※2021年6月12日更新~実機レビューを追記しました。
こんにちは!ドライブレコーダー専門家の鈴木朝臣です。
セイワから5型液晶を搭載した、前後カメラがセパレート構造になった360°+リアカメラのドラレコ「PDR900SP」が発表されています。
360°ドラレコには諸々の弱点があった為、私が積極的におすすめするようになったのはここ1~2年の間ですが、「PDR900SP」についても従来品と比べると2つの弱点が克服された上、前後カメラがセパレートとなるなどの付加価値を持っているのが特徴と言えそうです。
「PDR900SP」のスペック
「PDR900SP」のスペックはこちらの表の通りです。
PDR900SP |
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21.04発売 |
1920×1920/29.1fps/STARVIS 1920×1080/29.1fps/STARVIS/HDR |
LED信号対応 |
前:180°×240° 後:水平130° |
microSD付属32GB/最大64GB×2スロット |
GPS内蔵 |
駐車監視モード |
動体検知+衝撃検知 タイムラプス |
専用ケーブル DOP30 |
「ドライブレコーダーの持込取り付け」が出来るお店 |
実はセイワからは以前から360°+リアカメラの大型液晶モデルは販売されていましたが、解像度などの問題で比較の土俵に上げた事すらありませんでした。
360°ドラレコが出始めた頃はこのような問題点があり、私も積極的におすすめして来なかった経緯があります。
・垂直方向の視野角が180°と狭すぎて上・横方向がしっかり映らない
このような背景により、2年位前から録画解像度を400万画素弱、垂直方向の録画視野角を240°まで広げた製品が主流となっていますが、録画解像度の面ではナンバーが読み取れないという根本的な問題は解決されていないままで、最近では4Kモデルも増えつつあります。
また、360°ドラレコ全体の問題として、筐体部分をコンパクトにすればするほど液晶サイズが小さくなり、動画の視認性が悪くなるというデメリットが発生します。
いくつかの製品ではスマホのWiFiアプリに対応する事で、この問題を解決していますが、「PDR900SP」は録画解像度は370画素相当とスタンダードではあるものの、最近のスタンダードな360°+リアカメラのドラレコと比べるとこのようなセールスポイントを持っています。
・カメラ部分をセパレートとする事でカメラの取り付け自由度が向上
セット内容とデザイン
「PDR900SP」の実機を購入しましたのでレビューを追記します。
なお、LaBoon!!では、メーカーさんへの忖度が必要になる事を避ける為、一部のYouTuberやインフルエンサーなどのように広告費や動画制作費などを頂く事はせずにレビューを行っています。(YouTuberの一般的な広告単価はチャンネル登録者数×1~1.5円です)サンプルは原則として自腹購入、時々メーカーさんに製品サンプルを提供してもらう事もありますが、忖度はしません。なぜならこのような依頼を有料で承った場合、月間80万PVのLaBoon!!のWEBメディアとしての価値を考慮した際の業界内での広告費の相場は「10~50万円程度」になりますし、一連のコンテンツ制作を外注化しただけでも10万円以上の費用が掛かるものを無料でレビューしていますので、メーカーさんへの忖度が必要とは考えていないからです。このような運営方針からスポンサーなしでの運営を継続する為に、GPSによるドラレコ駐車監視時の電源コントロールガジェット「iZONE」なども自社で企画・開発していますので、駐車監視をされている方は購入を検討して頂けると幸いです。https://car-accessory-news.com/izone/
セット内容についてはこちらの通りとなります。
・ディスプレイマウント
・フロントカメラ
・リアカメラ
・フロントカメラ接続ケーブル3m(同軸)
・リアカメラ接続ケーブル9m(4PIN to 5PIN)
・シガー電源ケーブル(3PIN)
・32GBのmicroSDカード
・取扱説明書
今回は合わせてこちらのOPパーツも購入しました。
ディスプレイ筐体
本製品の最大のセールスポイントが、独立した5インチの大型ディスプレイです。
事前の予想に反してAndroidタブレットのように見えて思ったよりも高級感があります。
5.5インチのiPhone SEと並べてみるとサイズ感が伝わり易いかと思います。
カメラや電源と接続する端子類は全て下側に配置されています。
左からリアカメラ端子、フロントカメラ端子、電源端子の順です。
上部にはmicroSDカードスロットが2つあり、64GB×2枚のカードの同時使用までサポートしています。
本機は基本はダッシュボード置きなのでマウントは下挿しです。(液晶は天地を自動で判別しますのでフロントガラス吊りも可)
セパレートカメラ
フロント・リアカメラはいずれもコンパクトな円筒型ですが、フロントカメラの方がやや大振りで端子は同軸タイプ、リアカメラは4PINとなっています。
カメラケーブル
カメラケーブルはフロントが同軸3m
リアは4PINの9mとなっています。
電源ケーブル
電源ケーブルは最近のコムテックのドラレコと同じく3PINのカプラータイプです。
今回はOPのこちらの駐車監視用3芯ケーブルを使用しています。
車内への取付けについて
今回はアクアに「PDR900SP」の取り付けを行いました。
この製品はディスプレイ部分をフロントガラスに貼り付ける事も可能ですが、ディスプレイが大きく運転の邪魔になりそうだったので
今回はダッシュボードの上に取り付けました。
ディスプレイ筐体からは3本のケーブルが出ていますので、このケーブルを見えないように綺麗に処理するには相当な工夫が必要になりそうです。
フロントカメラはこの位置
リアカメラはこの位置に取り付けていますが、リアカメラのケーブルは運転席側から差し込む形となります。(天地反転機能はなし)
なお、リアカメラのケーブルは9mと長めですので、ミニバンなどの場合でも配線をマット下などに這わせる事が出来るでしょう。
インターフェイスについて
電源ONから録画開始までの起動時間は17秒程度と、2カメラドライブレコーダーとしては遅めです。
5型の静電式タッチパネルには各種操作系のアイコンが表示され、誰にでも分かり易いインターフェイスとなっています。
ライブビューの表示形式はこちらの中から選択する事が可能です。
・フロントカメラの回転と拡大縮小が可能な360°表示
・フロントカメラの前後2分割表示
・フロントカメラの回転と拡大縮小が可能な4分割表示
・リアカメラについては個別表示と、ウィンドウ表示、表示OFFから選択
なお、この映像はカメラの露出を最大まで上げて撮影しているのでディスプレイが明るく映っていますが、実際にはディスプレイの明るさ設定を最高にしていても薄暗く見えるのが気になりました。
・同じ環境でのスマートミラーの明るさ
・「PDR900SP」のディスプレイの明るさ
また、ディスプレイ表面が光沢素材なので正面以外から見ると反射がきつく、映像が見えにくくなっています。
これは見易い大型ディスプレイという「PDR900SP」の製品特性を考えた場合、致命的な欠点になろうかと思います。
衝撃感度が高すぎる印象
通常のドラレコテストで気になる事はほとんどないのですが、本製品は走行中の衝撃感度を最低にしていても普通に走行しているだけで衝撃検知のイベント録画がそこそこ入ります。
今回テストで使用した純正サスペンションのアクアは、決して乗り心地が良い車とは言えませんが、走行時の振動はそれほど大きくない車ですのでこの辺りは感度の調整不足と感じました。
※10kmの走行で10回ほどイベント録画が入りました。
動画の再生方法について
本体での動画再生は、折角の大画面が画面の暗さで台無しになってしまっています。
なお、この映像はカメラの露出を最大まで上げて撮影しているのでディスプレイが明るく映っていますが実際はこの見え方です。
再生動画の表示方式はライブビューの表示形式と同様にこちらの中から選択する事が可能です。
・フロントカメラの回転と拡大縮小が可能な360°表示
・フロントカメラの前後2分割表示
・フロントカメラの回転と拡大縮小が可能な4分割表示
・リアカメラについては個別表示
microSDカードに保存された録画ファイルはPCの汎用ビュワーでも再生出来ますが、フロントが魚眼ですので原則としては専用ビュワーを使います。
PCの専用ビュワーはセイワのプロダクトページからダウンロードが可能です。
専用ビュワーでは基本はこのようにフロントカメラ、リアカメラ、Google Mapの3つの枠が表示される形となります。
フロントカメラの動画表示は、視点が固定の魚眼表示、マウスで拡縮と視点を動かす360°表示、視点が固定の前後分割表示、視点は動かせるが拡縮出来ないワイド表示の3つから選びます。
一番左の「全画面」のタブをクリックする事で、映像を全画面表示にする事も可能です。
再生速度はコマ送りと1/2から2倍速の範囲で調整が可能です。
ドラレコのビュワーとしては多機能な部類に入りますが、最近注目されている明るさの調整などの機能はありません。
主な機能はこちらの通りです。
・映像の拡大
・再生速度の変更
・地図への走行軌跡の表示
・速度の表示
・Gセンサーグラフの表示
ドライブレコーダーとしての画質について
今回は「PDR900SP」のフロントカメラ・リアカメラの画質をこちらの2つの製品と比較しました。
・VANTRUE「N4」
比較ポイントはこちらの5つの項目です。
・逆光補正能力
・ナンバー認識精度
・夜間の明るさ
・暗視能力
フロントカメラの動画比較
フロントカメラの録画映像の比較結果はこちらの通りです。
録画視野角について
フロントカメラ部分については、この3機種のうち「N4」のみが半天球ではなく一体型2カメラですので視野角が狭くなっていますが、その他の2機種はほぼ同等です。
・「ZDR037」:(水平180°×垂直117.5°)+(水平180°×垂直117.5°)
・「N4」:(水平108°×垂直60°)+(水平122°×垂直69°)
アクアの場合には至近距離の信号もしっかり映る上、リアもガラスの上の方まで撮影範囲内に入っています。
360°ドライブレコーダーとしては必要充分でこれ以上は意味のない視野角だと思います。
逆光補正能力について
本機のフロントカメラは最近増えつつある強烈なHDR補正に対応しており、トンネル内での白飛びと黒潰れには非常に強くなっています。
屋根付き駐車場での視認性も非常に良好です。
ナンバー認識精度について
「PDR900SP」の録画解像度は「1920×1920」のおよそ400万画素相当ですが、800万画素の「ZDR037」に及ばないのは仕方ないとしても、同じ400万画素クラスの360°ドラレコではどうにか読み取れるような至近距離でも読み取り不可と、絶望的に低いナンバー読み取り精度となっています。
夜間についてもこの通り同様です。
夜間の明るさについて
今回のテストで一番残念だったのが、夜間の撮影能力が二世代前の360°ドラレコと同程度以下でしかなく、最新のコムテック「ZDR037」と比べると明らかに見劣りする明るさとなっている点です。
コムテック製品であれば「ZDR037」の二世代前の機種である、2018年モデル「HDR360G」以下の明るさと言った印象です。
ネオンが減ってくると更に明るさは落ちますが、前方は暗めで横方向は真っ暗になってしまいます。
サイドの自転車や歩行者はまず映りません。
暗視能力について
暗視能力については皆無ですので、夜間の駐車監視では全く役に立たない可能性があります。
リアカメラの動画比較
リアカメラの録画映像の比較結果はこちらの通りです。
録画視野角について
録画視野角については仕様表の数値とほぼ同等の水平129°で、一般的な2カメラドラレコしてはかなり広い方です。
ただし、360°カメラに追加するリアカメラは視野角よりもナンバー認識精度を重視したいところなので、広ければ良いというものではありません。
逆光補正能力について
リアカメラについてはそれほど逆光補正能力は高くはありませんが、ドラレコとしては必要充分なレベルです。
ナンバー読み取り精度について
ナンバーの読み取り精度は「ZDR037」よりもコントラストが強く、視野角が広い割にはフルハイビジョンとしては標準的なレベルをクリアしています。
夜間についても同様の傾向となっています。
夜間の明るさについて
夜間の市街地での明るさは最近の2カメラドラレコの中でも明るい方で、必要充分なものとなっています。
暗視能力について
暗視能力もそこそこありますが、最近のSTARVISセンサーを搭載した製品と比べると暗めの印象です。
リアカメラについてはまずまずの性能ですが、フロントカメラが暗すぎるので残念ながら画質面の総合評価は低いものになります。
西日本LED信号の見え方について
「PDR900SP」の録画フレームレートは29.1fpsですので全国のLED信号も同期することなくしっかり映る筈です。
駐車監視について
「PDR900SP」の駐車監視モードには、動体検知+衝撃検知、タイムラプスの二つのモードがあり、3芯の直結ケーブル、付属のシガーケーブルのどちらでも運用が可能です。
※付属のシガーケーブルで駐車監視を行う為には別途外部バッテリーが必要になります。
実際の駐車監視での動作テストではドアの開閉を検知して衝撃録画を行い、駐車監視を終了するとこのように確認メッセージがでますのでシステム的には韓国系の完成度の高いものとなっていますが…
ナンバー認識精度が絶望的に低く、夜間の明るさも最低クラスなので駐車監視の運用はおすすめしません。
※動体検知モードの消費電力は7~8W程度でした。
駐車監視目的であればVANTRUEの「N4」をおすすめします。
microSDでの録画時間について
「PDR900SP」の2カメラ常時録画時のデータサイズは、一時間当たり11GB程度となります。
本機はmicroSDカードスロットが2つあり1→2の順に録画を繰り返します。
microSDカードの容量は64GB+64GBの計128GBまでサポートされていますが、手持ちの128GB以上のカードはどれも使用が出来ませんでした。
地デジへのノイズの影響について
地デジへのノイズ干渉に関しては、アルファード+サイバーナビの組み合わせで起動テストを行いましたが、フルセグがギリギリ映る場所で電源をオンにしても変化はありませんでした。
ラジオへの干渉も確認できませんでしたが、ノイズ干渉に関しては車種やカーナビ、アンテナの位置により影響が出る場合もありますので結果は参考程度に捉えて下さい。
「PDR900SP」の総評
最後に「PDR900SP」の総評です。
360°ドラレコ+リアカメラの製品は2019年から2021年に掛けて各社とも力を入れてきたゾーンで、新しいモデルほど高画質になっており着実な進化が見られます。
このような背景の中で出てきた「PDR900SP」ですが、見た目の高級感や大型液晶による操作性の部分では他社製品と比べて優れていると感じます。
一方で画質の面では夜間の撮影能力が2021年モデルとしては最低ランクとなる上、フロントカメラのナンバー認識精度が同クラスの400万画素相当のモデルと比べても絶望的に低く、画質の総合評価は最低ランクとなります。
360°カメラ部分のみ | 点数 | 明るさ | 暗視能力 | 白飛び防止 | 黒潰れ防止 | ナンバー認識 |
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AKY-V360S | 20点 | ★★★★★ | ★★★★ | ★★★ | ★★★★★ | ★★★ |
CS-360FH | 18点 | ★★★★★ | ★★★ | ★★ | ★★★★★ | ★★★★ |
ZDR037 | 16点 | ★★★★ | ★★ | ★★ | ★★★★ | ★★★★★ |
PDR900SP | 13点 | ★ | ★ | ★★★★★ | ★★★★★ | ★ |
DRV-C750 | 13点 | ★★★ | ★ | ★★★★★ | ★★ | ★★ |
Q-20P | 13点 | ★★ | ★ | ★★★★★ | ★★ | ★★★ |
HDR360GW | 12点 | ★☆ | ★ | ★★★★★ | ★☆ | ★★★ |
HDR360G | 11.5点 | ★ | ★ | ★★★★★ | ★☆ | ★★★ |
★=2pt、★=1pt、☆=0.5pt |
また、ディスプレイの大型化を打ち消す画面の暗さも製品特性を考えると致命的だと感じますし、衝撃感度が高すぎて調整不足の感が否めません。
従って特に条件を定めない限りは、私が「PDR900SP」をおすすめする事はありませんが、夜間には車に乗らない、ガジェットの操作が苦手な年配の方向けには操作性の面では満足頂けるであろう特性である事から、このような条件付きではおすすめ可能です。
大型ディスプレイの強みを打ち消す画面の暗さと、事前の予測から大きく外れる画質の低さでしたので、私個人の感想は「残念!」の一言ではあります。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
コメント
個人的に気になっている商品ですね。今PDR800FRとCS-360fhを使っていますが駐車監視する時はPDR800FRだけにしています。セルスターの方が360°監視できるから本当はそっちがいいんですけど画素数が低くなってあまり使えないので仕方なく…なので今回PDR900SPが出てコレは駐車監視用として使えるかな…?と思って狙っています。^^;
こういった360°タイプのドラレコだと駐車監視には向いてないんですかね?
ちなみにパソコンなど持っていない為ドラレコの映像確認などは全てSDカードリーダで見ています。
そういえば先日パイオニアから新しくVREC-DH300Dが発表されましたよね!アレも中々良さそうでした!
田中様
仕様が定かではないのですが、韓国系なら駐車監視に使えそうですね。
ただ、ナンバー抑えるなら最低でも半天球で4Kは欲しいですね。
コムテックのZDR037は4Kで昼間ならナンバーは読めます。100~150万画素の1カメラドラレコて感じの見え方ですね。