アイドリングストップ車のバッテリーは普通の車のバッテリーとは異なり、バッテリーに優しくない環境下で常に酷使される前提で開発されています。
以上の理由から、アイドリングストップ車のバッテリーは非アイスト車やハイブリッド車とは異なる専用バッテリーが使用されており、普通のバッテリーをアイドリングストップ車に使用するとバッテリーの寿命が極端に縮むか、早い段階でアイドリングストップ機構が作動しなくなる恐れがあります。
従って、何か特別な事情がないのであれば、アイドリングストップ車には専用のバッテリーを使用した方が良いでしょう。
アイドリングストップの仕組み
アイドリングストップは、ブレーキ操作時などに積極的にエンジンを停止してガソリンの消費を抑えることで燃費を向上させようとするシステムです。
最近はエコカー全盛の時代ですので、HVやEV以外のほとんどの車に標準装備、またはオプションの設定があります。
アイドリングストップの作動条件
アイドリングストップ車は、ブレーキ操作を行い、発進や加速が必要ないと判断される状況の時に、エンジンが再始動しやすい状態で停止し、その後はブレーキペダルを戻した際にエンジンが自動的に再始動します。
ただし、アイドリングストップ車であっても、以下の条件を満たしていない場合にはアイドリングストップのシステムは機能しません。
①バッテリーがアイドリングストップに対応したものであること
②バッテリーの充電容量が十分であること
③冷却水の水温が十分に上がっていること
④パーキングブレーキをかけていないこと
という訳で、アイドリングストップ機構の作動にはバッテリーの蓄電量が大きく影響しますので、シビアコンディションでの使用を前提に開発された、アイドリングストップ車専用バッテリーを使用しないと、アイスト機能が使えないだけでなく、バッテリーの寿命を大きく縮める危険性があります。
アイドリングストップ車はバッテリーへの負荷が大きい
アイドリングストップ車や最近のエコカーには、バッテリーが最も効率良く電気を貯められる時だけ、発電機で充電を行うように制御するシステムが搭載されているものが多くなっています。
バッテリーは充電量が少ない状態が続くと寿命が短くなりますが、この充電制御システムが搭載されていない車の場合、エンジンがかかっている間は常にバッテリーに充電を行いますので、バッテリーには比較的優しい制御をしていると言えるでしょう。
一方で、充電制御システム車の場合は、燃費を向上させる為に一定値以上の放電を行わない限り充電を開始しないような制御がなされていますので、同じバッテリーを使用する前提であれば、制御なしのの車に比べてバッテリーの寿命が短くなる傾向があります。
これに加えてアイドリングストップ車の場合には、アイドリングストップからの再始動時に、セルを回すというバッテリーにとって最も負荷が掛かる仕事が繰り返し課せられます。
アイドリングストップ車のバッテリーは、バッテリーの劣化を早める「過放電」に晒られる危険性が大きい上に、「大出力」の負荷を掛けられますので、普通のバッテリーよりも充電効率や耐久性の面で改良が加えられている事が多いようです。
なお、「アイドリングストップ車のバッテリーの寿命が、具体的にどれ位になるか?」という問題ですが、バッテリーの性能や使用状況によって大きく異なりますので、一概には判断出来ません。
あまり車を使わなかったり短距離走行を繰り返したりしている場合は、寿命が短くなる傾向がありますね。(これは普通の車も同様)
アイドリングストップ車のバッテリーの寿命を判断する目安
アイドリングストップ車は、バッテリーの状態が良好で確実にエンジンを再始動できるだけの性能があると判断できない場合はアイドリングストップを行わないように制御されています。
従って通常はエンジンが再始動できなくなる可能性はありません。
バッテリーの経年劣化による性能低下により、アイドリングストップが作動しなくなる場合がよくありますが、アイドリングストップ自体が停車中に再始動が出来なくならないように現在のバッテリーの能力に対して十分な余裕を持ってアイドリングを停止しています。
従って、アイドリングストップが機能しない状態でも、通常のプッシュボタンの始動などでは問題なくエンジンが始動できてしまう場合も多いそうです。
つまり、通常の始動は問題なくても、アイドリングストップが行われなくなったらバッテリーの交換時期が迫ってきているという目安になりますので、バッテリー交換を検討した方が良いでしょう。
アイドリングストップ車のバッテリーはどれを買えば良い?
アイドリングストップ車は専用のバッテリーが指定されています。
分からないようであれば、現在取り付けてあるバッテリーの上面に表記されているのと同じ表示のものを買うのが無難ですが、最近はメーカーや販売店などで車種ごとの適合情報を確認する事が出来ます。
因みに車両の取扱説明書のサービスデータにもバッテリーの指定サイズが記載されている事が多いかと思います。
例えば、「M-42」「M-42R」「Q-55」「Q-55R」などが一例ですが、アルファベットの「Q」はバッテリーのサイズと端子の太さ、「55」は蓄電量や始動性能のランクを表現しています。
最後のRが付いているものと付いていないものは、バッテリー端子のプラス・マイナスの位置を示しています。
サイズについては小さい順にJ~Tとなり、性能ランクも概ねサイズの大きさに比例します。
記号 | 端子サイズ | 記号 | 端子サイズ |
---|---|---|---|
J~製品見つからず | 細端子 | P~製品見つからず | 太端子 |
K-42 | Q-85 | ||
K-42R | Q-85R | ||
M-42 | S-95 | ||
M-42R | S-95R | ||
N-65 | T-115 | ||
N-65R | T-115R |
自分の車に適合する記号のものを選ばないと、端子サイズや端子の位置の違いで取り付けが出来ない可能性大です。
また、大きさが合っていればアイドリングストップ車非対応のバッテリーも取り付け可能ですが、始動は可能でもそのうちアイドリングストップが行われなくなります。
逆にアイドリングストップ非搭載車にアイドリングストップ車専用バッテリーを用いると過充電によりバッテリーの寿命が短くなりますので注意してください。
※アイドリングストップ車とアイドリングストップ非搭載車のどちらでも使用できるバッテリーも存在します。
国内メーカー2社のアイドリングストップ車用バッテリー
パナソニックのカオスは現在GSユアサがOEM生産していますが、かつてカオスの生産を行っていた「パナソニック ストレージバッテリー株式会社」がGSユアサの傘下に収まったという経緯がありますので、カオスブランドとその他のGSユアサのバッテリーは同じ物ではない筈です。
パナソニックとGSユアサのアイドリングストップ車用のバッテリーは以下の通りとなります。
パナソニック circla kei(サークラkei) アイドリングストップ車用
こちらはパナソニックカオスの下位ブランドになる、軽自動車用のバッテリーです。
展開サイズは「M-42」「M-42R」のみとなります。
軽自動車用で1万超えです!アイスト用は高い…ですね。
因みに5時間率容量は32Ah、その他詳細は以下の表の通りとなります。
パナソニック CAOS アイドリングストップ車用
CAOSのアイドリングストップ車用は、M-65/R、N-80/R、Q-100/R、S-115、T-115の5サイズとなります。
Mにいてはサークラにもありますが、カオスの方は容量大き目です。
なお、カオスのアイドリングストップ車用バッテリーは、2016年モデルのA2と、2018年モデルのA3が並行して販売されいますが、2018年のモデルチェンジでは性能面で大きく変わっているので、2018年モデルが良さそうですね…お財布と相談して下さい。(笑)
GSユアサ eco.R アイドリングストップ、標準車共用
こちらはGSユアサのアイドリングストップ車・標準車の共用バッテリーとなります。
サイズについては、K-42/R、M-42/R、N-65/R、Q-85/R、S-95/R、T-115/Rの6種類の展開となっています。
アイドリングストップ車専用のバッテリー交換
なお、バッテリー交換についてはディーラーなどで実施するとバッテリー本体の費用と工賃で思ったよりも高くなる場合があります。
通販サイトでバッテリーを購入し、自分で取り付ける事で費用を浮かせる事が出来ますし、最近ではバッテリー通販サイトでも不要になったバッテリーの無料回収を行っていますので、廃バッテリーの処分に困る事もないでしょう。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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