※2019年1月17日更新~2つ目のバッテリーでの再テスト「電撃丸」投入後4週間後の計測を行いました。
最近、3台の車のバッテリーを交換し、そのうち2つのメンテナンスフリーではない廃バッテリーを使って何か面白い実験が出来ないかと考え、その第一弾としてプロスタッフのバッテリー強化液、「電撃丸」のバッテリー性能回復効果について検証してみる事にしました。
amazonのレビューを見ると①効果が体感出来た、②分からない、③全く効果が体感出来なかった、など、その評価は様々です。
果たして「電撃丸」のバッテリー性能回復効果はあるのでしょうか?
「電撃丸」とは?
「電撃丸」はプロスタッフから販売されているバッテリー強化剤で、パッケージには以下のような効果があると解釈出来るような記述があります。
①硫酸化合物が配合されている
②サルフェーションに効く
③極板を清浄化させ、バッテリーの寿命アップ
個人的には硫酸化合物がサルフェーションを溶かすとは考えにくく、水に溶かすと硫酸になるような物が存在するのかどうかも、私には分かりません。
プロスタッフの公式ページには以下のような記載があるだけで、素材に何が使われているなどの説明もありませんね。
錠剤タイプのバッテリー強化剤です。
特殊硫酸化合物がバッテリー液に作用し、充放電能力を低下させるサルフェーションを分解&除去。バッテリーの通電能力を活性化します。随分乱暴な売り方のように感じます。(笑)
…という訳で、その効果については半信半疑、下手すりゃまじない程度のものなのでは?とも感じています。
「電撃丸」の効果測定の方法
今回は手持ちの廃バッテリーの中で最も状態が悪いと思われるリーフに積まれていた4年物のバッテリーを使用しました。
このバッテリーのスペックは46B24L、5時間率は36Ahですので、12V×36Ah=432Whの容量となります。
「電撃丸」投入前にこのバッテリーをCTEKの「XS7.0」で一旦満充電にし、その状態での①電圧、②バッテリーの比重、③電圧が6V台に落ちるまでの使用電力量を計測し、1週間ごとにこれを繰り返します。
なお、消費電力量に関しては以下のガジェットを使用し、計測を行いました。
こんな感じで接続し、家庭用扇風機と車載冷蔵庫を動かします。
バッテリーの電圧が12Vを下回ると、インバーターのカットオフ機能が働きますので、徐々に電装品の出力と落としながら、最後は扇風機の微風のみに切り替え、微風運転すら出来なくなったら、5V/USBチャージャーでドラレコ等のガジェットでシャットダウンするまで放電させています。
「電撃丸」投入前の数値
電撃丸投入前の満充電・放電後の状態で各種数値については以下の通りでした。
投入前 | 満充電 | 放電後 |
---|---|---|
電圧 | 12.8V | 6.8V |
比重 | ||
セル① | 1.220 | 1.160 |
セル② | 1.220 | 1.220 |
セル③ | 1.210 | 1.200 |
セル④ | 1.210 | 1.210 |
セル⑤ | 1.210 | 1.210 |
セル⑥ | 1.180 | 1.180 |
消費電力量 | 155Wh |
新品バッテリーだと満充電時の比重は1.280程度と言われていますので、かなり劣化が進んでいるようです。
因みに、CTEK 「BATTERY SENSE」で9月下旬からリーフのバッテリーの充電管理を行っているのですが、満充電から数日で20%以下まで充電率が落ちてしまうような状況でした。
リーフはあまりにも補器バッテリーの電圧が下がると、駐車中に自動で駆動用バッテリーからの充電を行う為、60%程度台の山が多いですが、充電されてもあっという間に20%に落ちてしまい、かなり頻繁に充電が行われているようでした。
新品の状態だと比重が1.280、使用可能な電力量は432Wh程度と予測されますが、電撃丸投入前の比重の平均は1.210、満充電から電圧が6V台に落ちるまでの使用電力量は155Wh程度でしたので、概ね1/3程度に性能が落ちていたようです。
なお、放電後の比重はセル①の除いてはほとんど変化なしで、平均値が1.200と満充電状態から0.010しか減っていないのも腑に落ちない部分がありますが、これがリアルな計測結果という事で…。
「電撃丸」投入方法
「電撃丸」の投入方法は簡単で、各セルの蓋を開けて錠剤を1つずつ落とすだけです。今回は投入前に満充電状態にしています。
蓋の開け方と注意点についてはこちらを参照して下さい。
錠剤を落とす際に多少バッテリー液が開口部の外側に飛び散りますので、特に目に入らないように注意が必要です。
見るからに金属部分がヤバそうな雰囲気です…。
「電撃丸」投入翌日の計測結果
この錠剤が溶けるまで結構時間が掛かるようで、翌日のぞいてみたところ以下のようにダマになって水面に浮いたり、液中を浮遊している状態でした。
比重を計測してみると平均値が1.180と1.210から0.030下がっています。
おそらくはバッテリー液よりも軽いダマの部分まで比重計で吸い上げてしまった事で、比重が下がってしまったものと思われます。
ほとんど液中に溶け込んでいない状態なのですが、電圧は12.8Vと投入前と変わらず、電圧が6V台に落ちるまでの使用電力量も155Wh程度変わらず、と言った結果です。
まぁ、溶けてないので当たり前ですね。
このまま溶けなかったらどうしよう…、と不安に感じるところもありますが、今後1週間ごとに放電・充電を繰り返し、2ヶ月程度は変化を記録して行こうと考えています。
正直、全然変化がない…というのだけは勘弁して欲しいです。
「電撃丸」投入1週間後の計測結果
「電撃丸」を投入してから1週間が経過しました。
バッテリーに関しては放電後にすぐに満充電を行った状態で維持しています。
前回は錠剤が溶け切っていない状態のようでしたが、今回はバッテリー液の見た目の変化が確認出来ました。
【前回】
【今回】
【投入直後】
前回浮いていたダマのようなものがなくなった上に、金属部分に付着していたサルフェーションっぽいものが剥離している最中ですね。(融解はしていないと思うので、底に沈殿してそうです)
なお、セルによってはまだ濁っているところもあり、状態は一定ではありません。
ひょっとするとこの濁りは錠剤がダマになっている訳では無く、剥離したサルフェーションが浮遊しているのかも知れません。
何れにしてもガビガビだった金属部分がすこしずつ綺麗になってきているのは間違いないような?
ただし、サルフェーション(結晶化した硫酸鉛)がバッテリー液中に融解した訳でなさそうで、比重は電撃丸投入前の水準に戻った程度です。
①投入前~平均1.210
②翌日~平均1.180
③1週間後~平均1.210
電力を計測したところ、こちらも投入前と変わらない155Whで力尽きています。
多分…ですが、サルフェーションは再び液中に融解させるにはウン十万~100万円超の専門的なパルス充電器が必要になり、通常の添加剤や充電器などのパルス充電ではサルフェーションを剥離させる程度の効果しかないのではないかと思います。
硫酸鉛が底に個体の状態で沈殿していると思いますので、硫酸濃度は下がったままです。
これはバッテリー液の交換か、半分くらい抜いて硫酸入りの強化補充液を投入しないと性能は復活しないのではないかと思われます。
「電撃丸」には硫酸化合物ではなく、サルフェーションを剥離させる成分が入っているのでしょうか。
何れにしても4週目まで同様の手順で計測を行い、その後どうするかはその時考えます。
「電撃丸」投入2週間後の計測結果
軽く消化試合になってきた感があり、あまりモチベーションの上がらないテストになりつつありますが、2週間後の計測を行いました。
各ポート内の様子ですが、金属部分はかなり綺麗になりました。
【投入直後】
これだけ見ると劇的に綺麗になっているのですが、比重は「電撃丸」投入前とほとんど変わらず、平均1.21→1.22という状況です。(計測誤差の範囲ですね)
使用電力量も変わらず、155Whという結果です。
やはり結晶化した硫酸鉛を溶かすのはそんなに簡単ではなさそうです。
「電撃丸」投入3週間後の計測結果
モチベーションがダダ下がりの中での計測結果ですが、予測通り前回から比重も電力も変化なく、1.22/155Whでした。
4週間後もおそらくこの数値のままでしょう。
「電撃丸」投入4週間後の計測結果
4週目は比重の変化はありませんでしたが、気温が下がったからなのか、電力量が低下し、1.22/135Whという結果でした。
ここまでのまとめ
おそらく…、「電撃丸」は結晶化したサルフェーションを溶かす効果はなく、電極周りを綺麗にして抵抗を落とすだけのものではないかと考えられます。
バッテリー液を入れ替える前提であれば、「電撃丸」を使用して電極周りのサルフェーションを剥離させた方が良いと思いますが、趣味以外でそこまで面倒なことをする人はいないでしょうし、希硫酸は一般の人では調達が難しいので現実的ではありませんね。
因みに以下のようなバッテリー強化液はゲルマニウムなどが配合された補充液ですが、これは硫酸濃度を上げるようなものではなく、電解液や電極などの伝導性を高める事で性能を一時的に性能を回復させるもののようです。
…、という訳なので死に掛けのバッテリーに添加してもそれほどの効果は得られないでしょう。
てか…、ほとんど効果が得られないケースが多いのに、どこのメーカーも良い事ばかり書いており、悪徳商法に近い印象は拭えません。
まぁ、広告業界は情報弱者を騙してナンボの世界ですから、これが世の常ですかね。
ただし、効果がほとんどなかったとしても、効果があった気にさせられたユーザーが満足すれば、それはそれで良いのかな?という気はしなくもありません。
コスパで考えれば安いバッテリーだと3~4千円で買えてしまうので、死に掛けたバッテリーの場合には効果の怪しい「電撃丸」で延命措置を行うよりも、買い換えてしまった方が良いでしょう。
高価なバッテリーの場合には「電撃丸」を使った方がトータルコストが安くなる可能性はありますが、そもそも高価なHV用やアイスト用のバッテリーは密閉型のメンテナンスフリータイプが多く、電撃丸を投入出来ません。
別のバッテリーにも「電撃丸」を投入してみた
「電撃丸」やその他のバッテリー強化剤の類の効果が発揮され易いのは、比較的痛みの少ない状態のバッテリーであるかと思います。
そこでリベンジマッチとして、11月までコペンで使用していた3年物のバッテリーにも「電撃丸」を投入してみました。
このバッテリーは今年の2月に一度バッテリー上がりを経験していますが、CTEK「BATTERY SENSE」でリカバリーさせ、月に1度くらいは充電をしていたものです。
11月にワンランク上のバッテリーに交換していますが、定期的に頻繁に充電していたせいか交換後も充電受付能力は上がった気がしますが、減り具合については劇的な変化は認められません。
という訳で、3年経過と一度バッテリー上がりを起こしていますので平均的な交換時期にはなっているものの、そこまでは劣化していないものです。
ポート内もリーフの時ほどガビガビではないですし、何より比重も全てのポートで1.24~1.25と平均的でした。(リーフの場合は1.18~1.22と機能してないっぽいポートがあった)
使用可能な電力については、このバッテリーは40B19Lの5時間率が28Ahですので、元は336Whのはずですが、145Whを使用したところで6V台に電圧が下がり、ドラレコの駆動が不可になりました。
このバッテリーでも効果が認められない場合には、「電撃丸」の効果はほとんどないケースが多いと言えそうですね。
「電撃丸」投入1週間後の計測結果
「電撃丸」を投入してから1週間が経過しました。
前回は投入直後に一旦比重が下がり、1週間後には元に戻っていたのですが、今回は翌日のチェックはしていません。
各セルの様子は前回同様にやや濁りが見られます。
そして比重はまさかの…大幅ダウン(笑)
【前回】
【今回】
平均値が1.25だったのが1.20まで下がっています。
ただし、これは硫酸の濃度が変わった事による比重の変化ではないようで、取り出せた電力量は前回同様の145Whでした。
何だかこの手の添加剤で比重が上がったり下がったりという話も聞きますが、硫酸ではなく違うものが溶けた影響での変動のような気がします。
「電撃丸」投入2週間後の計測結果
投入2週目には更に比重が下がり、平均値は1.19となりました。
取り出せた電力は前回と変わらず、145Whです。
「電撃丸」投入3週間後の計測結果
投入3週目には前週と変わらず、比重の平均値は1.19となりました。
取り出せた電力は前回と変わらず、145Whです。
これは終わった臭い。(笑)
「電撃丸」投入4週間後の計測結果
4週目には比重平均1.16まで下がりました。投入前は1.25でしたのでかなり下がっていますね。
なお、電力量については初めて上昇が確認され、145Wh→150Whの微増となりました。
まぁ…、この程度だと気温の影響などの誤差もありそうなので、効果があったとは言い切れませんけど…。
「電撃丸」のまとめ
2ヶ月ガッツリ電撃丸の効果を計測して分かったのは、劣化したバッテリーの容量を回復する効果はほとんどないであろうという点です。
ただし…、ポート内の電極はおそらく綺麗になっているであろう事は予測可能ですので、サルフェーションは剥離していると思います。
サルフェーションが剥離したという事は、抵抗値が減って瞬間的に出せる最大電力は回復している可能性があります。(計測してないけど…)
従って死に掛けバッテリーの寿命を延ばす、という効果はあるやも知れません。
というのは、バッテリーが完全にお陀仏になるのは、エンジンが掛からない時で、またはその予兆としてエンジンの回転数に合わせてヘッドライトが暗くなったり、明るくなったりするような現象があります。
バッテリーを満充電に戻してこのような状態になった時には「バッテリーは死んでしまった」と判断してよろしいかと思うのですが、大抵の場合、エンジンが掛からない程に電圧が下がってしまうのは「サルフェーション」による抵抗値の上昇が原因であると言われています。
バッテリーを満充電にしてエンジンがかならない状態で、「サルフェーション」が原因でエンジンが掛からなくなった場合、ひょっとすると「電撃丸」を投入する事でエンジンが掛かる程度の出力を引き出せるようになる可能性はあると思います。
ただし、電解液の硫酸濃度が回復する効果はないので、使用できる総電力量は変わらないでしょう…、あまり乗らない車だからと「電撃丸」を投入しても、バッテリー上がりまでの放置可能な時間は変わらないでしょう。
商品のコンセプト的には、「普段からそこそこ乗る車に投入する事でサルフェーションを防ぎ、バッテリーの寿命を延ばしますよ」と言った感じなのでしょうが、入れると比重がおかしな事になりますし、半年に1回の使用が推奨されています。
バッテリーの平均寿命が2~4年と言われていますので、3年間で6回投入すると考えると、コストは3,000円くらいになり、それで寿命が2倍に伸びて6年となりますから、電撃丸は12回投入する事になります。
6,000円使ってバッテリーの寿命が3年伸びました…、という事になりますね。
そもそも、電撃丸が投入可能なバッテリーは価格が安いメンテナンスタイプなので、これだと3年ごとにバッテリーを買い替えた方が良いじゃね?って事になります。
ただし、廃バッテリーを出さない事によるCO2削減には貢献できる可能性もありますが、最近はリサイクルバッテリーの技術も進化しているようですので、こちらもどうかな?と言ったところですね。
素直に安いバッテリーを買った方がお財布には優しそうです。(笑)
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
コメント
こんにちは。地道な検証に感心しました。これからも色々と御教示をお願いします。
マツウラヒデオ様
ありがとうございます!
結果は残念でしたけど、面白いテストでした(笑)
効果的な検証ありがとうございます。
充電時間が遅く買い換えるか電撃○でお茶を濁すか考えておりました。
全ての環境が整えば、効果が出るケースもあるかも知れないですが、私には効果は再現出来ませんでした(-_-;)
一度劣化したバッテリーに投入しても効果はあまりないように感じます。
15年以上使用していますが、新品バッテリー購入後、半年~9ヶ月で初回投入、以後半年サイクルで入れてます。
また、電撃丸以外にも電撃ゲルマも併用すれば効果が上がると思います。
始めに電撃丸を入れ、サルフェーションを除去し、一週間後に電撃ゲルマを投入します。
以前の車で約7年 、現在の車(アイドリングストップ機能付き)で5年8ヶ月持ちました。
劣化してから投入する方が多く見られますが、劣化前に入れれば効果有りとみてます。
ご参考まで
効果を出すには色々前提条件があるんですね(-_-;)