホアプリ対応でないと解決は難しいのではないかと感じます。

一方でリアカメラは数ある2カメラドラレコの中でもトップクラスの実用性を誇る「ZDR025」のものとそこまで大きな画質の差はありません。

とは言え最近は3カメラドラレコもVANTRUEの「N4」など、かなり高画質なものが出て来ていますので総合的には「HDR360GW」よりもこちらの方がおすすめし易い状況です。

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なお、来週くらいには前後にSTARVISセンサーを搭載したスマートミラー型の360度2カメラドラレコのテストも実施予定です。

こちらは「HDR360GW」の問題点である夜間の明るさと本体液晶での再生の利便性をクリアしている可能性がありますので、360°モデルにこだわる方はこちらの記事もどうぞ。

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(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣

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