HDRとWDRの違いは?

※2019年1月21日更新~2019年の情勢に合わせて記述を見直しました。

HDRとWDRはカメラの白飛びや黒潰れの補正機能として知られていますね。

最近のドライブレコーダーでは90%以上のモデルで「HDR」「WDR」のいずれかのスペック表記が見られますが、この2つの機能の違いはどこにあるのでしょう?

カメラの明暗の表現能力には限界がある

カメラの明るさを表現する機能は、人間の目よりも性能が低く、風景であれば肉眼で感知できる明るい部分と暗い部分の光の量の差(コントラスト比)に10万:1くらいの差があるにも関わらず、3.2万:1くらいの差までしが表現出来ません。

このコントラスト比の幅をダイナミックレンジ(DR)と呼びます。

人間の目でもトンネル内などの暗いところから、出口の明るい方を直視すると眩しく感じ、周りが見えなくなる事もありますので、人間の眼も万能であるという訳ではありません。

写真のイメージだとこんな感じです。

2016y03m05d_173523835

画像の上の部分は白飛び、下の部分は黒つぶれしています。

このようなコントラスト比が大きい状況下で撮影された画像を補正するのがHDRやWDRといった機能です。

2016y03m05d_173603256

HDRとWDRの違いは?

HDRとWDRの違いを最も簡単に表現すると本来は以下の通りとなります。

①HDRはソフトウェアによる補正処理

②WDRはハードウェアが高性能であるという目安を表す言葉

HDRは画像補正のソフトウェア処理

HDRは「ハイダイナミックレンジ」の略で、光の取り込みレベルを変えた写真を複数枚同時に撮影して、これらの写真のうち見易い部分を合成して出力する技術として浸透しています。(スマホのカメラにもHDR機能は搭載されている)

簡単に言うと、露出を変えた以下の2枚の画像を合成するという事になります。

①画面の中で最も明るい部分に露出を合わせた画像

②画面の中で最も暗い部分に露出を合わた画像

 

イメージ的には以下の2つの画像を合成したのがHDR処理です。

白飛び・黒潰れを抑える処理としては抜群の効果が期待出来ます。(モデルや調整方法にもよる)

WDRはハードウェアの性能の目安を表現する言葉

一方でWDRはどうかというと、本来的な用語の意味は「そのガジェットが幅広いダイナミックレンジに対応出来る」という事になります。(「ワイドダイナミックレンジ」~コントラスト比が幅広いという事)

一般的にはドラレコを含むカメラ類の基幹パーツである、レンズやCMOSなどのイメージセンサー類のハードウェアの性能が高く「妙な?補正処理をしなくても白飛び・黒潰れしにくいですよ」と言った特性を表現する言葉です。

ただし、ドラレコ業界ではこのような一般的な意味で「WDR」と表現しているメーカーと、ソフトウェアで画像のコントラストを落として画像を見易くする処理を「WDR」と表現しているメーカーがあります。

以下の画像のコントラストをソフトウェアで調整すると…

2016y03m05d_173523835

以下のようなぼんやりした明るにメリハリのない画像になります。(ただ、認識しにくい部分は少ない)

ドラレコ業界の「WDR」という言葉の使われ方をまとめると、以下の通りとなります。

①ソフトウェアの処理を行わないが、ソフトウェアの性能でダイナミックレンジが広いモデルの性能の指標を指す(色と明るさのメリハリがあり、景色が綺麗に撮影出来る)

②画像のコントラストを落として画像を見易くするソフトウェアの処理を指す(色と明るさのメリハリがなく、ぼんやりした印象の画像になる)

HDRとWDRのメリットとデメリット

HDRとWDRは本来は全く違った意味合いの言葉、処理を指す言葉なのでそれぞれハッキリとしたメリット・デメリットが存在します。

HDRのメリット

①画像を合成しているのでWDRよりも白飛び・黒潰れに強い

②ソフトウェア処理をしていないWDRモデルに比べると明るさや色目のメリハリがないが、コントラストを落とすソフトウェア処理をしているWDRモデルよりはメリハリがある

HDRのデメリット

①1コマ当たり2枚の画像を撮影して合成する為、ハードウェアに負荷が掛かり動画がモザイク状に乱れやすい

②1コマ当たり2枚の画像を撮影して合成する為、録画データの多きさが2倍になる~実際には動画の圧縮率を上げているので、ビットレートが低い動画ファイルとなり、画質が落ちる

③コントラストを落とすソフトウェア処理をしているWDRモデルよりは明るさや色目のメリハリがあるが、ソフトウェア処理をしていないWDRモデルに比べるとメリハリがない

WDRのメリット(補正なし)

①HDRよりも処理が軽いので動画に乱れが発生しにくい

②HDRと比べると録画データの多きさが半分になる~実際には動画の圧縮率を下げているので、ビットレートが高い動画ファイルとなり画質が上がる

③景色も綺麗に撮影が可能で、ナンバー認識精度も高くなり易い

WDRのデメリット(補正なし)

①HDRほどのダイナミックレンジの広さは得られないので、白飛び・黒潰れを抑える効果はイマイチ

WDRのメリット(補正あり)

①HDRよりも処理が軽いので動画に乱れが発生しにくい

②HDRと比べると録画データの多きさが半分になる~実際には動画の圧縮率を下げているので、ビットレートが高い動画ファイルとなり画質が上がる

③補正なしのWDRよりも白飛び・黒潰れに強い

WDRのデメリット(補正あり)

①HDRに比べると白飛び・黒潰れに弱い

②コントラストが低いので文字が背景から浮き出ず、ナンバー認識精度は下がり易い

③明るさや色目のメリハリがないので、景色は綺麗に撮影出来ない

なんちゃって「HDR」もあるよ!

前述したように、「HDR」と「WDR」の違いは以下の通りとなるのですが…

①HDR~ソフトウェアによる補正処理

②WDRその1~ソフトウェアの処理を行わないが、ソフトウェアの性能でダイナミックレンジが広いモデルの性能の指標を指す

③WDRその2~画像のコントラストを落として画像を見易くするソフトウェアの処理を指す

 

メーカーの中には③のWDRその2の「画像のコントラストを落として画像を見易くするソフトウェアの処理」をHDRと呼んでいる「なんちゃってHDR」も存在します。法に触れなければなんでもOKさ!

その辺りの詳細については以下の記事で詳しくご説明しています。

ドライブレコーダーのHDR補正の正体
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ドライブレコーダーはHDRとWDRのどちらを選べば良いの?

個別のドライブレコーダーの画質を見れば、一発でどのタイプか分かるものもありますが、良く分からないものもあり、「HDR」「WDR」の表記だけではなかなか本当の性能は分かりません。

そもそも「WDR」に関しては明確な定義がある訳でもないですし、メーカー側が「ダイナミックレンジが広い!」と言えば「WDR」になります。

最近は「HDR」ですら故意なのか誤用なのか分かりませんが、コントラストの調整を「HDR」と表現しているモデルもあったりなかったりしています。

 

従って「HDR」と記載の製品でも「WDR」モデルに白飛び・黒潰れ耐性が劣る事もありますし、結局は動画を見比べるしかないのですが、残念ながらメーカー側は自社と他社の製品を並べて比較するような事はしません。

目当てのドライブレコーダーで、逆光下で撮影されているYoutube動画などを探して、何となく納得するしかなさそうです。

過去に100種類以上のドライブレコーダーの動画を比較してきましたが、2019年1月現在ではコムテックの「HDR-751G」や「HDR-352GHP」などのHDR補正が白飛びには最も強く、次いでケンウッドの「DRV-830」、TA-Creativeの「TA-011C」のHDR補正となっています。

ただし、これらのモデルの補正はハードウェアにかなり負荷を掛けているように見受けられ、ノイズやぼやけが発生するケースもあります。

一方でWDRと謳われている製品でも、THINKWAREの「F750」や「F770」などのように非常にダイナミックレンジが広く、白飛びや黒潰れに強いものもあります。

最近ではどのドライブレコーダーでもほとんど「HDR」「WDR」の表記が見られ、この表記自体は比較項目としては全く当てになりませんので、やはり実際の動画を見比べて判断する方が良いでしょう。

ドライブレコーダーのHDR補正の正体
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(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣

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