※2022年11月19日更新:カメラ外出し撮影の影像を追加しました。
こんにちは!ドライブレコーダー専門家の鈴木朝臣です。
LaBoon!!では私の趣味の一環として、景色が綺麗に撮影できるドラレコの比較や、アクションカメラとドラレコの車載動画の比較などを定期的に行っています。
この場合の車載動画とは、フロントガラスにカメラを貼り付けて撮影する方式を指しますが、
景色の綺麗さを伝えたい場合には、車内にこのような形でカメラを設置するよりもベターな撮影方法だと考えています。
因みに過去に何度がこの手の比較をやって来ましたが、私の感覚では最高評価の製品であっても70点くらいの完成度でしかなく、まだまだ満足できる製品に出会った事はありません。
そこで今回は、既存の製品を超えるかも知れない高画質での撮影が期待出来る、最新のハイエンドアクションカメラ、「GoPro HERO 11 Black」を購入し、主に車載動画を高画質なドラレコと比較してみる事にしました。
アクションカメラは手振れ補正にマシンパワーをつぎ込む
アクションカメラはドライブレコーダーとは異なり、振動が多いバイクや自転車、または徒歩での撮影の際に映像がブレないように手振れ補正の精度を高めている製品が多く、これが製品間での最大の差別化ポイントとなっています。
そもそも、アクションカメラ全体が、私が望むようなフロントガラスに貼り付けて車載動画を撮影する際の画質を重視していません。
従ってそもそもそんな事をアクションカメラに望むのは間違い、と言う気もしなくはないのですが、私自身が過去に試して来た製品の画質に満足出来ていないので、最新のGoProに一縷の望みをかける事にしました。(期待外れに終わる可能性も大)
「GoPro HERO 11 Black」のスペックと特徴
公式サイトではあまり多くの情報が公開されていませんので最小限の情報です。(使用しながら追記予定)
因みに5.3Kの動画を4Kモニターで視聴しても、4K解像度にしか見えません。
また、一般的なモニターのリフレッシュレートは60Hzですので、120fpsで撮影した動画も60fpsにしか見えません。(スロー再生などを使う場合には生きてくる)
このような事情から、フロントガラスに取り付けて撮影する場合には、4K/60fps、2.7K/60fpsモードを使う事になりそうです。
過去の比較から分かったアクションカメラの弱点
ハードウェア的にはドラレコを圧倒するハイエンドアクションカメラですが、過去の比較では車載動画においてはドラレコの方が高画質であると言う結果が出ています。
主な理由は次の2点です。
このような理由から、現時点では綺麗な車載動画を撮影するならドラレコ、と言う結果に落ち着いています。
白飛びやコントラストの面は、そもそもアクションカメラがあまり重視しないところなので、HERO7から進化していない可能性もあります。
以下ような車内視点での動画を撮影する際には、手振れ補正が優秀なアクションカム一択ですが、前にテストしたMAX Proは白飛びが酷すぎるんですよね…。
「HERO11」で撮影しても同じ感じになるなら、かなりの精神的ダメージを受けるでしょう(笑)
デザインとセット内容
「HERO11」のセット内容はこちらの通りです。
・バイク用マウント
・バッテリー
・Type Cケーブル
・ケース
・取扱説明書
過去に何度かGoProシリーズを借りて使った事はあるのですが、自分で購入するのは今回が初めてです。
1万円台~2万円程度の中華アクションカムは数台レビューした事があるのですが、私自身はドライブ&車いじり以外は、本来はガチガチの引きこもり系のオタクなので、アクションカムを使うような健康的な遊びとは無縁なのです(笑)
中華系のアクションカムは、アタッチメント類や防水ケースなど、付属品が多い製品が主流かと思いますが、GoProはシンプルで潔い構成ですね。
色々欲しければOPでアタッチメント類のセットもあるのですが、アタッチメント類は汎用のものをいくつも持ってますし、あまり一気に買い揃えても使いこなせないのは目に見えていますので、今回は必要最小限の構成としました。
カメラ本体
カメラ本体はアクションカムとしてはやや大き目です。
GoProがスタンダードの基準なのだと言われればそれまでですが…、手元にあったXTU MAX Proとはこれくらいの大きさの差があります。
前面にはレンズとサブディスプレイ。筐体下部にはマウントネジ穴はなく、マウントに接続するアタッチメントが収納されています。
手前側にはメインディスプレイ。上側面には録画ボタンが装備されています。
左側面には電源ボタン。カバーを開くとバッテリーとmicroSDカードスロットにアクセスできます。
Type C端子は充電と外部マイク用となっており、車載で長時間動画を撮影する場合にはこのカバーを開いて充電しながら撮影を行う事になります。
アタッチメント類
製品に付属しているのはヘルメット用と思しき、こちらの一式のみです。
選択可能な録画モード
説明書や公式サイトに全くと言って良いほど情報がないので、使って試してみるしかないのですが、2.7K以上の解像度ではこのような組み合わせを選ぶ事が出来ます。
解像度 | 視野角 | MAXフレームレート | アスペクト比16:9 | 10ビット | MAXビットレート |
---|---|---|---|---|---|
5.3K | HyperView | 30fps | 〇 | 〇 | 120Mbps |
5.3K | SuperView | 60fps | 〇 | 〇 | 120Mbps |
4K | HyperView | 60fps | 〇 | 〇 | 120Mbps |
4K | SuperView | 120fps | 〇 | × | 120Mbps |
2.7K | SuperView | 240fps | 〇 | × | 120Mbps |
1080P | SuperView | 240fps | 〇 | × | 120Mbps |
視野角は何段階かで調整する事が出来ますが、一番広いのが「HyperView」、その次に広いのが「SuperView」となっています。
まだ本格的に試していませんが、水平視野角は140°以上はありそうです。
車載前提では4K/60fpsの「HyperView」をメインに使って行く事になりそうです。(2.7Kだと「SuperView」までしかない)
また、本機には彩度の設定が2種類あり、自然な色味とビビッドから選択できます。景色撮影ならビビッドが良いでしょう。
レビューには少し時間が掛かりそうですが、ファーストインプレッションは「綺麗すぎてヤバい!」と言う感じでした(笑)
今まで使ってきたアクションカムは一体なんだったのか…。
アクションカメラとしての画質の比較
今回はまず初めに4K/60fpsでの録画が可能な中華アクションカム、XTU「MAX Pro」との画質の比較を行いました。
中華アクションカムは1万円以下から様々な製品が販売されていますが、「MAX Pro」は2万円程度とハイエンドではないにしても、そこそこ高めの価格帯の製品です。
ウォーキング動画の比較
この製品の最高画質は4K/60fpsとなっていますので、今回は4K/60fpsの設定でGoProとウォーキング動画の比較を行いました。
違いは細かい部分を比べるまでもなく、ぱっと見でGoProの圧勝でした。(比べる事自体が失礼なレベルでした…)
・録画視野角:GoProが圧倒的に広い
・色味の綺麗さ:GoProが圧倒的にキレイ
・手振れ補正:GoProが圧倒的に優秀
・ダイナミックレンジの広さと補正の速さ:GoProが圧倒的に優秀
正直、「MAX Pro」を買った時は、レビューの為とは言え、かなり微妙な買い物をしちまった感があったのですが、やっぱりホンモノは違いますね…高いだけある!
なお、HiperViewは水平視野角はSuperViewと変わらず、垂直視野角が広めとなりますが、カメラを左右に動かした時の歪みと、画面の中央とサイドの引き伸ばし方の差が大きい為、使いどころがなかなか難しいと感じました。
HVはPOVの車載動画向き?映らなくて良い汚い車内まで映っちゃいますが(笑)
以下、GoPro単体でのウォーキング動画です。(こちらは4K/60fps/SV)
アクションカム的な車載動画の比較
次に車のフロントガラスではなく、ロードスターの座席後方のロールバーにGoProとMAX Proを取り付けて動画を比較してみました。
こちらも改めて解説は要らないくらいの差がありました。
録画視野角は前述の通りですが、明暗差の大きいシチュエーションではダイナミックレンジの圧倒的な差が感じられました。
※MAX Proの4K/60fpsモードはかなり無理している感があるので、2.5K/60fps、FHD/60fpsでの撮影を想定した機種のような気もします。
以下はGoProの単体動画です。
ドラレコ的な車載動画の比較
フロントガラス取り付けのドラレコ的な車載動画の比較は、景色撮影用のドラレコとしてのトータルバランスに優れたVIOFOの「A139」と行いました。
先日、景色撮影用のドラレコはVIOFO一択である旨の記事を書いていますが、その中でも「A129 Pro」と「A139」の2機種は、特性はやや異なるものの、他社製品と比べると圧倒的な景色撮影能力を誇っています。
その根拠となっている最大の要素が、ビットレートの高さなのですが、60fpsモードをサポートしている、各社の静止画1枚の1ピクセル当たりのデータサイズは以下の表の通りとなっています。
※大きければ大きいほど崩れない
機種 | 解像度 | フレームレート | 静止画ピクセルbps |
---|---|---|---|
A129 Pro | 1920×1080 | 60fps | 0.333bps |
A129 Pro | 2560×1440 | 60fps | 0.237bps |
A139 | 1920×1080 | 60fps | 0.204bps |
A139 | 2560×1440 | 60fps | 0.141bps |
X4S | 2560×1440 | 55fps | 0.141bps |
X4S | 1920×1080 | 55fps | 0.119bps |
Element 1 | 1920×1080 | 55fps | 0.101bps |
この表にあるように、動画の崩れの少なさでは「A129 Pro」>「A139」なのは間違いのない事実ですが(検証済み)、「A139」の方が後に発売されているだけあって、ダイナミックレンジの広さでは「A139」>「A129 Pro」です。
林道のようなシビアなコンディションでは、「A139」の方が白飛びが少なくなっています。
HERO 11のバックデータ
今回比較を行ったのは、4K/60fpsモードと2.7K/60fpsモードの2つのモードです。
各モードのコーデックですが、4KモードではH.265、2.7KモードではH.264と異なるコーデックを使うので単純比較は出来ませんが、それぞれのモードでのビットレートは以下の通りでした。
※H.265の方が同じビットレートでも高画質
HERO 11 | 4K/60fps | 2.7K/60fps |
---|---|---|
ビットレート | 120Mbps | 100Mbps |
ピクセル/bitrate | 0.241bps | 0.404bps |
これを先ほどのドラレコの表に入れ込むと、このようになります。
機種 | 解像度 | フレームレート | 静止画ピクセルbps |
---|---|---|---|
HERO 11 | 2704×1520 | 60fps | 0.404bps |
A129 Pro | 1920×1080 | 60fps | 0.333bps |
HERO 11 | 3840×2160 | 60fps | 0.241bps |
A129 Pro | 2560×1440 | 60fps | 0.237bps |
A139 | 1920×1080 | 60fps | 0.204bps |
A139 | 2560×1440 | 60fps | 0.141bps |
X4S | 2560×1440 | 55fps | 0.141bps |
X4S | 1920×1080 | 55fps | 0.119bps |
Element 1 | 1920×1080 | 55fps | 0.101bps |
2.7Kモードでは断トツのビットレートの高さです。
ダイナミックレンジもMAX Proとの比較では好結果でしたので、かなり期待出来ますね。
4K/60fps/SV/手振れ補正ありモードでの比較
4K/60fps/SV/手振れ補正ありモードでの比較結果はこちらの通りです。
録画視野角
車載の景色撮影では、出来るだけ広範囲を撮影出来た方が見栄えが良いのですが、HERO11の録画視野角は水平122°とまずまずの広角でした。(手振れ補正をOFFにすると10°くらい広がる)
ダイナミックレンジの広さ
「A139」は景色撮影向けのドラレコの中では、最もダイナミックレンジが広く、白飛びがでにくい機種ですが、HERO11はさらにそれを上回るダイナミックレンジ広さでした。
彩度とコントラスト
ドラレコで景色を撮影する場合、肉眼で見たままの影像を出力するよりも、不自然に感じない程度に色の彩度の補正を入れた方が綺麗に見える事が多いのですが、これら2機種はいずれも彩度もコントラストも高めで私の好みでした。(見え方は非常に似ています)
動画の崩れの少なさ
「A139」は「A129 Pro」には劣るものの、現行のドラレコの中では高めのビットレートで録画を行う為、動画の崩れは少な目です。
ただし、このような逆光下で明暗差の大きい、動きの速いシーンでは、モザイク状の動画崩れが目立つ事があります。
「HERO 11」でも動画崩れが出る事がありますが、「A139」より頻度が少なく、気にならない事が多い状況でした。
2.7K/60fps/SV/手振れ補正なしモードでの比較
次に「HERO 11」を2.7/60fps/SV/手振れ補正なしモードの設定に変更し、比較しました。
録画視野角
「HERO 11」の手振れ補正をOFFにすると、水平方向に10°程視野角が広がり、水平130°程度の録画視野角となりました。
動画の崩れの少なさ
「A139」も物凄く激しく動画が崩れる訳ではないので、このサイズの画像を比較しても違いが分かりにくいのですが、フルHD、そして4Kモニターで再生すると「HERO 11」の安定感が光ります。
4K/60fpsモードよりも動画崩れが少ないように感じますが、4Kディスプレイで再生する場合には解像度の差はしっかり体感出来ますので、4K/60fpsモードの方が綺麗です。
このクラスになってくると、素の動画を編集してエンコードすると少し劣化→YouTubeにアップロードするとかなり劣化しますので、素の動画をお見せして解説出来ないのが残念です。
しかも、出来るだけ画質を落とさないように、高いビットレートでエンコードしたものYouTubeにアップロードすると、環境によっては動画がカクカクになり、まともに再生できない事も多いでしょう。
こちらに4K/60fps、2.7K/60fpsの1回エンコード済みの動画をアップロードしてありますので参考にして下さい。(実際はもっと綺麗です)
【4K/60fps】
【2.7K/60fps】
ダッシュボードの映り込みを回避するにはカメラ外出しが一番
前回までテストに使用していた車はエボ10なのですが、この車はダッシュボードの映り込み対策の為に、ダッシュボードにマットブラックのマットを敷いています。
※マットブラックのマットを更にマットブラックの塗料で塗装しています。
また、同様のピラーも黒く塗装しているのですが、それでもシーンによっては映り込みが気になる事があります。
そこで今回はカメラを外に出して撮影してみました。(保安基準的には怪しいので、どことは書きません。野暮な質問はしないでさい)
やはりカメラ外出しが最強ですね。
熱暴走の問題も、空冷方式で改善されるようで、以前は20分程度で落ちていたものが、30分以上撮影しても安定していました。(それ以上は未確認)
映像のクオリティは文句なしですが、安定性はかなり低い
これは色んなところで言われていますが、アクションカムは長時間の安定した録画には不向きで、HERO 11の場合、最高画質よりも1ランク下の4K/60fpsの撮影モードでも20分程度で熱暴走防止の為に録画を停止します。
フルハイビジョン/60fpsであれば、数時間の連続録画で熱により録画を停止する事はありませんでした。(2.7K/60fpsでは長時間のテストはしていません)
車載での使用を前提とした場合、例えそれが景色撮影だけを目的としていても、20分では少々短か過ぎる気がしますね。
今後、4K/60fpsモードの手振れ補正なし、2.7K/60fpsモードでの長時間録画テストも実施予定です。
景色撮影向けのドラレコが目指すところ
今回のHERO 11のテスト結果から、小型カメラで4K/60fpsモードでの安定した録画は難しいと言う事が分かりました。
アクションカムよりも安定性を求められるドラレコにおいては、数年以内に4K/60fpsモードが実装される事はないでしょう。
従って2.5K/60fpsでどれだけ崩れが少なく、ダイナミックレンジが広い動画を撮影できるかが、今後数年の景色撮影向けのドラレコの目指すところになるでしょう。
※ここはあまり需要が大きくないところなので、このまま現状維持かも知れないですね。
ガチで景色を綺麗に撮影したい方は、GoPro買って下さいって感じになりそうです。
私個人の感想としては、HERO 11は高かったけど買って良かったガジェットのかなり上位に入ります。
過去の経験からこんなに綺麗に撮影できるとは考えていなかったので。
以後、DJI Osmo Action3との比較も実施予定です。
追記:気になる点
2022年11月16日にファームウェアのアップデートを行ったのですが、その後に撮影した動画は細部の崩れが出るようになりました。(気のせいかな?)
コメント
GoProはやっぱり高いだけあっていいんですね。手が出ませんが。(^^;
お値段も規格外ですよね(笑)