※2019年1月25日更新~「スーパーK」投入後4週間後の比重と電力量を計測し、結果をまとめました。
「スーパーK」はトラックなどの業務用車両でのバッテリー延命効果の実績が凄い!と謳われているバッテリー添加剤です。
どうやら開発元は「ITE電池研究所」という非営利組織となっているようで、研究チームは10名程度の大学教授で構成されています。
どちらかというと、元々は営利目的というよりも学者の研究の一環として生まれ出た製品のような感じでしょうか。
バッテリーを延命させ、廃バッテリーを減らす事でCO2の削減し、環境の保全に貢献するというのが「スーパーK」開発の大義名分のようですね。
なお、この製品は日本とアメリカの学会で技術賞を受賞していると書かれていますので、一定の効果は期待出来そうです。
「スーパーK」の添加でトラックのバッテリーが7~8年交換不要になった
「スーパーK」については意外と古く、2000年頃には製品化されていたようですが、200台のトラックに年1回の投入を継続したところ、それまでの実績では4年に1回程度の交換が必要だったものが、以降は交換がゼロになったとの報告があります。
200台と言えば実験としての母数は充分かと思いますし、2004年以降は交換台数がゼロになっているのは凄いですね。
「スーパーK」の仕組みはサルフェーションの除去
バッテリーの性能低下の原因の70%は、マイナスの電極に本来であれば硫酸に戻る筈の硫酸鉛が結晶化し、抵抗となって通電を妨げる「サルフェーション」であると言われています。

「スーパーK」には有機ポリマー分子が含まれ、この分子がマイナスの電極に吸着し、サルフェーションを剥がし、再結晶化を防ぐとあります。
ただ、気になる点としては仮にサルフェーションを電極から剥離させたとしても、結晶化した硫酸鉛が硫酸に戻らずに沈殿するような状態であれば、電解液の硫酸濃度は低下したままであろうと予測出来る点が挙げられます。
死亡直前のバッテリーに使用した場合には、体感可能なほどの性能回復は見込めない可能性がありますね。
現在並行してテスト中の「電撃丸」では性能は全く回復しませんでした。

従って「スーパーK」についても結晶化した硫酸鉛を硫酸に戻す効果はなさそうですが、製品に付属する説明書には「溶解作用」という表現が見られます。
この溶解作用がた硫酸鉛を硫酸に戻す事を指しているのかどうかは不明ですが、ちょっと期待しちゃってます。
「スーパーK」の特許について
現時点ではバッテリー液の比重が上昇する効果については、私も期待はしていますが懐疑的な見方をしています。
ただ、アメリカで取得されている「スーパーK」の特許関連の文書を見ると以下のような記述が見られます。
観察された有益な効果は、負極からの、または正極からのいくらかの比重の増加または硫酸化(結晶性PbSO堆積物の除去)である。電解液の比重が大きくなることから有益な効果が確認された。
これを見る限り、サルフェーションを除去するとともに比重を上昇させる効果もあるように受け取れますね。
「スーパーK」のセット内容
「スーパーK」にはバッテリーの容量に合わせて2種類のセットが販売されています。
容量の違いで、1パックに入っている錠剤の数が変わりますが、40~80Ahの場合には以下のように6つの袋に各2個の錠剤が入っていました。
バッテリーの各セルに使用する錠剤の数は、容量によって異なります。
各セルに投入する量は、10Ahに対して0.1gが目安となっている用ですが、錠剤1つ当たりの重さは0.35gです。
35Ahのバッテリーであれば概ね1個、70Ahだと2個が適正量のようです。
「スーパーK」の使い方
「スーパーK」の使い方は、各バッテリーのセルに適量の錠剤を入れて、充電・放電を繰り返すだけです。
※入れただけで走らないと効果はないと書かれていますので、充電・放電の工程が必要になるものと思われます。
今回は「電撃丸」で効果が体感出来なかったリーフの廃バッテリー、36Ahの各セルに1錠ずつ投入してみました。
投入前の比重は以下の通りです。
①セル1~1.20
②セル2~1.23
③セル3~1.23
④セル4~1.23
⑤セル5~1.22
⑥セル6~1.22
平均~1.22
使用可能な電力量は135Whでした。
内部は「電撃丸」を投入した事で金属部分の汚れが剥離していますが、なにやらカスが浮遊しています。
以降は1週間ごとに比重と取り出せる電力量の計測を行います。
「スーパーK」投入後1週間後の計測結果
「スーパーK」を投入してから1週間が経過しましたので、比重と電力量を計測しました。
各セルの電解液は、若干気泡が浮いているものの以前に比べてやや澄んでいるように思います。
比重を計測した結果…、なんと前回の平均1.22から、まさかの1.16へと大幅ダウン!!
ブルータス、お前もか!!
ただ、比重が下がった原因は電解液の硫酸濃度の低下によるものではないと思われ、取り出せた電力量は135Whでした。
どうも、この手の添加剤の類は即効性はないとは思われるのですが、新品バッテリーの延命効果はあるものの、性能が回復するような事はないのではないか?との疑念が深まります…。
多分…、なんですけど、バッテリーの調子が悪いと感じた段階で素人がDIYでどうにか回復させられる可能性があるのは、バッテリーの液量不足が要因になっているケースだけのような気がしてきました。
バッテリーの添加剤の類はほとんどが効果が体感出来ない「まじない」のようなものか、または添加剤を入れたから効果があったように感じる「プラシーボ効果」であるケースがほとんとでしょう。
新品時に添加して、年に一度添加を続ければ寿命が何倍にも伸びるのかも知れませんが、普通に安いバッテリーを3年ごとに買い続けてもコスト的に変わらないような気がしますね。効果が体感出来ないリスクもある訳ですから。
テストに関しては4週目までは継続する予定です。
「スーパーK」投入後2週間後の計測結果
「スーパーK」投入後2週間後の計測結果ですが、比重に関しては前週からやや上がり1.19となっていますが、投入前の水準までは回復していません。
電力量については前週同様で135Whでした。今のところ何の効果も認められません。
「スーパーK」投入後3週間後の計測結果
3週目についても比重、電力ともに変化なく、現状維持が続いています。
「スーパーK」投入後4週間後の計測結果
最終の4週目の計測結果ですが、さらに比重が若干低下し、平均で1.18となってしまいました。
電力量については投入前と変わらない135Whです。
「スーパーK」の効果についてのまとめ
最終的に「スーパーK」を投入して体感できる効果は全く得られず、確認出来た変化は比重が1.22から1.18まで下がったという事のみです。
本来、バッテリーに求められる能力は①エンジンを始動させる瞬間的なパワー、②車の暗電流の消費に耐え得る持続力、の2点かと思います。
要は瞬発力と持久力ですね。
まぁ、通常の仕様範囲においては容量が減っていたとしてもエンジンが掛かる瞬間的なパワーさえ発揮出来れば問題はないかと思います。
ただし、充電効率が悪化する為、充電制御車などの場合には燃費は多少落ちるでしょう。
今回は①の瞬間的な放電能力の限界については検証していませんが、「スーパーK」のようなサルフェーションを融解ではなく剥離させるような製品は、②のバッテリーの持久力にはほとんど影響を及ぼさないという事が分かりました。
おそらく…なのですが、くだんのトラックでのテストは車両の運用の特性上走らせてナンボの世界ですので、持久力はほとんど問題にはならないのでしょう。
トラックは充電制御などは行っていないでしょうし、電極が綺麗になって瞬発力さえ維持出来ていればエンジンは掛かります。
なので、トラックでの実験結果は嘘ではないと思います。
個人使用のケースであっても、瞬発力が回復すればエンジンは掛かりますので、毎日通勤などでそれなりの距離を走る車には有効である可能性はあります。
「スーパーK」による恩恵は、新品のバッテリーに入れ続けるのか、弱ったバッテリーに入れるのかで変わって来そうです。
電極に固着したサルフェーションを剥離させ、それ以上は固着させない効果があるのでしょうから、新品のバッテリーに入れれば長い期間性能を維持する事が可能です。
ただし、既にサルフェーションが固着しているようなバッテリーの場合には、サルフェーションの元は硫酸ですので、それが硫酸に戻らない限り容量は回復しないままです。
おそらく「スーパーK」を投入した後は剥離したサルフェーションが底に沈殿しているのではないかと考えられますので、少ない容量のまま電極だけが綺麗になった状態かと思います。(若干は充放電効率は上がっているのかも知れませんが、計測不可なほど影響は小さいものかと)
従って使用頻度の多い車や、使用頻度が少なくても新品の状態から入れ続ける場合にはそれなりの効果は期待出来そうです。
新品のバッテリーに入れ続けた時のコスト
仮に「スーパーK」を~39Ahの新品のバッテリーに入れ続けた場合、1年間のコストは740円となります。
9年間そのバッテリーに入れ続ける事を考えれば6,600円になります。
最初のバッテリー購入費用を3,000円と考えれば9年間で合計9,600円掛かる事になります。
通常のバッテリーの寿命は3年と言われており、3,000円程度の安いものを交換し続ければ9年間で9,000円のコストで済みます。
バッテリー価格が3,300円であれば「スーパーK」を入れ続けた場合と同様に9,900円になりますので、~39Ahで3,400円以上のバッテリーにはコスパ的に入れる価値があると言えそうです。
一方で40Ah以上のバッテリーの場合には、スーパーKのコストは1年当たり2倍の1,480円となり、仮にバッテリー価格が6,000円であるなら、9年間のトータルコストは6,000円+13,320円=19,320円です。
6,000円のバッテリーを3年に一度交換する前提なら、9年で18,000円で済みます。
バッテリーが6,700円であるなら、スーパーKの場合には20,020円、交換だと20,100円ですので、40Ah以上のバッテリーの場合にはコスパ的に入れる価値があると言えますね。
以上をまとめると、「スーパーK」はメンテナンス式のバッテリーであれば
①39Ahまでの容量なら3,400円以上のバッテリー
②40Ah以上の容量であれば6,700円以上のバッテリー
に入れる事で、コストを削減できる可能性があります。
ただし、私は始動性に関してのテストはしていませんし、運用が特殊なトラックの実績が週末しか乗らないような車に通用しない可能性もあるので、効果が出ないリスクもあります。
従って是非おすすめ!という感じではありませんが、興味本位で試してみる価値はあるのかな?と言った感じです。(こういうのが好きな人は)
少なくともコスパ的に半年に一度入れなければならない電撃丸よりは優れていると思います。
因みに粉末の製品も販売されていますので、気になる方はどうぞ。
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(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)

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