スバル・レガシーB4との出会いと別れ|個性あふれるAWDスポーツセダンの実体験レビュー

スバル・レガシーB4。個性あふれる全輪駆動のスポーツセダンとの出会いは、2005年の秋のことでした。

ふと「18歳で初めて車を買ってから、今までに何台乗り継いだだろう?」と数えてみたところ、55歳の私が乗ってきた車の数はなんと13台。

平均すると1台あたりの所有期間は3年未満という計算になります。

しかしこれは、単なるクルマ好きによる買い替えというより、6回にも及ぶ海外引っ越し(日本→海外、海外→海外、そして帰国)による事情が大きく関わっていました。

気に入った車でも、国境をまたぐ輸送費用がネックで泣く泣く手放すことも多く、それがこの乗り換え歴を形成していたのです。

そして、そんな回想をしていた理由こそが「14台目の車選び」が目前に迫っていたからでした。

当時はトヨタ・エスティマを息子と共有していたのですが、息子が独立して別居することとなり、私専用の駐車スペースが空いたのです。

「次に選ぶなら、個性的で、大人が楽しめるスポーツセダンを」——そんな想いが、私を新たなカーライフへと導くことになります。

あのトヨタ・アルテッツァが、レクサスIS250に!

2005年、トヨタは日本国内で新たなブランド展開をスタートしました。
それが「レクサス」です。

それまで海外専用だった高級ブランドがついに日本上陸し、セルシオ→LS、アリスト→GS、ソアラ→SCといった具合に、既存のトヨタ車が高級仕様へと進化。

その中に、私が過去に所有していた「アルテッツァ」があり、これは「レクサスIS250」として新たに生まれ変わったのです。

アルテッツァとIS250。車名は似ていても中身は別物でした。

  • 外装デザインも刷新され
  • 車体サイズも大きくなり
  • 質感も走行性能もすべてがワンランク上に
  • 当然ながら価格も高級車帯へシフト

FRスポーツセダンとしてのコンセプトは共通していても、その実態は「別物」と言えるほどの進化でした。

私は以前、BMW3シリーズのオーナーとして欧州スポーツセダンの魅力を体感し、その後国産車で近い感覚を求めてアルテッツァを選んだ経緯があります。

しかし、IS250を目にした時、「これはBMWに並ぶ質感と価格設定だ」と直感しました。

つまり、トヨタのブランド戦略は明確だったのです。

BMWやメルセデスと真っ向勝負を挑むべく、「レクサス」という名で国内高級車市場に本格参入したのでした。

14台目の候補、先ずは国産車から

トヨタ・エスティマにしばらく乗っていたものの、私の本音は「やっぱりセダンに戻りたい」。
とくに今回は「大人が楽しめる、個性的なスポーツセダン」にこだわりがありました。

レクサスIS250は、その最有力候補の一つ。しかし希望するオプションを含めると価格は500万円に迫り、それなら輸入車を含めた多くのモデルも検討対象になります。

まずは選択肢を絞るため、「これまで乗ったことのないメーカー」に注目することにしました。
そこで浮かんだのが、富士重工業、つまり「スバル」です。

初めてのスバルディーラー訪問

当時のスバルは、ツーリングワゴン「レガシィ」が街中にあふれるほどの大ヒットを記録しており、誰もが知る存在でした。

しかし私の狙いはあくまで“セダン”。選んだのはそのセダン版「レガシィB4」です。

ワクワクしながらショールームを訪れたのですが、残念ながらB4の展示車は見当たりません。

その代わりに目を奪われたのが、まばゆいWRCブルーの「インプレッサ S204」。パネルには“限定600台”“約500万円”という衝撃のスペックが掲示されていました。

刺激的すぎたS204との出会い

S204の存在感はまさに“特別”。

6速MT、320馬力というレーシングスペックのその車を見て、「これがスバルの本気なのか」と圧倒されました。

ただしこの車は、55歳の私が求める“大人のスポーツセダン”とは違う方向性。

確かに刺激的ではありましたが、日常を共にするには少々過激すぎると感じたのです。

それでも、この出会いがきっかけとなり、私はスバルというブランドに対する見方を一変させました。

  • モータースポーツに根差した思想
  • STI(スバルテクニカインターナショナル)の技術力
  • 水平対向エンジンとAWDという独自路線

これらに強く惹かれ、「次の1台は、スバルで探してみよう」と心が傾いていったのです。

スバル・レガシーB4の試乗、そして決断

展示車はなかったものの、営業マンに尋ねると試乗車があるとのこと。

案内されたディーラーの敷地内駐車場には、黒の「レガシーB4 2.0GT spec.B」が静かに佇んでいました。

搭載されるのは、スバル伝統の水平対向4気筒DOHCターボエンジン。2.0Lながら260馬力という高出力を誇るこのモデルは、見た目は落ち着いたセダンでありながら、確かなパフォーマンスを秘めています。

「最初はゆっくりとアクセルを踏んでください」との営業マンの言葉に従い、慎重に国道へ出たものの──

驚きの加速力とコーナリング性能

わずか数分後、軽い上り坂でアクセルを踏み込んだ瞬間、背中がシートに押し付けられるような強烈な加速感に襲われました。

「これが260馬力の実力か…」

BMW318iやアルテッツァなど、これまで所有したどの車とも違う圧倒的なトルク感に、思わず笑みがこぼれました。

その後は冷静になり、ハンドリング性能を確かめるために県道へ。

やや荒れた路面では足回りの硬さを感じつつも、コーナリング時にはビルシュタイン製ダンパーと18インチホイールが生み出す優れた安定性が光りました。

スバル独自の全輪駆動「AWDシステム」は、まるでレールの上を走るかのような安心感を提供してくれます。

これは、FRとは異なる走行フィール。初めてのAWDセダンとして、非常に好印象でした。

購入の決め手は“理屈より感覚”

試乗後、私は営業マンに3つの質問をしました。

  • 黒のボディカラーにアイボリー本革シートの設定はあるか?
  • 納車までの期間は?
  • 値引き交渉は可能か?

回答は以下のとおりでした:

  • 2.0GTではアイボリーシートの設定は不可。設定があるのは上位モデル「3.0R」のみ。
  • 3.0Rなら在庫があり、早期納車が可能。
  • さらに、3.0Rは2.0GTよりも大きな値引きが可能とのこと。

つまり、営業サイドとしては在庫のある「3.0R」を勧めたい様子。それでも、その説明に嘘はなく、私は3.0Rの試乗もお願いすることにしました。

3.0Rとの比較と最終判断

3.0Rは、ターボではなく3.0Lの自然吸気水平対向6気筒エンジン。スペック上は250馬力と、2.0GTと比べてわずかに劣るものの、走り出しの滑らかさと静粛性には明らかな違いがありました。

エンジンの振動が少なく、スムーズに回る感覚は非常に上質。

また、17インチタイヤへのダウンサイズによるフィーリングの違いは、私にはほとんど感じられませんでした。

総合的に判断して──

  • 希望していた内装カラーが選べる
  • 納車が早い
  • 割引が大きい
  • そして、走りに大きな不満がない

以上の理由から、私はスバル・レガシーB4 3.0Rの購入を即決しました。

楽しくも短かった“スバリスト”ライフ

スバル・レガシーB4 3.0Rとのカーライフは、納車直後から濃密な時間でした。

初の長距離ドライブでは、神奈川県を出発して四国を一周し、日本海側を経由して京都へ戻るという全行程2,700kmの旅。

まさに“慣らし運転”には贅沢すぎる旅でしたが、このB4とならどこまでも走れるという確信を持てた時間でもありました。

燃費は平均で約8km/L。2.0L自然吸気エンジンのアルテッツァに比べれば劣る数値ですが、走り・質感・快適性のすべてにおいて、それを補って余りある魅力がありました。

“スバリスト”と呼ばれる理由がわかった

「一度スバル車に乗ったら、もう他のメーカーには戻れない」

そんな言葉をどこかで聞いたことがありましたが、今ではその意味がよくわかります。

  • 水平対向エンジンによる独自のフィーリング
  • 路面をしっかり捉えるAWDシステム
  • ブランドの奥にある“走りへの真摯さ”と“個性”

これらは、カタログスペックだけでは決して伝わらないスバル独自の魅力であり、気づけば私も立派な“スバリスト”の一員になっていたのです。

わずか1年半での別れ、でも後悔はない

そんなB4との時間は、残念ながら長くは続きませんでした。仕事の都合で再び海外赴任が決まり、泣く泣く手放すことに。

信頼できる友人に売却し、交換時に取り外して保管していたノーマルパーツ(マフラーやスプリング)をトランクに積み込んで、最後のドライブ。

静かに走り去るB4の後ろ姿を見送りながら、心の中ではすでに「次は海外で、どんな車に出会えるだろうか」と、15台目の愛車探しが始まっていました。

(ライター :ゴル)

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