かつてのジャンプスターターはあくまでもバッテリー上がりの緊急時に車の「エンジンが掛かればOK」というような簡素な作りのものが多かったようですが、ここ2~3年の流れではスマホの普及→モバイルバッテリーの高機能・高性能化→ジャンプスターターとの複合モデル、という具合に、ジャンプスターターの機能や性能面がモバイルバッテリーに準じたものとなり、ジャンプスターター機能が付帯した大容量モバイルバッテリー的なアイテムが増えています。
まぁ、製品の形状や仕様などの部分を見ると「モバイルバッテリーにジャンプスターター機能が付帯した物」と「ジャンプスターターにモバイルバッテリー機能が付帯した物」は、設計思想そのものが異なるような気もするのですが、これらのアイテムは機能面では大きな差はなくなってきています。
今回はOittmさんより、おそらく現時点では機能性の面では最も充実しているであろうジャンプスターターについて、サンプルをご提供頂きました。
セット内容とデザインについて
セット内容は①専用ポーチ、②ジャンプスターター本体、③ブースターケーブル、④USB充電機、⑤USB AtoCケーブル、⑥説明書の6点になります。
デザイン的にはガンダム系で、どちらかというとアウトドアっぽい感じで、もともとはジャンプスターターを作っていた工場で生産された、モバイルバッテリー機能を付加させたモデルである印象です。
サイズ的にはスタンダードな大容量モバイルバッテリーよりもかなり大き目です。(スマホはiPhone 7)
本体の充電ケーブルはUSB AtoCタイプで、専用の充電器が附属します。
説明書については日本語表記もありますが、あまり詳しくありません。(使い方は見れば本体を分かるレベルかと)
スペックと出入力ポート仕様
Oittmのジャンプスターターのスペックは以下の表の通りとなります。
Oittm | |
---|---|
容量 | 3.7V*15600mAh=57.72Wh |
最大電流 | 12V*1500A=18Kw |
対応エンジン | ガソリン/8000cc |
ディーゼル/6500cc | |
LEDライト | 〇 |
入力ポート | USB Type-C×1(出入力) |
出力ポート | USB Type-C×1(出入力) |
QC3.0×1 | |
USB 5V*2.1A×1 | |
DC12V*6A×1 |
特筆すべきポイントとしては、①QC3.0出力と、②USB Type-C出入力ポートを搭載している点が挙げられますが、仕様上では謳われていないものの、こちらでテストした限りではUSB Type-Cポートからの充電を行いながら、2つの出力ポートからのスマホへの給電が可能でした。
各ポートの出入力の実測値について
このジャンプスターターにはQC3.0、USB2.1A、USB Type-C、DC 12V/6Aの4つの出力ポートが搭載されています。
QC3.0出力ポート
QC3.0ポートの規格上の最大出力は24Wとなっていますが、それは給電するガジェットや充電されるガジェットの仕様や相性、それぞれのバッテリーの残量などに依存します。
また、使用するケーブルによっても若干の差が出る事もあるようです。
私はQC3.0対応のスマホを持っていませんので、過去にテスト用に購入したQC3.0入力対応のモバイルバッテリー、RAVPower「RP-PB043」でジャンプスターターからの出力電力のテストを行いました。
QC3.0対応の充電ケーブルは、ジャンプスターターに付属しませんので、以前テスト用に購入したこちらのUGREEN製のものを使用しました。
「RP-PB0043」側はタブレットとタブレットPCの2台の端末へのパススルー出力を行っている状態で、バッテリーの残量は約50~60%です。(テストの為に急遽減らした)
結果は7.48V*2.53A=18.9Wでしたので、5V換算では3.78A流れている計算です。
充電される側のバッテリーが50~60%の残量である事を考えると、まずまずの結果であると言えますね。
USB Type-C出力・入力ポート
USB Type-Cポートは他のガジェットと同様に、出力と入力の共用となり、接続されたガジェット間の電圧差で電流の流れる方向や電圧・電流が決まります。(規格上の最大電力は15W)
従ってUSB CtoCケーブルを使用すると、普通に思わぬ方向に電流が逆流する事があります。
ただし、このジャンプスターターに付属しているケーブルはUSB AtoCの本機充電用のみとなりますので、このケーブルでテストした限りでは、C側からA側には電流が流れる事はありませんでした。
附属のこのケーブルでジャンプスターターに充電を行ったところ、4.69V×2.75A=12.9W程度の電力が供給されていました。(バッテリー残量はほぼ満タンに近い)
一方でType-Cからの出力については、別途CtoCケーブルが必要になりますので、こちらも以前テスト用に購入したRAVPower製品を使用しました。
充電対象はQC3.0の時と同様に50~60%の残量のRAVPower「RP-PB043」となります。
結果としては、5.06V×2.97A=15Wと、規格上の最大値の給電能力がある事が確認出来ました。
DC 12V/6Aポートについて
DC 12V/6Aポートについては、駆動電圧が一致する12Vの家電製品なら問題なく動くと思うのですが、残念ながら当製品には以下のようなDCケーブル&変換プラグセットは付属していません。
まあ、このポート自体が12Vのみの対応で、他社のこの手の製品は12V/16V/19Vまで対応しつつ、DCケーブル&変換プラグセットが付属している事が多いので、家電製品の駆動が目的ならこの製品は避けた方が良いでしょう。
ジャンプスターターとしてのエンジン起動テスト
ジャンプスターターとしてのエンジン始動テストは2000ccのガソリンエンジン車、ランエボ10で行いました。
ジャンプスタートの本来の手順ですが、バッテリーが上がってしまった状態でも、車両からバッテリーに繋がっている赤・黒のターミナルケーブルを外してはいけません。(今回はテストの為、黒のアースケーブルを外しました)
ブースターケーブルの接続については、ジャンプスターターの側面の「ENGINE START」のプリントがあるラバーをめくると端子が見えますので、そこにケーブルの端子を挿し込みます。
この状態だと、ケーブル接続部分のインジケーターは緑→赤→消灯の点滅状態となります。
次にジャンプスターター附属のブースターケーブルをバッテリーのターミナル赤→黒の順に接続します。
次にケーブル接続部分インジケーターの下にあるボタンを長押しすると、カチッと音がしてインジケーターが緑の常時点灯に切り替わります。
この状態でキーを回すなり、始動ボタンを押すなりすると、セルが勢いよく回る筈です。
実のところ、8000ccまで対応という、ここまで高出力のジャンプスターターを使用するのは初めてだったのですが、3年位前に初めて購入したものと比較すると、セルの勢いには圧倒的な差が感じられるかと思います。
【2015年に購入したジャンプスターター】
特にこの車のバッテリー交換時期はとっくに過ぎているのを騙し騙し乗っているので、バッテリーを繋いだ状態よりもジャンプスターターからの起動の方がセルの回転が速いです。(笑)
ドライブレコーダーの駐車監視での運用にも向いている
Oittmのジャンプスターターにあって、他のジャンプスターターにない機能は何といってもパススルー給電機能であろうかと思います。
パススルー給電機能とは、バッテリーを充電しながら、出力ポートから他のガジェットに給電を行う機能ですが、ドライブレコーダーの駐車監視を外部電源を利用して行う際の運用が楽になる可能性があります。
このジャンプスターターの場合には、給電ポートにUSBケーブルを挿しただけではガジェットへの給電は始まらず、給電ボタンを押す必要があります。
ガジェットへの給電がなされている状態で、USB3.0ポートへの充電が開始・終了されても、ガジェットへの給電は中段されませんでした。
従ってドライブレコーダーの駐車監視を運用する際には、①駐車監視をしていない状態からのスタートではケーブルを挿して電源ボタンをオン、②駐車監視に入る際には何も操作せず復帰時もそのまま運行(ドラレコ側で動体検知などのオンオフの操作は必要)、③自宅にもどって電源を落とす差にはケーブルを抜く、という流れになります。
駆動時間に関しては57.72Whの容量である事を考えると、ドラレコが標準的な電力の5V×3.5A=1.75W程度のものであるなら、57.72÷17.75=33時間程度の駆動が可能であると考えられます。
また、ドラレコを駆動させながらのパススルー充電については、USB-Cの充電能力が12.9W程度である事から、ドラレコに供給される電力を差し引くと、11W程度がバッテリーの充電に回される計算になります。
従って5V×3.5A=1.75Wのドライブレコーダーであれば、1時間の走行充電で6.5時間程度の駐車監視が可能になります。(理論上は)
なお、これらのジャンプスターターもモバイルバッテリーと同様にリチウムバッテリーを使用していますので、車内での運用の際には十分な安全対策を講じる事をおすすめします。(特にパススルータイプは発熱量が大きい)
■ モバイルバッテリーから給電・充電出来るドライブレコーダー
因みに東京消防庁の報告によると平成23年から28年11月までの間にリチウム電池関連の火災が65件発生しており、モバイルバッテリーやスマホの普及に伴って件数は急上昇しています。
このうち、モバイルバッテリーが原因となるのが12件だそうです。
東京消防庁の管轄は東京都内ですので都内の発生件数だと思いますが、確率的にはそれほど高くないにしても夏場の車内でモバイルバッテリーを使用するなら熱対策や延焼対策を施した方が良いと思います。
Oittmパススルー対応ジャンプスターターのまとめ
ジャンプスターター単体の機能を求めるなら、3,000円程度の安価なモデルもありますのでそちらをおすすめしますし、必ずしもQC3.0やUSB Type-Cの充電規格に対応しているものが必要であるとは私は思いません。(そもそもこれらの規格に対応したガジェットがまだ少なく、ハイエンドなモデルばかり)
従ってOittmのジャンプスターターがおすすめなのは、ドライブレコーダーの駐車監視の外部電源としてジャンプスターターを運用したい人、または3000cc以上の大排気量の車に乗っている人などになります。
競合となるのは、QC3.0やUSB Type-Cの入力に対応したモバイルバッテリーになりますが、過去にこの手の急速充電系のモバイルバッテリーをいくつかテストしています。
その中でパススルー使用時に最も充電速度が速かったのは、前述の「RP-PB043」のQC3.0ポートを使用してテストした際のデータで、入力側は20.3Wという数値が出ています。
Oittmのジャンプスターターの場合には入力側は13~15Wの間になろうかと思いますので、単純な充電速度だけの比較だと「RP-PB043」の方が3割程度速くなります。
ただし、「RP-PB043」にはジャンプスターター機能はありませんので、ドラレコ駐車監視用の外部電源を確保したい人で、ジャンプスターターをまだ持っていない人にはOittmのジャンプスターターがおすすめになりますね。
また、他社の製品と比べると圧倒的にセルの回りが良いと感じましたので、3000cc以上の大排気量の車の方は安心の為にこちらを選んでおくのも良いかも知れません。
コメント
現在ドラレコの導入を検討しており、駐車監視機能に重点を置いています。ただし週末のみの乗車のため、最大1週間の監視を行うため、常時録画ではなく、衝撃関知+タイムラプス程度を考えております。
となるとドラレコは車の常時電源への接続となりますが、バッテリー上りが怖いので、ジャンプスターターの同時購入を考えておりましたが、本製品であれば、バッテリー常時接続⇒本製品⇒ドラレコとつなぐことで、長時間の駐車監視に加えてバッテリー上りの心配もなくなるということで一石二鳥かと思いました。
ところが、そのつなぎだと、一定期間たつとドラレコで本製品のバッテリーを使い果たし、あげくに常時接続で車のバッテリーが上がってしまえば、まるで使えなくなります。本製品、電圧監視機能はついているのでしょうか?
悩み中様
ご質問の件ですが
>本製品、電圧監視機能はついているのでしょうか?
もともとドラレコ用の外部電源ではないので電圧監視機能はありません。
また、バッテリー常時接続⇒本製品⇒ドラレコのつなぎ方だど、先に車のバッテリーが放電しきってから当製品からの給電になりますね。
因みにドラレコをどの製品をお考えでしょうか?
ドラレコは前後2カメラモデルで考えておりまして、
ユピテルSN-TW80d、セイワPDR800FR、Parago GoSafe S36G
が候補となっています。
ParagoにGセンサーがついていればベストなんですが、当方条件に合うものはまだ市場になさそうで、もう少し待とうかな、とも考えています。
悩み中様
この中では省電力性や駐車監視の録画方式を勘案すると「セイワPDR800FR」が最も良さそうな感じはしますね。
すみません、回答に精いっぱいで御礼を失念してしまいました。
ご回答ありがとうございました。大変参考になります。
車のバッテリーを先に使ってしまうのはいただけませんので、別途外部バッテリーUPS300にジャンプスタータ単品を使うことを検討した方が良さそうですね。
悩み中様
現段階では3芯ケーブルのドラレコにモバイルバッテリーなどを使うのは配線的にかなりハードルが高いので、UPS300等の使用をおすすめします。
いつも楽しく拝見しております。
12Vドラレコの駐車監視電源を兼ねるため、Oittmのジャンプスターターを物色したのですが、購入先が見つかりませんでした。
現在入手できる、パススルーで12V&5Vを出力できるジャンプスターターをご存じありませんでしょうか。
因みにBUTURE の20000mhAモデルは、充電時にUSBは出力できず、12V(無接続時の実測16.67V)は出力できたのですが、メーカからは「バッテリーに大きな損害を与えるので、充電時の給電はおすすめしません」との回答がありました。
宜しくお願いいたします。
神父村様
Oittmのジャンプスターターは結構レアな存在になってたんですね(笑)
さて、ジャンプスターターやモバイルバッテリーなど、リチウムイオン電池を使用するバッテリー類は2019年2月に改正された電気用品安全法の規制対象となり、PSEマークの表示が義務化されました。
この際に必要な検査には最大で100万円近くのコストがかかることもあり、この価格帯では変わったものは販売されにくくなっているようです。
他は私も知らないですね。