スマホのドラレコアプリでおすすめのものはありますか?というご質問を頂いたことがあるのですが、過去にオウルテックの「OWL-DR03」というandroidスマホをドラレコ化する面白ガジェットをテストした事があります。
■ オウルテック「OWL-DR03」のレビュー 評価 スマホをドライブレコーダー化するアプリとチャージャー
このガジェット自体は個人的はなかなか面白い!と感じてはいたものの、設置方法や走行時の衝撃によるブレの問題があり、それ以降ほどんとネタとして取り上げる事はなかったのですが、最近別件でアクションカメラ、ドラレコ、iPhone 7を使用してのドライブ動画の比較を行い、改めてスマホをドラレコ代わりに使用するのは一体どうなんだ?というテーマについて考えてみました。
そもそもドラレコ機能は何のために必要なのか?
おそらくほとんどの人はドラレコ機能に事故の際の証拠能力や、煽り運転に対する抑止力や証拠能力を期待しているものと思われます。
一部例外として、完全に趣味として高性能なスマホのカメラで景色を撮影したいとお考えの方もいる事でしょうから、ここではスマホをドラレコ代わりに使用する目的として
①通常のドラレコと同様に有事の証拠能力を期待する
②趣味として少しでも綺麗にドライブ動画を撮影する
の2つについて考えていきましょう。
この目的を考える上で必要なのが、スマホとドラレコの得意な部分、不得意な部分についての分析です。
スマホにドラレコと同様の有事の証拠能力を期待出来るのか
まず、一つ目の通常のドラレコと同様にスマホを使用するケースについてです。
ざっくりとスマホが優れている点を考えてみると、以下の3つのポイントになろうかと思われます。
- 解像度が高い為、精細感に優れた動画を撮影できる
- イメージセンサーやレンズの性能も上がっている為、白飛びに強く夜間も明るめの動画が撮影できる
- 手元にあるスマホを使用するなら追加コストが掛からない(無料アプリの場合)
逆に劣っている点は以下の4点になります。
- 熱対策がドラレコとしての利用を想定していない為、撮影中にシャットダウンする可能性が高い
- 充電しながら炎天下で撮影すると、バッテリー破裂の危険性が高まる
- 設置の際に相当工夫しないと、振動などで動画がブレブレになる
- 録画視野角が狭いので、事故の際の状況証拠能力は限定的
では、次にここで挙げたメリット・デメリットについて詳しく解説します。
解像度が高い為、精細感に優れた動画を撮影できる
最近のスマホのカメラは凄い勢いで性能が上がっており、コンデジメーカーの市場撤退が相次いでいるのは一般的によく知られている話かと思いますが、そもそもスマホの性能・機能面での差別が自体が既に難しくなるほど市場が成熟しており、価格とカメラ性能でスマホを選ぶユーザーも増えている事と思います。
※激安のスマホなどは動きが遅かったりと、問題もあるようですがこれはスタンダードクラス以上のスマホの話です。
このような状況下にあって、カメラ性能というのはスマホメーカーが最も力を入れている要素の一つと見受けられ、そこそこの価格以上のスマホは、ドラレコなんかと比べると段違いの高精細で色の諧調も豊かな動画を撮影する事が可能になって来ています。
…という訳なので、ナンバー認識においては「間違いなくドラレコよりもスマホの方が上である」と言えるでしょう。
【以下、iPhone 7とドラレコ、アクションカメラの比較】
上の画像を見て頂くとお分かり頂けるかと思うのですが、iPhone 7の4K/30fpsモードの精細感が半端ないです。
従ってナンバーの認識精度も段違いであると見る事が出来ますね。
イメージセンサーやレンズの性能も上がっている為、白飛びに強く夜間も明るめの動画が撮影できる
これはiPhone 7のカメラをドラレコと合わせてシビアな逆光の状況下でい使用してみて気が付いたのですが、ハイエンドなスマホのカメラはダイナミックレンジがかなり広いですね。
HDR補正を掛けていなくてもかなりの逆光下で白飛びしませんでした。(HDR入れているDRY-7000cより強い)
なお、HDR処理は本来はチップセット側のソフトウェアで処理するものが多いと思うのですが、イメージセンサーにHDR機能が搭載さえているものもあるらしく、HDRモードでなくても逆光体制が強いものがあるようです。
何れにしてもスマホのカメラは素のダイナミックレンジがかなり広いようです。
…ということなので、夜間に関しても普通のドラレコに比べるとかなり明るいですね。
手元にあるスマホを使用するなら追加コストが掛からない
この点は説明するまでもありませんが、手元にあるスマホを使用するなら追加のコストは抑えられます。
ただし、スマホを設置するマウント類は必要になるでしょう。
熱対策がドラレコとしての利用を想定していない為、撮影中にシャットダウンする可能性が高い
ここからはスマホの弱点になりますが、スマホをドライブレコーダー代わりに使用する際に起こり得る、最も致命的なトラブルは、ズバリ!熱によるダウンです。
平均的なドライブレコーダーの動作可能温度は60~70℃程度までになっており、一昔前のドライブレコーダーだと真夏にはクーラーをつけていても、フロントガラス越しに直射日光を浴びる事で限界温度を超えて動作を停止するものがありました。
流石に最近のモデルでは走行中のシャットダウンの経験はありませんが、ドライブレコーダーは設計時に真夏の高温時の放熱性などを考慮して設計されています。
ハイスペックになればなるほど、発熱量も増えますので当然の処置ですね。
【パパゴのハイエンドモデルの事例】
なお、iPhoneの使用時の耐熱温度は35℃までとなっていますので、直射日光に当ててカーナビアプリを使用すると簡単に落ちる事もあります。
充電しながら炎天下で撮影すると、バッテリー破裂の危険性が高まる
熱の問題で怖いのはシャットダウンだけでなく、バッテリーの破裂です。
まぁ、確率は高くありませんが充電しながら炎天下で動画の撮影をすると、バッテリーへの負荷はかなり高まりますので、運が悪いと破裂する事もあるかも知れませんね。
設置の際に相当工夫しないと、振動などで動画がブレブレになる
因みに今回テストで使用したマウントはこちらですが、柄の部分が長くなりすぎるのと関節が多くなる為、少しの振動でも増幅されてブレブレの動画になります。(笑)
従ってこう言った構成でフロントガラスに設置するのは全くおすすめしません。
どうにか振動を最小限に抑えられたのは、上で紹介したスタンド部分のみを使用し、ダッシュボード上に両面テープで立てる方法です。
この方法であれば足回りの柔らかい車ならそれなりに撮影できる?かも知れません。因みに社外スポーツサスを入れているコペンの場合にはこれでもそこそこブレます。
まあ、設置方法については車種次第と言ったところになるでしょうか。
なお、オウルテック「OWL-DR03」についてはマウント手配できなかった為、助手席の人にスマホをダッシュボードとフロントガラスに隙間に押し当ててもらって撮影しています。
また、撮影に使用したのはコペンではなく、ランエボ10なので若干振動が少なかった事もブレが少ない理由かと思います。(普通の車ならもっと少なくなると思います)
録画視野角が狭いので、事故の際の状況証拠能力は限定的
最後にスマホの弱点ですが、ドライブレコーダーに比べると致命的に録画視野角が狭くなります。
本当に正面だけしか撮影されないので、横斜め前側の衝突ですら録画されない恐れもありますね。
なお、androidスマホはmicroSDカードにストレージを確保出来ますが、iPhoneは不可ですのでストレージの圧迫の問題も発生します。
おすすめのアプリがどうこう以前の問題かと思います
…という訳で、スマホをドラレコ代わりに使用するのは構わないのですが、熱や録画視野角の問題でいざという時の証拠が全く映らない可能性がそこそこあります。
従って基本的にはスマホをドラレコ代わりに使用するのはおすすめしないのですが、趣味で景色を綺麗に撮影したいという場合に限っては、使用時間も短くなりますし、熱の問題も限定的になると思いますので、これはなかなか興味深いテーマではないかと思います。
おそらく、今後の2~3年でドラレコの画質はそこまで向上しないと思いますが、スマホは他に差別化ポイントがないので、視野角が広がったり解像度が上がったりとさらなるバージョンアップも期待できますよね。
気になる方はとりあえず以下のマウントでどれだけ綺麗に撮影できるのか試してみては如何でしょうか?
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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