パイオニアからWiFi対応の夜間特化型ドライブレコーダー「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」が発表されています。
発売は6月との事ですが、一部通販サイトでは2.4万円程度で予約販売が開始されています。
2017年以降のパイオニアのドライブレコーダーは、過去にケンウッドの目指すところの王道ゾーンでケンウッドほどの人気が得られなかった事で、ブランドの認知度には見合わない変化球で市場の穴を狙っている…と私は感じています。
具体的にはカーナビ連動モデルや、バックカメラのアナログ入力による2カメラ録画モデルなどがそれに当たりますが、何れのもカーナビ裏の配線をいじらなければ装着出来ない為、市場のマスであるとは言い難いゾーンです。
■ パイオニアのドライブレコーダー 各モデルの特徴をまとめて説明
ドライブレコーダーの認知度が高まり、普及率も上昇していますので市場の情勢自体は超右肩上がりではあるのですが、既にここ1~2年でユーザーの目的に合わせた専門性の高いモデルが増えており、「とりあえず何でも良いからドライブレコーダーを搭載したい」というユーザー向けの製品は、ネット通販においてはかなり中国メーカーに喰われていますので、日本のメーカーは総じて厳しい状況にあると見ています。
※オートバックスなどの量販店では国内メーカーの製品が売れているとは思いますが
こう言った状況の中でパイオニアが打ち出してきたモデルが「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」の2モデルです。
「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」のスペック
「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」のスペックは以下の表の通りで、この2モデルの違いは付属する電源ケーブルの差です。
VREC-DZ500 | VREC-DZ500-C |
---|---|
18.06発売 | |
1280×720/27.5fps/HDR 1280×960/27.5fps/WDR |
|
LED信号対応 | |
録画視野角 水平109° | |
microSD付属16GB | |
microSD最大128GB | |
GPS内蔵 | |
WiFi | |
駐車監視モード | |
衝撃検知 | |
自動起動 | |
専用ケーブルなし 内蔵バッテリー90分 | 専用ケーブル同梱 内蔵バッテリー90分or車のバッテリーから給電 |
「ドライブレコーダーの持込取り付け」が出来るお店 |
ベースモデルの「VREC-DZ500」の方は電源ケーブルがシガープラグで、駐車監視を内蔵バッテリーのみで90分まで行うタイプ、「VREC-DZ500-C」については、3芯ケーブル+カーナビへの動画出力ケーブルが付属したモデルです。
内蔵バッテリーが充電されているかどうかで給電元を切り替える仕様のようです。
「VREC-DZ500-C」については映像を出力するならカーナビとの同時取り付けが前提となりそうですね。
いずれもWiFiに対応していますのでカーナビ接続が必須という訳ではありません。
目玉は夜間特化型である点
この2モデルの最大のセールスポイントは夜間特化型の低照度CMOSセンサーを搭載している点です。
2018年のドライブレコーダーのトレンドは、SONYのSTARVIS技術などに対応したCMOSセンサーを使用する事による夜間撮影への特化が挙げられますが、これはトレンドなので他のメーカーも実装し始めている部分です。
なお、CMOSセンサーの開発元であるSONYも車載用のCMOSセンサーのカテゴリーを新たに設けており、この分野の進化はさらに加速しそうな予感がしますね。
2018年4月現在のSONYのドライブレコーダー用のCMOSセンサーとしては以下の6モデルが挙げられます。
因みにこれ以外にもドライブレコーダーに搭載されているCMOSセンサーはたくさんありますので、どういった基準でカテゴリー訳をしているのかは不明です。
「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」に搭載されているCMOSセンサーがSONY製かどうかも分かりませんが、130万画素と仕様表に記載されていますし、動画の特徴を見る限りIMX224、225辺りが搭載されているような気がします。
出力解像度はHDRオンで「1280×720」のHD画質、オフの場合には「1280×960」のWDRとなるようですが、IMX224、225ら辺は画素数の問題もありますが、精細感が低くナンバー認識には向いていないように感じます。
IMX225については、AUTO VOX「X1」のリアカメラに採用されていますので以下の記事が参考になるかと思います。
■ 後付け「スマートルームミラー」的な2カメラドライブレコーダーAUTO VOX「X1」
録画視野角がハイエンドではない点が残念
夜間特化型のドライブレコーダーは確かにドライブレコーダーの基本性能を語る上では非常に重要な要素である事に間違いはありません。
ただし、「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」の2モデルは録画視野角が水平109°しかない為、解像度の面で妥協したとしても状況証拠の確保に特化しているとは言い難いように思えます。
昼間は普通のドラレコになってしまいますし、夜間についても録画視野角が大して広くない為、夜間の状況証拠の確保だけに絞っても「最強」とも言えません。
精細感が低くても録画視野角が広く、夜間も明るいドライブレコーダーは状況証拠の確保だけに絞れば「最強」と言えますが、妥協する部分がドライブレコーダーの本来の目的を考えても少しズレている気がしますね。
夜間特化型を求めるならユピテルの「SN-SV70c」を軸として、コムテックの「HDR-751G」、AUKEYの「DR02」辺りと比較して考えて行きたいところです。
リア用のドライブレコーダーとしては優秀なのかも知れない
「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」はカメラ部分が180°程度前後に回転する為、取り付けの汎用性は高いモデルです。
特にリアスモーク車においては、低照度カメラの優位性が上昇しますし、精細感についてはさほど重要ではなくなりますので、リアへの取り付けを想定しているのではあれば意外とおすすめモデルになるかも知れません。(価格帯が問題ですが)
駐車監視の仕様について
駐車監視については、エンジンオフで自動で監視を開始しますが、仕様がやや複雑で内蔵バッテリーの残量がある場合には最大90分間の内蔵バッテリーによる監視を行います。
内蔵バッテリーが生きている状態であれば、ドライブレコーダーの電源は入りっぱしで、内部メモリーに常時動画を保存しつつ、衝撃を検知するとその前後30秒を切り取ってmicroSDカードに保存します。
バッテリーの容量は750mAhで、満充電には4時間かかるとの事です。
内蔵バッテリーを使用し尽くした後は、「VREC-DZ500」はシャットダウン、「VREC-DZ500-C」の方は車からの給電に切り替え、録画方式が変わります。
衝撃センサーのみが通電した状態になり、衝撃を検知した後にドラレコの電源が入り、およそ3秒後に録画を開始するとの事です。
内蔵バッテリーでの駆動を考慮しないのであれば、最近のモデルではケンウッドの「DRV-830」がこの方法を採用しています。
待機時間は長くなるものの衝撃を検知してから録画までに3秒程度時間が掛かるのが難点です。
因みに…ですが、衝撃センサーを待機させる為の微電流がどの程度かは不明ですが、バッテリーが100%上がらないという事ではありません。
最近の車の暗電流は(エンジン・ACCオフでの消費電流)12V/30~100mAh程度かと思うのですが、1ヶ月くらい車のエンジンを掛けないと余裕でバッテリーが上がる車種もあります。
ドラレコ待機の為の暗電流がどれほどの物かは分かりませんが、今まで1ヶ月動かさないでで上がっていたバッテリーが3週間で上がるようになる事も考えられます。(週に1~2日乗る車なら問題はなかろうと思います)
まあ、精細感は高くないはずですので、駐車監視を重視するならこのモデルはおすすめしません。
「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」の総評
以上、ざっくりと「VREC-DZ500」「VREC-DZ500-C」の特徴について見てみましたが、最終的には何が最大のセールスポイントかというと、それは上述の夜間特化型である部分…ではなく、「カロッツェリアブランドである点」だと思います。
従ってカーナビや周辺機器でブランドを合わせたい場合、日本のメーカーにこだわりがある場合にはおすすめですが、それ以外のユーザーにとっては器用貧乏なモデルではないかと感じます。
量販店での店頭や、カーディーラー向けのモデルかなぁというのが最終的な評価ですね。
たしかに自動車メーカーが指定する純正OP扱いのドラレコよりは性能もコスパも高いので、新車購入時の値引きで取り付けまで格安でやって貰うなどの好条件が引き出せるかも知れません。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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