馬力とトルクの関係って簡単なようで難しい?

こんにちは!ドライブレコーダー専門家の鈴木朝臣です。

今回は一部の車好きの方以外は、知っているようで知らない、または知った気になっているが実は知らないかも知れない、馬力とトルクの関係について解説します。

この手の話は従前から色んなところで色んな方が説明されており、もはや説明され尽くしている気もしますが、私が見る限り「これは分かり易い!」という説明に出会った事はありません。

理系の方が書かれた説明は詳しいですが普通の人にはハードルが高く、逆に大手メディアなどで一般のライターさんが書いた記事は内容は分かり易いですが、真相に迫っていません…多分ちゃんと分かってない人が書いてるっぽいです。

…なので、どこまで簡単に出来るか分かりませんが、なるべく具体例を多めに取り混ぜながら誰にでも分かるような説明を心掛けます。

馬力(PS)とは?

日本の車のエンジンスペックの出力に関わる部分は、馬力(PS)で表現されており、20年くらい前からは国際単位である(kW)も併記されていますが、まだまだ我々のなじみが深いのは(PS)の方かと思います。

車にちょっと詳しい方に馬力とトルクの違いを聞いてみると、馬力は最高速度に関わるスペック、トルクは加速度に関わるスペック、と言った説明を受ける事でしょう。

一言で説明するとこれで完結してしまいますし、大体の方はこれで納得してしまうのではないでしょうか。

ただ、もう少し詳しく知りたい方向けに、そもそも馬力(PS)とは何を表す数値なのか?をご説明しますと…

ズバリ1PSは75kgのものを1秒間1m持ち上げる仕事率を指す数値です。

重さのあるものを、決まった時間にどれくらい動かす事が出来るか?これが馬力=仕事率になります。

 

出来るだけ仕事率という言葉は使いたくないのですが、率という言葉が付いている事からも分かるように、仕事とは異なり、モノを動かすという仕事をどれだけ効率的に(つまり早く)終わらせる事が出来るか?と考えて貰うと分かり易いかと思います。

75kgのものを1秒間に10m持ち上げる事が出来るなら10PS、150kgの物を秒間に10m持ち上げる事が出来るなら20PSですので、速度と重さに比例して馬力も上昇して行きます。

車の重さが2tであった場合、1秒間に10m(時速36km)持ち上げる事が出来れば267PS)になりますね。

1秒間に5mしか持ち上がらないなら半分の133PSです。

従って馬力があれば重い車でも高速度まで加速させる事が出来る事になります。

冒頭で馬力は最高速、トルクは加速度に影響すると述べていますが、馬力の計算のもとになる数値はトルクですので、実は馬力は加速にも関わる数値であると言えるでしょう。

トルク(kgf・m)とは?

トルクは軸を回転させようとするを示す言葉です。

トルクに関しても馬力と同様に日本では従来(kgf・m)が使われていましたが、20年くらい前から(N・m)も併記されるようになっています。

※1kgf・m=9.8N・m

しかしながら、日本の自動車業界では(kgf・m)の方を長年使ってきたため、体感的に分かり易いのでこちらの単位で説明します。

1kgf・mとは、軸に対して1m離れた位置から1kgの力を掛けた時に掛かる力の大きさを表す単位です。

車のエンジンはピストンの上下運動でクランクシャフトを回転させて駆動力を発生させる仕組みですが

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例えばトルクが10kgf・mである場合には、クランクシャフトを1mのレンチを使って10kgの力で回転させようとした力が掛かっている事になります。

トルクは加速力に影響すると述べましたが、トルク自体は力の大きさを示すものなので、加速力の指標にはなるものの、最終的にはエンジン・クランクシャフトの回転数の上がり方=加速力ということになりますね。(ギア比などを考えなければ)

まあ、トルクが細ければクランクシャフトを回す力も弱くなりますので、トルクが大きければ大きいほど加速力は得やすくなる傾向にありますが、トルクがでかくてもトラックなどの低回転型のエンジン(回転数の上がりものろい)は加速は良くありません。

馬力はトルク×エンジンの回転数に比例

馬力は「ある重さ」の車を「ある速度」で動かした際の仕事率の指標と述べていますが、人間が物を運んだ時の仕事の効率と捉えて貰って差し支えありません。

例えば10キロの米袋を10個、10m離れた場所に運ぶ仕事が有った場合、パワーに優れた力士とスピードに優れた軽量級のボクサーはどちらが早く仕事を終える事が出来ると思いますか?

答えは分かりませんが、早く終わらせる事が出来た方が仕事=馬力が高いと言えます

①馬力を仕事率、②トルクをパワー、③回転数をスピードと捉えると馬力とトルクの関係が分かり易くなるでしょう。

 

仕事の効率はパワー×スピードで決まり、仕事率(馬力)を上げる為には、強いトルクで軸を回すか、回転数を上げて軸を素早く回すかの二つの方法しかない事になります。

従って馬力が高い車ほど、重い車を速いスピードで動かす事が出来ると言えますが、馬力が高い車とトルクが太い車の加速はどちらが良いかとは一概には言えません。

例えば同じ280PSの2台の車を比較した際に、3500回転で馬力のピークが来る車はその時のトルクが57.0kgfになります。

一方で7000回転で馬力のピークが来る車は、その時のトルクが半分の28.5kgfになります。

どっちが加速が良いのか~?と言われると難しいですね(笑)

ギア比の問題もありますが、どの回転数でも280PSに近い出力が出ている方が加速は良いでしょう。同じギア比であれば回転数が上がるスピードが速い方が加速が良いです。

一般的には低回転に馬力とトルクのピークが来る車の方が、ストップ&ゴーの多い街乗りには適していると言われていますが、同じ最高出力280PSであれば、低回転から高回転まで常に280PSが最強です。(笑)

トルクから馬力を求める計算式

馬力(出力)は以下の式で求める事が出来ます。

仕事=トルク×力点の移動距離

馬力(仕事率)=トルク×力点の移動距離÷時間

トルクを掛けた際に力点(手で回したら手です)は円運動を行いますので、仮に上の図で1秒間で手が1周した場合は、円周すなわち2πr(半径×2×3.14)=6.28m動く事になります。

 

この場合には

馬力(W)=力の大きさ(1kgf=9.8N)×移動距離(6.28m)÷時間(1秒)=61.5W

1W=0.00136PSですので…

単位をWからPSに直すと

0.083PSとなります。

 

一秒に1回転だと車としては全然リアリティがないので、例えばうちの1型ランエボ10号の最大トルクの部分を見てみましょう。

【Goo.netより】

最大トルクは回転数が3500の時に43kgf・mとなっていますね。

 

最大トルクが出ている時の出力が最高出力とは限りませんが、この場合には以下の式となります。

馬力(W)=力の大きさ(43kgf=421.4N)×移動距離(6.28m)×3500回転数(分)÷60(秒)=154,369W

154,369W×0.00136=210PSです。

うちのランエボ号はマフラー以外ノーマルですが、1~2速であればアクセル全開の状態で3000~6000回転くらいまでの加速感の差はそれほどないです。(5速とかになると別だと思いますけど、5速の高回転は試せないので)

 

PSをトルクと回転数からダイレクトに計算しようとすると…

馬力(PS)=トルク(kgf)×回転数(rpm)÷717

で求められます。(おおよそですが)

※中学生レベルの物理だ(笑)というツッコミはなしでお願いします!

(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣

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