※2019年1月9日更新~最新の製品レビューに合わせて内容を見直しました。
まだまだ冬の真っ最中で寒い日が続きますが、あと2~3ヶ月経てば地域によっては春を迎え、快適なドライブシーズンがやって来ます。
キレイに洗車したての車に乗って、ドライブするのは本当に気持ちが良いものですが、いくらキレイに洗車したつもりでも、雨になると急に運転がしづらい、フロントガラスが汚れていて見えにくい、誰しもがそんな経験をしたことがあるのではないでしょうか?
洗車をした後にフロントガラスに残っている、しつこい水アカや油汚れや油膜はドライバーの視界を悪くする、ドライバーにとっての最大の天敵です。
特に夜間には、ただでさえ眩しく感じる事がある対向車のライトを油膜が乱反射させ、事故を引き起こす大きな要因となり得ます。
雨が降っていれば視界の悪化率はさらに上昇し、さらに事故を起こしやすくなりますね。
一生懸命キレイに洗車したつもりでも、意外とフロントガラスに油膜は残が残っており、ドライバーに様々な悪さをします。
でも、そもそもこの憎らしい油膜の正体とは何なのでしょうか?
油膜について正しい知識を身に付け、油膜の付く場所や油膜の落とし方を理解し、晴れの日でも雨の日でも快適に運転できる正しい洗車の仕方を身に付けていきましょう。
油膜って一体どんなもの?
「油膜」とは一般的にはその言葉の通りに、単純に「油脂成分ががフロントガラスに付着して固まったも物」の事を指して使われている言葉です。一言で表現すると「油」です。(笑)
ただし、油脂類にも様々な物があり、それぞれ特徴が異なります。
例えば身近に使用されているサラダ油などの場合には、フロントガラスに付着しても落ちやすいのですが、通常の車の使用でフロントガラスに付着する油は、シリコーン系(元素記号:Si)を含んだ油になります。
という事ですので、油膜の正体はシリコン系の成分を含んだ油脂類という事ですね。
油膜の発生原因
では、次にこのシリコン系の成分を含んだ油膜の発生原因についてご説明します。
通常の車の使用状態においては、油膜の発生原因は以下の2つが主なものとなります。
①自動車などから排出される排気ガスが雨天時に付着
②ボディなどに塗布するコーティング剤が雨天時に付着
人間の目には見えませんが、空気中には自動車から排出された油分を含んだ排気ガスある程度存在しています。
この油成分を含んだ排気ガスが雨天時の雨水に溶け込み、それがガラスに付着するという塩梅です。
また、排気ガス以外にも皆さんが車をキレイにする為に使用している筈のボディのコーティング剤にも油膜の原因となるシリコン系の成分が含まれているものが多かったりしますね。
雨が降った際には、これらの油成分は本来ならそのままガラスから流れ落ちてしまう筈ですが、雨が降った後に残ったフロントガラスなどの水滴には、幾らかのシリコン成分が残留しています。
このシリコン成分を含んだ水玉のうちの水分だけが蒸発し、さらに日光によって熱せられたガラス上では、このシリコーンが熱によって固形化(ゲル化)することで膜が形成され、この膜が油膜と呼ばれています。
このように油膜の発生原因を考えた場合、走行中に空気中を漂っている油脂成分から車を守る為に最も有効な方法は、車を屋内に保管して乗らない事となりますが、通常の車の運用方法を考えた場合それは現実的ではありませんね。
外を走行する為の乗り物である車は、常に油膜が固着されている環境に晒されていると理解して下さい。「常に!」です。
油膜はなぜ落ちない?
フロントガラスに一度固着してしまった油膜は、思いの外落としにくいですね。普通にカーシャンプーで洗った程度では簡単には落ちてくれません。
そんな訳ですから「油膜を効率的に落とすにはどうやったらいいのかわからない」、「今まで色々なものを使用したけど、効果が得られなかった」という方も多いのではないでしょうか?
なぜ普通に洗車しただけでは油膜は落ちにくいのでしょうか?その理由をお伝えしていきましょう。
シリコーン系の化学反応「ゲル化」が厄介
先程軽くお話ししたシリコーン系の化学反応に「ゲル化」と呼ばれるものがあります。
シリコーン系の材料は水を触媒にして熱を加えると「脱水縮合反応」が起こり、本来は粘性の高いシリコーン成分が固形化してしまいます。
シリコーン材料の固形化は、分子間の結び付きが強い為、簡単には落とす事が出来ません。このように強固な結びつきで固形化した「ゲル状」の油膜が、頑固な汚れの原因となっているのです。
この「ゲル化」した油膜は、有機溶剤を使用する事で若干は溶解させることは可能なのですが、完全には落とすことができません。
まとめると、もともと大気中に浮遊していたシリコーン成分が、雨が降る事で水分と混ざった状態で車に降り注ぎます。そして太陽光を受けることによって、自然に「ゲル化」の反応が窓ガラス上で起こってしまい、簡単には落とす事が出来ない油膜が発生するという事になります。
油膜を落としやすい成分
そこで次に知っておきたいのが、以下の油膜を分解する成分になります。これを知れば油膜を落とすのが楽になるでしょう。
①エタノール
②アセトン
油膜の主な成分であるシリコーン系の成分を分解し易くするには、上記のような「飽和炭化水素系」の有機溶剤を使用するのが良いと言われています。
しかしながら、こうした化学薬品の市販製品は一般人が買えるルートではあまり流通していませんし、これらの成分だけでは、全ての油膜を落とす事は出来ません…残念ですが。
油膜を落とすメカニズムは2つ
それでは、次に油膜を落とす為のメカニズムについてご説明します。
油膜の油膜を落とすメカニズムは、ざっくり説明すると以下の2つとなります。
①油脂成分を分解して落とす
②研磨作業で削り落とす
油脂成分を分解して落とす
油落とし成分と言えば、誰しもパッと頭に浮かぶのは家庭用の洗剤ではないでしょうか?
もちろん、家庭用の洗剤も油膜落としには有効です。ご家庭にあるものを利用したい場合には、以下の油分を落とす洗剤などを使うのもアリでしょう。
①石鹸~石鹸は油分を落とすものとしても効果的ですので、ある程度のシリコーン成分を落としてくれます。
②ウーロン茶~ウーロン茶には一般的な洗剤としての高価はありませんが、シリコーンを落とすのには効果的です。ウーロン茶に含まれる重合ポリフェノールが、シリコーンを吸着し、溶かして落としてくれる働きがあります。
③食器用洗剤~食器洗剤は油膜落としに強い効果がある訳ではありませんが、ある程度の油膜を落とすことは可能です。
洗剤で落ちない油膜は研磨で削り落とす
一度ゲル化してこびりついてしまった油膜は、洗剤だけでは落ちない事もありますので、あまりにも長期間ガラスのメンテナンスをしていない場合には、研磨して擦り取る必要があります。
ガラス用のコンパウンドなどを使用し、スポンジ等で強く擦る事で、こびりついた油膜を削り取る事が可能です。
油膜落としにおすすめのアイテム!
以上のよう汎用の家庭用品でもある程度の油膜を落とす事は出来るのですが、油膜落としの専用品ではない為、やはりその効果は弱くなります。
従ってガッツリ油膜を落としたい場合には、以下のようなフロントガラスなどの「油膜落としの為だけ」に専用に開発された製品を選ぶと幸せになれるでしょう。
油膜落としの定番なら、やっば「キイロビン」でしょ!
プロスタッフの「キイロビン」は油膜取りの代名詞と言えるくらいに知名度と効果の高いアイテムです。
このキイロビンに含まれている「酸化セリウム」という物質が、フロントガラスの油膜落としにおける主役となります。
キイロビンに含まれる「酸化セリウム」
「酸化セリウム」は、希少ななレアアースで昔からガラスの表面研磨に使われている研磨剤に含まれています。
特にガラスやダイヤモンドなどとの相性の良い研磨剤で、カメラなどの光学レンズ類などの仕上げに近い工程でなどでも使用されているようです。
また、その他にも化粧品などにも使用されており、ガラスをツルツル・ピカピカにする性質があります。
なぜ「酸化セリウム」がガラスとの相性が良いかと言えば、研磨中に「酸化セリウム」とガラスが化学反応が起こり、単に機械的に研磨材がガラスの表面を削っているだけでなく、この化学反応によって表面の凹凸を滑らかにする効果があるからです。
化学的・機械的に研磨する手法のことをCMPといいますが、酸化セリウムを使ったガラスの研磨はこのCMPに近い工法です。
この「酸化セリウム」とガラス面との化学反応が起きる事で、機械的な研磨との相乗効果が生まれ、油膜が落ちやすくなります。
なお、研磨するという行為には「ガラスにキズを付けてしまうかも知れない」という不安感抱く方もいるかも知れませんが、キイロビンに含まれる「酸化セリウム」には、ガラス磨きの仕上げ剤としての用途が主である為、ガラスの細かい傷などの凹凸を整えてツルツル・ピカピカにしてくれる効果も期待できます。
キイロビンを使用しての油膜の落とし方
次に「キイロビン」を使用して油膜を落とす手順についてご説明します。
なお、フロントガラスの油膜落としは洗車後にやるとボディに水が掛かってしまいますので、洗車前に実施するのがおすすめです。
油膜落としの手順の概要は、①キイロビンの液体をガラスに垂らす、②こすって研磨する、となりますが、ヘマをすると均一に油膜が落とせず、ムラや乱反射が残ってしまう可能性がありますので、綺麗に仕上げたい方は以下の手順がおすすめです。
フロントガラスを洗う
まず初めにガラスを傷つけない為に重要になるのがフロントガラスの洗浄作業です。
目に見えない砂ボコリなども付着している可能性がありますので、見た目でキレイだったとしてもカーシャンプーなどで洗っておきましょう。
フロントガラスが汚れた状態で油膜落としを行うと、スポンジに砂や小さな汚れが混ざってガラスに傷が入る恐れがあります。
フロントガラスの油膜の付き具合を確認する
フロントガラスを洗った後は、一度乾いたクロスでガラスを拭き取り、霧吹きなどで全体に水を掛けるとどのエリアに油膜が多いのかが分かり易いです。
以下は完全にアカンやつです。(笑)
なお、フロントガラスに水を掛けながらワイパーを動かすと、拭き取り範囲内にどれだけ油膜が出来ているかが分かります。
これもアカンやつですね。
研磨を行う
キイロビンでの実際の研磨作業は以下の手順となります。
①キイロビンには、黄色のスポンジが付いていますので、スポンジの黄色の面に白色の液剤を適量とります。
この時少し水を含ませておき、フロントガラスの各箇所をスポンジでこすっていきます。
②力は強めにして、油膜を擦り取る感じでこすっていきましょう。
③ずっと同じ場所を磨き続けていると、水分がなくなってきます。キイロビンの液剤が白く残り、粉上になってきますので、こうなると水はじきが見えなくなります。この状態で磨くのは良いのですが、油膜が取れているのかどうか確認することはできません。
油膜が取れているかどうか確認する為には、水を垂らす必要があります。スポンジを絞って水を垂らすか霧吹きなどで軽く水を吹き付けると、水の弾き具合で油膜が落ちているかどうか分かります。
完全に水を弾かなくなるまで研磨作業を続けます。
④最後にフロントガラス全体に水を掛けて、水を弾く場所がないか確認し、完全に親水状態になっていれば研磨は完了です。
以下、真ん中は研磨してません。
ガラス油膜落としが終了したら、キイロビンの液剤がフロントガラスに残らないようにしっかり洗い流しましょう。(まぁ、洗車するのが吉ですね)
なお、洗車後にはボディのコーティングやワックス掛けをする事が多いと思いますが、スプレー式のコーティング剤はガラスにも掛かりやすいので、クロスに直接吹きかけて塗布しないとせっかく綺麗にしたガラスが悲しい事になります。
キイロビン以外には「ガラコの油膜落とし」も結構良いよ!
油膜落としの定番と言えば、前述の「キイロビン」ですが、試しにどんなもんかとガラコの「ガラコぬりぬりコンパウンド」も試してみました。
細かい成分記載はありませんが、アルカリ性溶剤との事なので多分「酸化セリウム」も入っているものと予測します。
結論から言えば油膜の落ち方については「キイロビン」との差は体感出来ませんでしたが、ボトルと持ち手と研磨用のフェルトが一体化している形状で、手や服の袖を汚さずに作業出来る為、こちらの方が使い勝手は良いように感じました。
ただし、何年も放置したフロントガラスの場合、これらの油膜落としを使用しても簡単には落ちてくれない事も予測されますので、そう言った場合にはスポンジで気合を入れて擦れる「キイロビン」がおすすめです。
キイロビンでも油膜が簡単には落ちない事もある
これは主に数年落ちの中古車を購入した場合にハマるかも知れないポイントなのですが、定期的に油膜落としのメンテナンスを行い、数ヶ月程度の間に固着した油膜であれば、キイロビンでそれほど苦労せずに落とす事が出来るのですが、何年もガラスを放置しているような車の場合、簡単には落ちてくてません。
過去に2台程度の車でハマった事がありますが、ゲル状の油膜だけでなく、ミネラル成分が含まれたウロコと油膜が混じり合ったようなものは、キイロビンやその他のガラス用コンパウンドでもなかなか落ちてくれず、かなり苦労しました。
そう言った場合には、電動ポリッシャーとキイロビンを併用すると楽に油膜を落とす事が可能です。
因みにこのサンダポリッシャーはダブルアクションポリッシャーなのですが、油膜を落とす為ではなくボディのガラスコーティング前の下地作りの為に購入したものです。
ヘッドライトの黄ばみ落としの為の研磨など、色んな事に使えるので非常に重宝しています。
ガラスの油膜落としならダブルアクションである必要はないですが、その方が他の用途での使いまわしが効きやすくなります。
因みに「ポリッシャー」の中には、3,000円程度のモデルもありますが、ワックス掛け、ワックス拭き取り用がメーカーの意図する主な目的で、「研磨には対応せず」と謳われているものもあるので注意が必要です。
最近購入した14年落ちのコペンの油膜が酷かった
冒頭の画僧に挿入しているのは、実は最近購入した14年落ちのコペンです。
ワイパーは交換したばかりなのですが、油膜がこんな感じで酷いことになっていました。
良く見るとフロントガラスの右側は油膜が付いてない事が分かると思いますが、これは上記の電動ポリッシャーとキイロビンを使用して2~3往復した部分です。
古くてメンテナンス状況が悪い車の場合、手擦りだと大変な思いをした挙句、油膜やウロコが全然落ちない事もありますので、手擦りて落とせない油膜はポリッシャーなどを使うと作業時間が短縮出来ます。
因みに塩酸などが含まれた油膜落とし…というか「ウロコ溶かし」も便利ですが、リアやサイドガラスはともかく、フロントガラスには使えないので、古い車のフロントガラスは研磨するしかないですね。
油膜の予防にはフロントガラスのコーティング
油膜を予防するには車を外に出さない事が一番ですが(笑)、そうも行きませんので簡単に出来る事としてはフロントガラスのコーティングが挙げられます。(どれほどの効果があるかは検証中)
ガラコなどの撥水コーティング剤などには油膜の固着防止などの効果も謳われており、一定以上の効果は期待できます。
以下の記事で数あるガラコの製品についてまとめています。
撥水性が高いのはシリコン系、効果が長持ちするのはフッ素系ですが、主要アイテムについては別途レビュー記事を上げています。
フロントガラスの油膜落としについてのまとめ
車のフロントガラスの透明度は、オーナーの性格を映す鏡です…嘘です。
ドライブする時にガラスが汚れていると気分が悪いですし、ボティのコーティングなどを頻繁にされる方はフロントガラスに油膜が付きやすくなるかと思います。
ボディにコーティングした状態で雨が降ると、フロントガラスに何もコーティングしてないようならそれなりに油膜になりますので、定期的なメンテナンスを心掛けましょう。
放置すればするだけ、後で油膜やウロコが落ちなくなって大変な思いをする確率が高まるのは間違いありません!
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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