フロントガラスの曇り止めって効果あるの?

※2019年3月5日更新~ピットワークの曇り止めについてテストを行いました。

フロントガラスは冬になると車内側が曇り易くなりますね。

「そんなもん、エアコンやデフォッガー、デフロスターを使えば一発で解消できるじゃん!」というのはごもっともな意見ではありますが、エアコンが苦手な方もいらっしゃると思いますし、車種によっては(EVですけど)ヒーターをつけると途端に走行距離が短くなったり、ガソリン車であってもアクセルのフィーリングが変わる様な事もあります。

私は出来れば夏も冬もエアコンをつけずに窓を全開にして走りたい派ですし、窓を開けていればフロントガラスが曇る様な事はそれほどありませんが、雨が降っていたり、関東でも1~2月になると流石にこれは寒くて窓を開けたくない…と感じる時もあります。

特にEVのリーフの場合には捨てる筈のエンジンの排熱をヒーターの熱として活かせず、デフォッガーやデフロスターの類を使用すると航続距離が可哀想な事になり、前オーナーからの引継ぎ事項として「冬場は曇り止めを塗りたくって下さい」というものがありました。

ただまぁ、ここ数年は窓を開ける派の私は曇り止めを使用しておらず、10年以上前には「曇り止めなんか全然効果ないんじゃね?」と思わせてくれるような製品しか使った事がなかったので、今回は改めて本当に効果のある「曇り止め」を見つける為に、いくつかの製品を比較してみました。

フロントガラスの曇りの正体

曇り止めの効果を比較する前に基礎知識の復習ですが、フロントガラスの曇りの正体は「水」です。

空気中に気体として漂っている水が、液体化してフロントガラスに付着したものが曇りの原因です。

液体化した水は、ある一定の大きさに育つまでは表面張力によって表面積を最小に維持する為に微小な球体として存在し続けます。

なぜ水が気体から液体になるのか

水が気体の状態のままでいてくれたらフロントガラスの曇りは発生しませんが、なぜ気体から液体になるのでしょうか?

それは車内の気温と車外の気温、車内の湿度が関係してます。

湿度というのは単位体積当たりの空気中に存在している水分(水蒸気)の量によって決まります。

湿度100%というのは空気中に存在出来る「水蒸気の量」がMAXである状態を表し、その水蒸気の量は「飽和水蒸気量」と呼ばれています。

例えば気温が15℃の場合には、「飽和水蒸気量」は1㎥(1m×1m×1m)の体積当たり12.8gとなります。

つまり、気温が15℃で1㎥に12.8gの水蒸気が含まれていると湿度が100%になるという事です。

以下のグラフのように気温が20℃であれば17.2g、30℃だと30.4gが湿度100%の水分量になり、気温が上がると「飽和水蒸気量」は上昇していきます。

■ 気象庁「気象予測ガイドブック」

従ってフロントガラスの内側に曇りが発生する状況は、車内の水蒸気量が車外の気温の「飽和水蒸気量」を超えている状態ということになります。

例えば冬にありがちなシチュエーションとしては以下のようなものが考えられます。

①車内の気温が20℃で湿度が60%だと1㎥当たりに含まれる水蒸気量は17.5g×0.6=10.5g

②車外の気温が10℃で、フロントガラスの周辺の車内の空気は10℃近くに冷やされる為、飽和水蒸気量は9.3gになる

③差し引きで1㎥当たり10.5g-9.3g=1.2gの水蒸気が水滴としてフロントガラスに付着する

 

車に装備されている曇り止め装置であるデフロスターやデフォッガーは、エアコンや電熱線の熱や除湿機能により、車内の湿度そのものを下げたり、ガラスの周囲とガラスの温度を上げる事で曇りを防止する仕組みとなっています。

曇り止め製品の仕組み

今回のテーマは、車のデフロスターやデフォッガーを使用せずにフロントガラスの曇りを防止しようという物ですが、面活性剤に期待できる曇り止めを防ぐ効果は以下の3つが考えられます。

①水滴を膜にする事で白く曇らなくなる

②水滴を膜にする事で水が蒸発し易くなる

③水では落ちない油脂成分などを含んだ汚れが落ちて、水滴がつく表面積が狭くなる

 

水滴を膜にする事のメリット

これらの製品の曇り止めの仕組みは、温度を上げる訳でも湿度を下げる訳でもなく、簡単に言えば「球体」としてフロントガラスに存在するはずの液体の水を、表面張力を低下させる事でごく薄い膜状に変形させる事で曇りを防ぐものとなります。

球体は同一の体積であれば最も表面積が狭く、曇り止めは表面張力を低下させて水を薄い膜状にする事で蒸発し易い環境を作り出す効果もありますが、車内使用の場合にはフロントガラス周辺の温度が上がる訳ではありませんので、一度付着した水滴はガラスの温度か車内の湿度が変わらなければ蒸発はしないでしょう。

水分が薄い膜状に伸びている状態になるので、水滴がつかない分、あまりにも空気中の水分が多い場合にはダラダラと水がフロントガラスを流れ落ちやすくなります。

フロントガラスの汚れを落とすメリット

フロントガラスが汚れている場合、表面が平らではなく凹凸のある状態になりますので、実質的に表面積が広がり、水滴がつく面が広がる事になります。

通常の曇り止め製品には、油脂成分を含んだ汚れを落とす効果もありますので、それだけでも水滴がつきにくくなる…筈です。

今回ピックアップした曇り止め剤は3つ

今回比較テスト用にピックアップした曇り止め剤は以下の3つです。

なお、PIKALとSONAXの製品は実は曇り止め効果は製品に謳われていませんが、カー用品のカテゴリーで「曇り止め」と謳われている製品はどれも効果に対する評価がイマイチでしたので、今回はこの3つのアイテムをチョイスしています。

※パールのSジェットは眼鏡用

とりあえず最悪の環境でテストしてみた

一応、全ての製品をフロントガラスでテスト済みなのですが、分かり易く比較する為にガラスの曇りの面では最も過酷な環境で手っ取り早く比較してみました。

場所は風呂場の脱衣所を兼ねた洗面所です。

湧いた風呂の蓋を外し、風呂のドアを開けっぱなしにした状態で、それぞれの液剤を塗りたくった鏡面エリアの曇り具合を比較します。

結果は写真だと分かりにくいですが、何もせず・水拭き・PIKAL・パールの製品で曇り始めるタイミングに差は見られませんでした。(数分で以下の状態)

SONAX以外のエリアはかなり曇っています。

 

更に数分後…

SONAX以外のエリアは物の形がぼんやり映るくらい曇っています。

…という訳で、曇り止め効果についてはSONAXのエクストリームクリアがもっとも高いという結果となりました。

ただし…白く曇らないというだけで、近くで見るとしっかり水滴と水膜の中間のような状態にはなっている事が分かります。

他のエリアはこんな感じです。

視界の良好度で考えれば、SONAXのエクストリームクリアが最も良さそうではありますけれども…。

フロントガラスでの使用状況

このテストを行う前に、PIKALとパールの製品については、フロントガラスでテストを行っています。

同じ環境ではないですが10月下旬から11月上旬にかけて、いずれも雨で外気温が10℃以下に下がった状態でしたが、両製品ともしっかり曇りやがりました。(笑)

ただし、全く効果がないかと言えばそうでもなく、何もしない状態に比べると曇るまでに時間は掛かります。

また、外気温がく窓を閉め切った状態でも、雨さえ降らなければ曇りはしなかったので、多少の効果はあるかと感じました。

現状、SONAXのエクストリームクリアを車内全ガラスに塗っていますので、雨の日の状況を確認してみます。

また、PIKALとパールの製品間での体感差はありませんでしたので、別の車でSONAXとPIKALの左右塗り分けのテストも行う予定です。

SONAXとPIKALの曇り止め施工手順と所感

今回は車内側のフロントガラス左側にPIKAL、右側にSONAXの製品を塗布してみました。(サイド・リアも左右を塗り分けています。)

手順の部分では双方変わらず、フロントガラスに液を吹き付けてから吸水性の高いクロスで拭き取るだけです。

因みにPIKALの方はこの手のクリーナーとしてはスタンダードなムースタイプ、SONAXは液状です。

どちらが塗布し易いか?という事になるとそれは以下の2つの理由からPIKALのに軍配が上がります。

因みに塗布には以下の同じ種類のクロスと使用しています。

①PIKALはクロスに染み込み易いのでムラになりにくく、SONAXはやや染み込みにくいのでムラになり易い

②PIKALはクロスの細かい繊維がガラスに残りにくいが、SONAXは残り易い(新品ではなく、一度水洗いしたクロスであればやや緩和された)

 

SONAXの場合は、拭き取り用に2枚のクロスを用意して、塗り込み&清掃用と仕上げ用に分けた方が作業性が良いと感じました。

ガラスの曇りの状況

窓の曇りの状況については、外気温が12~3℃で小雨が降っている状態の昼間ではフロントに関しては何も施工していない部分も含めて全く曇らず、サイドはPIKALの方が若干早めに曇り始め、その後SONAXも曇り出しました。

【PIKAL】

【SONAX】

夜間については残念ながら以下のように両方とも見事に曇りやがりました…。

光の関係で左側がより白く見えますが、曇り具合は変わらず…です。

ほんの少しだけPIKALの方が曇り始めるのが早いですが、実用上はあんまり変わらんですね。

また、SONAXの方は部分的に水膜になり掛けているところがあり、一定のゾーンを超えると見易くなるのかも知れませんが、その状態になる前に普通は窓を開けるなり、デフを入れるなりするでしょう。

脱衣所での実験結果については、おそらく一気に室内の温度と湿度を上昇させた事で「白く曇る前に水膜化した」と言ったところなのかと思いますし、フロントガラスに施工する場合には大きなメリットはなさそうです。

おそらく、SONAXの製品はフロントガラスの外側に吹き付ける事で、梅雨時などの気温と湿度が高い状況で、ガラスの外側の曇りを防止する目的では有効に機能してくれるのではないか?と感じました。

 

今回は非常に微妙で残念なテスト結果に終わってしまったので、以下の曇り止め剤を追加で買い足しており、後日テストを行う予定です。

ピットワーク曇り止めのテスト

前回のテストから随分と間が空いていてしまいましたが、ピットワークの曇り止めとSONAXの製品の比較テストを行いました。

今回はフロントガラスを3分割し、左側にSONAX、センターを水拭き、右側にピットワークの曇り止めを施工しています。

なお、前回テストから2ヶ月半くらいはフロントガラスの清掃は一切行っておらず、雨の日などはそこそこ曇りが見られる状態となっていました。

ピットワーク曇り止めの施工手順

ピットワーク曇り止めはクリーナーではないので、初めにクリーナーでガラスを清掃せよとの注意書きがあります。

ただし、今回はクリーナーを使用せず水拭きのみ行いました。(そんなに汚れてなかったので)

次に液剤を付属のクロスに染み込ませますが、ドバっと液が飛び出ないように以下のようにクロスで蓋をしながらボトルを振ったところ、全くクロスに液が広がりませんでした。

そこで今回は手持ちのスポンジを使用し、スポンジをクロスで覆って液を均一に垂らしてから塗り込む事にしました。

写真を撮り忘れましたが、液剤を塗布して乾いた後にガラスが白っぽくなりますのでクロスの乾いた面で拭き取って仕上げを行います。(めんどくさい)

ピットワーク曇り止めの効果

ピットワーク曇り止めは施工の行程がちょっと面倒でしたが、面倒くさいなりの効果は得られました。(笑)

テープを貼った部分は水拭きすらしていないのですが、SONAXの曇り止めは何もしてない部分と変わらない様子…。

逆にピットワークの曇り止めは明らかに他のエリアよりも曇りが薄くなっています。

…という訳ですので、今のところピットワークの製品が最も効果があるように思えます。

次回はピットワークの曇り止めと以下のカーメイトの製品を比較予定です。(実は3ヶ月前に現物は手配済みだったんですが、忙しくて放置してました)

(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣

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