クーラント(冷却水)は、エンジンの温度管理に欠かせない重要な役割を担っています。
しかし、交換時期や種類、手順を知らないまま放置すると、冷却効果の低下やエンジントラブルを招く原因になります。
ここでは、クーラントの種類や補充・交換の手順、必要な準備物まで、分かりやすく解説します。
クーラントの種類と役割
クーラントとは、エンジンを適温に保つための液体で、不凍液とも呼ばれます。
エンジン内部のウォータージャケットを循環し、夏場はオーバーヒートを防ぎ、冬場は冷却水の凍結を防ぎます。
凍結すると体積が増え、エンジン内部を破損してしまうため、不凍液の役割は非常に重要です。
クーラントには主に以下の2種類があります。
- ロングライフクーラント(LLC):緑や赤色をしており、寿命はおおよそ2年程度です。
- スーパーロングライフクーラント(SLLC):青色で、LLCよりも寿命が長いのが特徴です。
最近ではSLLCが多くの車に採用されており、車種によって推奨されるクーラントが異なるため、取扱説明書で確認しましょう。
クーラントの補充方法
クーラントが不足した際の補充方法も、種類によって異なります。
スーパーロングライフクーラントは水道水を混ぜると性能が劣化するため、必ず精製水か、既に希釈されたクーラントを補充してください。
ロングライフクーラントは原液または水道水でも補充可能です。緑と赤を混ぜても問題ありませんが、心配な場合は同色の原液を使用しましょう。
クーラントの交換時期と目安
ロングライフクーラントの交換は2年ごとが目安です。
長期間交換しないと、冷却水路にサビやスケールがたまり、冷却性能が低下することがあります。
スーパーロングライフクーラントはさらに長寿命ですが、車両ごとに取扱説明書に記載された交換時期を守りましょう。
交換時には、必要なクーラント量(通常6L程度)を目安に、少し余分に準備すると安心です。LLCの希釈率は50%程度が目安で、適切な比率を守ることで放熱性能を確保できます。
クーラント交換時の注意点とエア抜き作業
蝶ネジのOリングが劣化している場合、交換後にラジエータのドレンから冷却水が漏れる場合があるので必要に応じてOリングも交換する。
また、ラジエータキャップも古くなっている場合交換しても良い。現在取り付けられているものと同じ開弁圧のものを選ぶこと。0.90kg/cm^2または1.1kg/cm^2等。
1. エンジンが十分に冷えていることを確認する(冷却水の温度が高いとラジエータキャップを外した時に熱湯が噴き出してやけどする恐れがあるため)
2. ラジエータキャップを取り外す
3. ラジエータ下部の蝶ネジを緩めて冷却水を排出する。
※クーラントは有害物質なので垂れ流さずに必ず回収すること。水で数万倍に希釈しないと無害にならないというほど有毒です。川などには流さないで、車屋さんに持ち込むなど適切な処理を講じてください。
4. 冷却水を全て排出し終わったら蝶ネジを締めてクーラントを補充していく。
ロングライフクーラントでクーラントが6L程度入る場合は、最初に3Lロングライフクーラントを入れて3L水道水を入れ、足りなければその分ロングライフクーラントを足すなど。
水は先入れないこと。冷却水が規定量入らなかった場合濃度が足りなくなります。また、ラジエータキャップからあふれるまで注入しないギリギリまで入れてください。
5.次に冷却水のエア抜きを行います。エア抜きが不十分だとエンジンがオーバーヒートする原因となります。
エンジンをかけて冷却水を補充しつつラジエータホースを軽く揉むなどしてなるべくエアを排出する。
エア抜きが終わるまで、室内の温風・冷風の切り替えは必ず温風の最大にして、風量は全開にすること(内気循環の方が外気循環よりも冷却水の温度が上がりやすいため内気循環にする)
6. エンジンの回転数を3000rpm以上に上げていき、冷却水を温めていく。
ワイヤー式のスロットルの場合はアクセルペダルとつながっているスロットルバルブを手で開いてエンジンを回せば良いが、電子制御スロットルの場合はそれが出来ないのでアクセルペダルにつっかえ棒をするなどするか、2人で行ってください。
7. 冷却水が温まるとサーモスタットが開くので一気にラジエータ内の冷却水の水位が下がる。
この際早急にクーラントを補充すること。ラジエータファン付きの車両はラジエータファンが回るのが目安。一向に水位が下がらない場合は更にエンジンを回していく。
8. 冷却水の水位が下がればエア抜きは完了となります。ラジエータキャップを付けてください。
9. エアが若干入っていても何度か走行しているうちに抜けますので問題ありません。
10. サブタンクはFULL以上にクーラントを補充してください。
エンジン内のクーラントが全て抜けているわけではないのでサブタンクのクーラントは交換してもしなくても結構です。
サブタンクのクーラントの量は、何度か点検されることをおすすめします。
クーラント交換に必要な道具と準備
- 新しいクーラント(車両の規定量よりやや多め)
- 精製水(必要な場合)
- Oリング、ラジエータキャップ(必要に応じて)
- ドレンプラグ用工具 – 漏れ防止用のトレイや廃液回収容器
- ゴム手袋・保護メガネなど安全装備
作業に慣れない場合や、リアエンジン車・水平対向エンジン搭載車のようにエア抜きが難しい車種では、専門の整備工場に依頼するのが安心です。
(ライター:自動車整備士 SkyLight)
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