※2019年1月15日更新~最新の情勢に合わせて内容を見直しました。
ドライブレコーダーが一般に認知され始めてから、そろそろ4年くらい経ちますが、私の回りの人達(自動車業界ではなく、たまに会う前の会社の同僚)のドライブレコーダー搭載率は思ったより低いです。
多分、良くて2~3割くらいかと思いますが、時々飲みに行った時にそう言った話になっても、私は別に「ドラレコを搭載した方が良いよ」とは言いません。
なぜかというと、現時点でドラレコを搭載していない人はその必要性を感じていないから搭載していないのであって、必要性を感じていない人にドラレコの必要性を説いて回るほど、私はお節介焼きではないからです。(笑)
因みに…、私は2013年から前後にドラレコを搭載していますが、諸般の損得を考えた上で必要だから付けたというよりも、どちらかというと車絡みの趣味の一環として面白そうだから付けた、という側面が強いです。
まぁ、事故対策ももちろん考えてましたが、それよりも感情的に欲しかっただけです…そもそも理屈だけで考えると「車は持たない方が良い」という結論に行きつきますし、人は理屈よりも感情で物を買うと言われてますからね。
2017年末の東名高速の煽り事件から、日本国内でのドライブレコーダーの販売数量が一時的に3~4倍まで伸びていますが、これはマスコミがユーザーの不安を煽る様な報道を繰り返した影響が強く「不安という感情に駆られたユーザーが、一斉にドラレコを購入した」と私は分析しています。
この記事をご覧になっている方の大半は、これからドライブレコーダーを購入しようかどうか検討している方ではないかと思いますが、そう言う方に対して私は「ドライブレコーダーは必要ですよ」とは言いません。
ただし、「ドライブレコーダーは必要ではありません」とも言いません。(笑)
ドライブレコーダーが必要かどうかは、本来個々のユーザーが考えるべき事であって、他人が決める事ではないからです。
まぁ、普段はドラレコのセールス的な記事も書いている人は、こんな事を書いてはならないのですが、おそらくこの記事に辿り着いた人は、感情ではなく理屈で考えてドライブレコーダーを搭載する事によるメリットと、搭載しない事によるデメリットを知りたいのだと思います。
…、という訳ですのでドラレコを購入しようかどうか検討している方向けに、客観的な事実を提示した上で私の考えるドライブレコーダーのメリット=搭載しない事のデメリットについてご説明します。
車を運転していて事故に遭う確率ってどんなもん?
警察庁の発表する2017年版の交通事故統計を見ると、警察が認知する2017年の交通事故の人身事故の発生件数は47.2万件となっていますが、車両対車両での物損のみの事故に関しては統計はありません。
なので…、少し古いデータになりますが、物損事故の件数が掲載されているものとしては最新となる、日本損害保険協会が刊行する「自動車保険データにみる交通事故の実態」を参照します。
こちらの統計によると、保険が支払われた事故件数は年間で722万件となっています。
ここ数年ででは車の安全装備の充実により人身事故件数は2割程度減少傾向にあるものの、物損事故での損失額はほとんど変わっていないようです。
※保険を使っていない軽微な事故に関してはカウントされないと思いますので、実態はさらに多いでしょう。
事故に関わったドライバーの数を考えてみると、車両相互の場合には件数×2人となりますので、1,171万人程度のドライバーが何らかの形で車の運転時に事故に遭っていると考えられますね。
2018年時点での普通免許を保有するドライバーの数は、8,226万人となりますので、ざっくりと免許保有者の7人のうち、1人が1年間の間に事故に遭っていると見る事が出来ます。
なので、1年間に事故に遭う確率は1/7となります。
1年間に事故に遭わない確率は6/7ですが、10年間連続で事故に遭わない確率は21.4%しかありませんので、80%程度の人が10年車に乗っていれば何らかの事故に遭うという事になります。
20年間事故に遭わない確率は4.6%、30年間では99%以上の人が事故に遭う確率です。
という訳で、長期的に見て行くと「車に乗るなら必ず事故に遭うと思え!」というのは間違いではないですね。
従って「自動車の任意保険には必ず入りましょう!」という事になりますが、問題は事故で保険を使った時の自動車保険の等級ダウンによる支払い額の上昇です。
事故の際の保険使用による保険料の割増し
2013年4月1日から導入された、自動車保険の新等級制度により、事故を起こして保険を使った人への実質的な保険料の割り増し率が大きく撥ね上がりました。
保険会社によって新等級制度の以降の掛け金の状況は様々ですが、共通しているのは事故を起こして保険を使った場合には「等級が3つ下がるだけでなく、3年間は下がった後の等級の割引率すら適用されない」という事になっています。
級制度 | 係数 | 新制度 | 無事故係数 | 事故有係数 |
---|---|---|---|---|
1等級 | 1.52(+52%) | 1等級 | 1.64(+64%) | |
2等級 | 1.26(+26%) | 2等級 | 1.28(+28%) | |
3等級 | 1.10(+10%) | 3等級 | 1.12(+12%) | |
4等級 | 0.99(+1%) | 4等級 | 0.98(-2%) | |
5等級 | 0.90(-10%) | 5等級 | 0.87(-13%) | |
6等級 | 0.83(-17%) | 6等級 | 0.81(-19%) | |
7等級 | 0.77(-23%) | 7等級 | 0.70(-30%) | 0.80(-20%) |
8等級 | 0.72(-28%) | 8等級 | 0.60(-40%) | 0.79(-21%) |
9等級 | 0.67(-33%) | 9等級 | 0.57(-43%) | 0.78(-22%) |
10等級 | 0.63(-37%) | 10等級 | 0.55(-45%) | 0.77(-23%) |
11等級 | 0.60(-40%) | 11等級 | 0.53(-47%) | 0.75(-25%) |
12等級 | 0.56(-44%) | 12等級 | 0.52(-48%) | 0.73(-27%) |
13等級 | 0.53(-47%) | 13等級 | 0.51(-49%) | 0.71(-29%) |
14等級 | 0.50(-50%) | 14等級 | 0.50(-50%) | 0.69(-31%) |
15等級 | 0.48(-52%) | 15等級 | 0.49(-51%) | 0.67(-33%) |
16等級 | 0.45(-55%) | 16等級 | 0.48(-52%) | 0.64(-36%) |
17等級 | 0.43(-57%) | 17等級 | 0.47(-53%) | 0.62(-38%) |
18等級 | 0.41(-59%) | 18等級 | 0.46(-54%) | 0.60(-40%) |
19等級 | 0.39(-61%) | 19等級 | 0.45(-55%) | 0.58(-42%) |
20等級 | 0.37(-63%) | 20等級 | 0.37(-63%) | 0.56(-44%) |
新制度の場合、例えば10等級の人が事故を起こした場合、翌年等級が7に下がりますが3年間は「事故有係数」が適用され、7~9等級の3年間は、20%程度の割引しか適用されません。
4年目からは10等級となり、「無事故係数」に戻りますが、そのまま無事故で20等級になった場合との保険料を比較すると驚くべき差が生まれます。
保険を使って7等級に下がり、20等級になるまでには14年かかりますが、仮に割引なしの保険料が10万円のケースであれば、14年間で768,000円の支払いとなります。
年数 | 等級 | 割引率 | 支払額 |
---|---|---|---|
1 | 7等級 | 0.80(-20%) | 80,000 |
2 | 8等級 | 0.79(-21%) | 79,000 |
3 | 9等級 | 0.78(-22%) | 78,000 |
4 | 10等級 | 0.55(-45%) | 55,000 |
5 | 11等級 | 0.53(-47%) | 53,000 |
6 | 12等級 | 0.52(-48%) | 52,000 |
7 | 13等級 | 0.51(-49%) | 51,000 |
8 | 14等級 | 0.50(-50%) | 50,000 |
9 | 15等級 | 0.49(-51%) | 49,000 |
10 | 16等級 | 0.48(-52%) | 48,000 |
11 | 17等級 | 0.47(-53%) | 46,000 |
12 | 18等級 | 0.46(-54%) | 45,000 |
13 | 19等級 | 0.45(-55%) | 45,000 |
14 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
合計保険料 | 768,000 |
一方で事故を起こさなかった場合は、10年目に20等級に達し、14年間の保険料は6260,00円で上のケースに比べて合計支払額に142,000円もの差が生まれます。
年数 | 等級 | 割引率 | 支払額 |
---|---|---|---|
1 | 11等級 | 0.53(-47%) | 53,000 |
2 | 12等級 | 0.52(-48%) | 52,000 |
3 | 13等級 | 0.51(-49%) | 51,000 |
4 | 14等級 | 0.50(-50%) | 50,000 |
5 | 15等級 | 0.49(-51%) | 49,000 |
6 | 16等級 | 0.48(-52%) | 48,000 |
7 | 17等級 | 0.47(-53%) | 47,000 |
8 | 18等級 | 0.46(-54%) | 46,000 |
9 | 19等級 | 0.45(-55%) | 45,000 |
10 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
11 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
12 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
13 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
14 | 20等級 | 0.37(-63%) | 37,000 |
合計保険料 | 626,000 |
つまりこの場合は、14万円以上の修理費が掛かる場合にのみ保険を使った方が良いという事になり、そうでなければ自分でお金を出して直してしまった方が良いという事になります。
では、この事実がドライブレコーダーとどういう関係があるのでしょうか?
今後はなるべく保険は使わない方が良い
当たり前の話ですが事故に遭わずに保険は使わない方が良いに決まっています。
しかし、車に乗る時間が多い人の場合、自ずと事故に遭う確率は高まり、万全の備えをしていても不慮の事故に巻き込まれてしまう事があります。
事故は相手次第であらぬ要求をされる事がある
管理人の妻の起こした事故の例を挙げると、過去に信号交差点で左折する際に右折車が割り込んで来て相手の側面とこちらの右側バンパーが接触した事故に遭いました。
当初は相手側が「自分の方が割り込んだ状態で接触した」と認めていたにも関わらず、後から主張を覆し、「自分が車線に入りきった後で、こちらが突っ込んできた」と言い出しました。
従ってこちら側の過失が重く、過失割合は7:3と相手の保険会社が主張し弁護士を立てる云々と言い出す始末…。
もちろん、こちら側も事実と事なる内容を受け入れる訳には行きませんので、こちらの保険会社に粘って戦ってもらった結果、3:7の過失割合に収まりました。
双方の修理代が20万円程度でしたので、こちらの負担は6万円で済み、結局保険は使いませんでしたが、これが7:3であれば14万円の負担となり、保険を使っていたかも知れません。
保険を使おうが使うまいが相手の虚偽の主張を飲んでいたら、10万近くの損になります。
ドライブレコーダーは事故の有力な証拠となる
残念ながら、世の中モラルの高い人ばかりではありません。
ドライブレコーダーの動画は事故に遭った時に相手に嘘の証言をさせない抑止力になるとともに、嘘の証言をされても覆す有力な証拠となり得ます。
万人に必要であるかどうかは、そのユーザーがどう考えるかにもよりますが、保険を使うなら一発の事故で数万~十数万円の保険料が上昇しますし、こちらの過失割合が下がれば「保険を使わない」という選択肢も出てきます。
もともと保険料率が低い車に乗っている場合には、ドラレコのメリットは薄くなりますが、以下の場合にはメリットが大きくなります。
①保険料率の高い車に乗っている人
②20代、または65歳以上の人(年齢限定割引が受けられない)
ドライブレコーダーの必要性についてのまとめ
ドライブレコーダーを搭載する事で、事故の際の交渉が必ずしも有利になる訳ではありませんが、相手の虚偽の証言の為に本来払う必要のない保険料を払わずに済むリスクが軽減されるのは確実です。
保険会社に余分なお金を払わなくて済むように、ドライブレコーダーで出来る限り自己防衛した方がトータルコストは安くなる確率は高いと思いますね。
後は皆さんの考え方次第です。
因みに…、自動車保険のドライブレコーダーセットメニューも最近はガッツリと宣伝されてますよ。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
コメント
はじめまして、こんにちは。
ドライブレコーダーを購入しようか、どんなものがいいか、とても迷っている中こちらの記事にたどり着きました。
とても客観的な記事で、事故に合う確率や保険の話もわかりやすく丁寧に書かれてあり、
人は感情で物を買うという話や、必要かどうかは他人が決めることではないという考えなどとても勉強になる記事でした。
ドライブレコーダーの購入や今後の生きる上での考え方の参考にさせて頂きます。
ありがとうございました。
zukku様
最終的には好みと考え方次第って事ですね。