4月のパイオニアの製品発表会ではドライブレコーダーなどの新製品の展示以外にも、今後同社のオーディオメインユニットでamazonの音声アシスタント「Alexa」への対応が実装される旨のアナウンスがありました。
現時点ではカーナビではなくあくまでもオーディオメインユニットでの話になりますが、おそらく近いうちにサイバーナビでもAlexaが実装されるのではないかと予測していますが、自動車業界の流れはテレマティクス化の一環として純正のメインユニットにこの手の音声アシスタント機能が実装される方向性となっています。
もちろん、最近の車はメインユニットの規格が車種専用のものとなる傾向が強まっていますので、いずれはアフターパーツのメインユニットは用無しになる可能性もありますが、全ての車に一斉にこのような機能が搭載される訳ではありませんので既存の車の後付けテレマティクス化はなかなか興味深い題材ではありますね。
今回はこの後付けテレマティクス化のうち、スマートスピーカーを使用して一体どのような事が可能になるのか?そもそもそれは必要なのか?というテーマについて考えてみました。
そもそもスマートスピーカーって何なのさ!
スマートスピーカーとはスマート家電の一種ですので、このスマート家電について先に説明しておきます。
スマート家電とは音声で各種操作が可能な家電製品の事を指しますが、大きく分けると以下の3つに分類されます。
①もともとリモコン受信機能のある従来の家電(テレビ・エアコンなど)
②リモコン受信機能がない家電にリモコン受信機能を付けて販売されている製品(電球類など)
③スマートスピーカーやスマホなどの「音声認識とWiFi・インターネット通信のいずれかが可能な」デバイス類
スマートスピーカーやスマホは音声認識が可能で、デバイスそのものを音声で操作する事も出来ますが、このシステムの中では主に他の家電に指令を送る機能を担う事になります。
一般的なイメージとしては、以下の図のように音声認識ガジェット→リモコンユニット→家電、と言った流れで情報が伝達され、各種家電類が動作します。(インターネット通信を経由すれば外出先からも操作可能)
このうち、スマートスピーカーは命令を直接受け取るの「司令塔」の役割と、スピーカー自体が命令によって動作する「スマート家電」の役割を合わせ持つデバイスという事になりますね。
もちろん、スマホでも同様の操作が可能ではありますが、操作の工程が増えてしまいます。
従ってこのシステムの中では家庭内で純粋に家電をコントロールする事に特化したデバイスがスマートスピーカー、外出先からの操作に特化したものがスマホであると言えるでしょうか。
中にはマイクだけを搭載した「スピーカーではない」にも関わらず、便宜上「スマートスピーカー」に分類されているガジェットもある為に少々話がややこしくなりますが、一般的には音声を受け取るマイクを内蔵しているものが「スマートスピーカー」と呼ばれています。
スマートスピーカーは車載でも使えますが?
スマートスピーカーはWiFiアクセスポイントなどのインターネット環境さえあれば、Bluetoothの送信機能やAUX出力機能を使って車載のオーディオメインユニット経由で車載のスピーカーから音声の出力が可能です。(オーディオ側がBluetoothやAUX入力に対応しているもの)
因みにスマホなどとのBluetooth接続も可能ですので入力・出力の両方が出来るという事ではありますが、一度に接続可能なデバイスは1台のみとなりますので、スマホの音声をスマートスピーカー経由で車のスピーカーから出力する事は出来ません。
amazonのEcho Dotなどの家庭用のスマートスピーカーでは電源入力部がAC100Vとなっている為、そのままでは使用できませんがDC/ACコンバーターを使用する事で使用自体は可能になります。
…が、これらの家庭用のスマートスピーカーはモバイルルーターやスマホなどの通信機能を利用しなければ機能しませんし、スマホのAlexaなどの音声認識アプリでも可能な事しか出来ませんので車載には向いていません…というか車載する意味がないと思います。
スピーカー機能も活用出来なくもないですが、車載のスピーカーは1個当たり50W程度の出力であるのに対してスマートスピーカーはせいぜい15W程度の出力しかありませんし、音の飛んでいく方向が水平方向に360°ですので車内での音楽鑑賞には最も向いていない構造と言えます。
車載専用のスマートスピーカーもあるよ
基本的には家電を音声コントロールする為の司令塔であるスマートスピーカーですが、車載専用と謳われている製品もあるにはあります。
amazon「Echo Auto」
代表的な製品としてはamazonのAlexaに対応した以下の「Echo Auto」が挙げられます。(amazon.jpでは未発売の為、現状は並行輸入品が出品されています)
こちらの「Echo Auto」は車載用にスピーカーの機能はスポイルされた音声入力を受け付ける司令塔のみとしての機能しか持たず、音声は車のスピーカーから出力される事を前提として作られています。
また、給電端子は5VのmicroUSB規格、車載を前提としてスピーカーの感度等の調整が行われているようですがその性能は不明です。
USAのamazon.comの製品紹介では主な機能としては以下の説明がありますが、これは本当に必要なのだろうか…と感じるものばかりです。
・帰宅時にガレージの開閉の指示を出す
・スマホのGoogle Map・Apple Mapなどの地図アプリを使用して目的地を設定出来る
ただし、これらは現時点でもスマホ単体でAlexaアプリ・Googleアシスタント・Siriでも可能な機能であったりしますので、実用性は微妙かなと…。
とは言え、スマホのAlexaアプリはデバイス内でのGoogleアシスタント・Siriとの競合を避ける為かどうかは分かりませんが、Alexaの音声ウェイクアップは不可能でスマホ画面のタップ操作が必要です。
また、例外的にAlexaの音声ウェイクアップが可能なAmazon Musicの音声アシスタントを有効にしてしまうとGoogleアシスタント・Siriが使えなくなる為、使い方によっては「Echo Auto」を搭載した方が便利になるシチュエーションも考えられます。
いずれにせよ、現時点ではユーザー側が「Echo Auto」とスマホのアシスタントの特性を理解した上で自分なりに考えた使い方をしなければ逆に不便を感じるガジェットにもなり得るという印象ですね。
例えば「Echo Auto」をオーディオにBluetooth接続している場合、その間はスマホはオーディオに接続出来ません…と思います、というか不明です。
一応、amazon.comの「Echo Auto」のスペック表では通話用のハンズフリープロトコルはサポートされていますので通話は可能ですが、スマホ→「Echo Auto」間のオーディオ再生用の「A2DP」がサポートされているかどうかは良く分からないですし、されてない可能性が高いと考えています。
従ってスマホ内のメディアの音声をカーオーディオで再生するにはオーディオのBluetooth接続先を「Echo Auto」に切り替えなければならないという事になりますね。
「Echo Auto」にBluetoothのブリッジ機能が搭載されていればこの問題は解決されそうですが、現時点ではブリッジ機能はないと思います。(たぶん)
オーディオを「Echo Auto」の接続をAUXにしておけばオーディオの手動操作によるメディアの切り替えで「Echo Auto」とスマホの音楽再生を切り替える事が可能かと思うのですが、これでは全く以ってスマートじゃないですよね…。
スマホ内の音楽は聴かない!と割り切っている方であれば「Echo Auto」のAlexaを使う事でカーナビアプリの操作等を「Echo Auto」から実行できるというメリットは享受出来そうです。
Yahoo!!カーナビは対応していないでしょうから、Google Map・Apple Mapの使用を強制されますが…。
何れにしても言語が日本語対応されているかどうかも不明ですので、現段階では購入は避けた方が良さそうですね。日本で販売されていないのにはそれなりの理由がある筈ですから。(技適の問題もありますし)
Anker「Roav Viva Pro」
「Roav Viva Pro」はカテゴリー的にはAlexaを搭載したシガーチャージャーですし、スピーカーは搭載せずにデザイン的にもまるっきりシガーチャージャーなので、正しくは「Alezxa対応のシガーチャージャー」です。
こちらもamazon.comでは相当売れているようですが、amazon.jpでは並行輸入品のみの展開となっています。
海外のサイトなどを見ていると「Roav Viva Pro」はAlexaを搭載している訳では無く、スマホなどのAlexa搭載の司令塔デバイスとBluetooth接続する事でマイク機能を提供するもののようです。(スマホ側はオーディオと「Roav Viva Pro」の両方と接続)
こちらも自分でテストした訳ではないので動作の状況は不明ですが、スマホをオーディオと「Roav Viva Pro」の両方に接続する事からメディアの切り替えは「Echo Auto」よりも楽なのではないかと考えられます。
興味はあるのですが、かなりの高確率で現段階では技適の認証が終わっていない可能性もあるのでりますので日本での正式販売を待つことにします。
GARMIN「GARMIN Speak」
「GARMIN Speak」は大手アクションカメラメーカーの「GARMIN 」のAlexa対応デバイスですが、こちらは何故かフロントガラスに設置するタイプのスマートスピーカー?となります。
機能的にはamazonの「Echo Auto」に近い感じになるかと思いますが、筐体をドラレコ内蔵型の「Garmin Speak Plus Dash Cam」と兼用としている為にこのようなデザインになっているのかなと…。
この仕様と価格帯を考えるとを素直に「Echo Auto」を選んだ方が良さそうです。
まとめ
現時点で国内外で発売されている車載向けのAlexaデバイスについてざっくりと調べてみましたが、「Echo Auto」スマホ・オーディオとの連携が悪そうですので場合によっては逆に不便になるかも知れません。
「Roav Viva Pro」の方は仕様を見る限りは、スマホ内でGoogleアシスタント・SiriとAlexaと共存が出来るような雰囲気がありますので、これは意外と便利に使えるガジェットなのかも知れない…という印象です。
要はスマホと組み合わせてどこまでのスマホの機能がハンズフリーで使用できるのか?という部分がポイントになってくるかと思いますが、「Roav Viva Pro」は結構良い線を行ってるかも知れませんね。
Ankerから国内で正式販売されるようでしたらテストしてみようと考えています。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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