ブレーキパッドの交換は安全に大きな影響を及ぼす、自働車の「保安上重要な部位」の「分解整備」に当たりますので、なかなか敷居が高いイメージですし、他人の車のブレーキパッドの交換は地方運輸局長の認証を受けた整備工場などでなければやってはならないそうでありますが、自分の車でやる分には特に整備士資格等の条件はありません。
ただし、点検整備記録簿に記載はしておかなければならないようです。
今回はL880Kコペンのブレーキパッドの交換をサクッとやってみましたが、備忘録も兼ねて交換手順をざっと説明します。(パッド自体は半年前に購入してあったのですが、面倒くさくてサボってました)
なお、あくまでも素人のやっつけDIY作業ですので、作業の際は他のサイトを参考にしたり、専門家の意見を聞くなどして自己責任でお願いします。
ブレーキパッドの仕組みと構造
ブレーキパッドの構造は一度分解してみると良く分かると思うのですが、写真よりも図で説明した方が分かり易いかも知れません。
車種によってピストンの数が違ったりしますが、大体以下の2つに分類されるかと思います。
ピストンが片側から出てくる浮動型キャリパータイプ
浮動型キャリパーは文字通りキャリパーが浮いている状態で、ブレーキパッドをローターに押し付けるピストンが片側(内側)にしか付いていません。
ピストンが片側にしかないのに、両側からパッドでローターを挟むという仕組みはなかなかイメージしにくいと思いますので、浮動キャリパーを真上から見た断面図を簡単に書きました。(毎度小学生レベルの作図なんですが…)
こやつの断面図が以下となります。
キャリパーが浮いているというのはおかしな話ではありますが、上の写真のカバーの部分がスライドしますよ、というだけで、カバーを受ける軸になる部分はもちろん固定されています。
ブレーキを踏んていない状態だと、最初の図のようにブレーキパッドとローター間には若干の隙間があります。
この状態からブレーキを踏んでフルードが流れ込むと、以下のようにピストンが上方向に押し出されるとともに、キャリパー部分は下方向に移動します。
直観的にはなかなか理解しにくいところだと思うのですが、上の図のシリンダー内の圧力を壁に対して両腕を突っ張っているミクロマンだと思って下さい。(笑)
キャリバー部分はスライド式になっていますので、ピストンが上、キャリパーは下に移動します。
動かないローターを起点に考えると、以下のような変化になりますね。
以下のサイトに簡単なアニメーションがありますので、分からない方はこちらをどうぞ。
ピストンが両側から出てくる固定型(対向)キャリパータイプ
浮動式が理解できれば、固定式の方は両側にピストンがあるタイプなので、構造はやや複雑にはなりますが、こちらの方が直観的に理解はし易いかと思います。
キャリパーは移動せずに、両側からピストンが押し出されてパッドがローターを挟み込む形です。
なお。不動式も固定式もバネの力でブレーキを離すとピストンやキャリパーは元の位置に戻ろうとします。
コペンの場合には浮動式の1ピストンキャリパー
コペンの場合には最も構造的には簡単な、浮動式の1ピストンタイプのキャリパーです。
作業手順は慣れてしまえば超簡単かと思います。
とりあえず、何はともあれフロント側をジャッキアップしてリッジトラック(馬)を掛けてからタイヤを外します。
ブレーキパッド交換の手順
ジャッキアップした後は、作業がしやすいように交換する側にハンドルを切っておきます。
キャリパーを外す
浮動式のコペンの場合にはキャリパーをスライドピンに固定しているボルトは14mmの2本だけでしたので、まずこのボルトを外します。
固定式の場合には4本かも知れません。
ボルトが外れたらキャリパーを上方向に引っ張って外します。
ブレーキパッドの入れ替え
キャリパーを外したら古いブレーキパッドをシムごと手で引き抜きます。
外側がかなり片減りしてますね…。
シムも滅茶苦茶汚れているので、他の部位と合わせてパーツクリーナーで清掃したいところですが、今回は時間がなかったのと、そろそろキャリパーのオーバーホールをしなければならない感じでしたので、なにもせずに組付けました。(笑)
鳴きが気になる方はシムにグリスを塗ると良いらしいです。
どうやら新しいパッドを組み入れた写真を撮り忘れたようです…スマホだと写真を撮るたびに軍手を付けたり外したりと、この部分にやたら手間が掛かります。(笑)
キャリパーのピストンを押し戻す
キャリパーのピストンは、古く薄くなったパッドの厚みに合わせて手前に突き出ていますので、ピストンはパッドが減った分手前に出っ張っている事になります。
やはりゴムも劣化してガビガビの状態ですし、ピストン部分もかなり汚いですね。近々オーバーホールしたいところです。
この突き出たピストンは手で押してもビクともしませんし、下手に傷つけて凸凹にするとパッドに圧着面が均一に当たらなくなるので、古いパッドを押しあてた上でC型クランプを使ってピストンを押し戻しました。
クランプの奥行きが寸足らずでなんだか微妙な角度になってしまいましたので、大き目のものを使用した方が良いですね。
ゴムの部分を傷つけてしまうと、ピストンの錆びの原因になりますのでこの点は注意しましょう。
また、ピストンが押し戻された分、ブレーキフルードがリザーバータンク側に押し戻されますので、事前にタンクの蓋を開けて確認し、溢れそうなら注射器などで吸い出しておかないと溢れ出してしまいます。
パッドが減っているとかなり液面が上昇します…。
カバーを戻してボルトを締める
ピストンを押し戻したらカバーを被せて外したスライドピン固定ボルトを締め直します。
コペンの場合、締め付けトルクは26.5±4.8N・mでしたので、あまり大きな力はいりません。
締め付けすぎると悲劇が起きるかも知れないので、トルクレンチなどを使用した方が良さそうです。
そして完成図…。
ブレーキパッド交換のまとめ
以上のようにブレーキキャリパー自体はそこまで複雑な構造ではないですし、作業手順も簡単なのですが、誤ってブレーキホースやピストンシールなどのゴム類を傷つけてしまったりすると、エアを噛んでブレーキが効かなくなってしまうというリスクもありますね。
ブレーキフルードがダダ漏れ状態になってしまうと、不動車になるのと同じですので、充分に注意の上で出来れば自分の車の交換手順を把握してから実施した方が良いかと思います。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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