ここ2~3ヶ月で3台の車のバッテリーを交換したのですが、廃バッテリーを使って色々遊んでみようと思ったので、メンテナンスフリータイプ以外のものは玩具として保管してあります。(笑)
今回はその中でも最も状態の悪かったリーフのバッテリーを使用して、充放電のテストやバッテリー液の比重を測定してみました。
バッテリー液の比重とは?
「比重」とは、バッテリー液に関わらず、液体については「水と比較した場合の密度の比」を表す言葉で、簡単に言うと「同じ体積での重さが水の何倍なのか?」を示します。
水の重さは1リットル当たり1kgですが、比重が1.0であれば水と同じ重さ、1.5であれば1リットル当たりの重さは2kgとなります。
比重が低い液体だと、石油類などが思い浮かびますが、身近なところだとLPGが0.5~0.6、ガソリンが0.72~0.76、灯油が0.78~0.80となっています。
普段何気なく使用している20ℓのポリタンクに水を入れると20kgですが、灯油なら16kgくらいになる訳ですね。
逆に同じ液体でも金属である水銀などは比重が13.6ですので、1リットルで13.6kg、20リットルだと272kgにもなります。
バッテリー液は硫酸を水で薄めた希硫酸
バッテリー液は濃硫酸を水で薄めた希硫酸ですが、硫酸の比重は96%の濃硫酸で1.831、25%の希硫酸では1.175となります。
バッテリー液に使われる希硫酸の比重は気温や放電状態にもよりますが、満充電時で1.28、完全放電時で1.12程度と言われており、満充電時の濃度は30~40%、放電時は15~20%程度となるようです。
バッテリー液の放電が進むと軽くなる理由
バッテリーの放電が進み、希硫酸の濃度が下がると比重は下がります。
濃度が下がると水の割合が増える為、比重が下がるのは当たり前ですが、なぜ水の割合が増えるのかというと、それはバッテリーが硫酸を化学反応させて電子を取り出しているからです。
硫酸の化学式は「H2SO4」ですが…
以下のように水素原子と酸素原子が電離して
マイナス電子を回路内で移動させる事で電気が流れます。
※上の図だと思いっ切りショートしてますが、接続部分には電装品が入ります。
要は発電の過程で硫酸が「水」(H2O)と「硫酸鉛」(2PbSO4)になる訳ですが、水はバッテリー液の中に存在し、「硫酸鉛」はマイナス電極にくっついている為、単純にバッテリー液内は硫酸が減った分、水が増える事になります。
なので、放電が進むと比重が下がる訳ですね。
バッテリー液の比重を測定する方法
私のような素人が簡単にバッテリー液の比重を測定するには、以下のようなスポイト上の比重計を使用します。
今回はエーモンの比重計を使用しました。
構造は単純で、スポイトの中に目盛りの入った棒?が収まっているだけです。(笑)
この棒は水よりも比重が低い為、水をスポイトで吸わせると沈みます…ドボンと。
目盛りが上から1.100~1.300と刻まれていますが、比重が高い液体を吸い込むと、棒が浮き上がって液面の境界線がその液体の比重値を示します。
こんな感じで。
バッテリー液の比重を計測する手順は以下の通りです。
硫酸は危険なので素人は完全防備で
ここは自己責任でプロの方はここまでしないと思いますが、扱いに慣れていない素人は酸への耐性のあるゴム手袋などをした方が良い良いでしょう。
軍手などは逆効果で傷口を広げます。(笑)
また、硫酸が目に入ると最悪のケースでは失明する可能性もありますので「作業用ゴーグルを着用しろ」とエーモンの比重計に注意書きがあります。
私は自己責任で普通の眼鏡で代用しました。(笑)
バッテリーの各セルのキャップを外す
道具が揃ったらコインなどを使用してバッテリーの各セルのキャップを一気に全部外します。
500円玉がネジ穴に最もフィットして作業しやすいようですが、今回は10円玉を使用。
普通のネジと同じように反時計周りに回せば簡単に外れます。
外したキャップの液が床に垂れないようにクロスなどの上で保管しておきます。
念の為、使用したクロスは充分に水で洗い流します。
比重計でバッテリー液を吸い上げる
比重計を各セルの液内に入れてバッテリー液を吸い上げます。(普通に1回吸い上げるだけ)
液面が示している目盛りの位置が比重になります。この場合には1.210ですね。
バッテリー液の比重と放電率の目安
満充電で良好な状態のバッテリー液の比重は1.280程度で、希硫酸の濃度は30~40%です。(気温にもよります)
放電率0%で1.280、100%だと1.120程度が目安と言われています。
※参考~ナツメ社 車のメンテナンス
気温が上がると同じ濃度でも比重は下がりますが、今回は12~3℃程度の気温下での測定でした。
なお、バッテリー液の比重は、あくまでも硫酸濃度の測定値によるバッテリー液の状態の判断基準ですので、この数値だけだとバッテリーそのものの良否は判断が難しいかと思います。
バッテリーの液の量が減っている場合(水分だけ飛んでいる状態)には、硫酸濃度が濃くなりますので比重は上がりますし、バッテリー液を補充するとそこから比重は下がります。
全てのセルの液量が標準値の状態で、比重計の目盛りが1.280を指していれば良好という事になりますね。
1.240以下だとバッテリーの劣化が進んでいるか、充電が必要な状態と言われています。
バッテリー液の比重が低すぎる場合
バッテリー液の比重が低すぎる場合には、車を走らせるかバッテリー充電器などを使用して充電した方が良いに決まっていますが、充電しても電圧も比重も上がらない場合には電極へのサルフェーションが進行している可能性が高いです。
こう言った場合にはバッテリーを買い替えてしまうのが最も手っ取り早いですし、特に趣味的に車いじりをする方でなければこの方法が最もおすすめです。
バッテリー添加剤などを使う方法もありますので、DIY系が好きな方は以下の様なバッテリー復活剤を使用するも良いかと思います。
以下の製品については今後廃バッテリーを用いて効果の検証を行う予定です。
「サルフェーションに効く」と書かれているので、電極のサルフェーションの除去を期待してしまいますが、「効く」=「除去」ではなく、サルフェーションは除去せずに単純に硫酸の濃度が上がるだけのものだと微妙ですね。
バッテリー液の比重の測定方法のまとめ
バッテリーの充電状態を知りたいだけなら、エンジンやHVシステムオフ時の電圧を計測するだけである程度の察しはつきます。
以下のREMAXのシガーチャージャーは他の計測器と併用して電圧をチェックしてみた限り、表示電圧がかなり正確でしたし、設置や運用がお手軽です。
エンジンやシステムオフ時の電圧が12.6V程度なら良好ですし、12V台前半になるとやや怪しい状態、12Vを下回るとヤバい状態と言った感じの判断が可能です。
ほとんど乗らない車があったり、もう少し本格的にバッテリーの状態を把握したいのであれば、CTEK「BATTERY SENSE」がおすすめです。
なお、コスパ重視であればバッテリーメンテナンスを定期的に行う方法が良いと思いますし、手間を掛けないという事ならジャンプスターターを車に搭載しておき、バッテリーが上がったらジャンプスターターでリカバリー、頻繁に上がるなら買い替える、という方法がおすすめですので、自分のスタイルに合わせてバッテリーの管理方法を選択する余地はあります。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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