自動車にはさまざまなボディタイプがありますよね。
あなたの愛車はどんなボディタイプですか?セダン?ミニバン?コンパクトカー?それともクーペ?
現在、日本の自動車ディーラーで販売されている車種にクーペボディはほぼありませんが、1980年代から2000年にかけて、クーペと呼ばれるボディスタイルの自動車がとても人気でした。
クーペと聞いてピンとこない人も、今では多いのではないでしょうか?
そもそもクーペとは、二人乗りの自動車のことを言います。
ツーシーターってやつですね。
または、後部座席があっても、補助的な意味だけで実用的ではない後部座席が設置されている2ドア(トランク除く)の四輪自動車のことです。
もともとは、馬が自動車代わりだった時代、馬車が引く車のことを馬車用語で「クぺ」と呼んだようです。
その馬車用語が、受け継がれて現在でも2ドアタイプの自動車をクーペと呼んでいます。
日本国内でクーペブームが巻き起こっていたのは今から20年以上前のお話。
それ以降は、とにかく実用的で、万人受けするものばかりが作られるようになった気がします。
趣味性の高い車、というのがあまり売れなくなってしまったんですよね。
時代の流れ、風潮もありますし、今は何にせよ低燃費!エコ!が大前提になっていますから。
そんな30年も前にさかのぼりますが、ホンダから「インテグラ」という車種が発売されました。
1985年のことです。
インテグラは当時若者に大変人気の高い車でした。残念ながら2006年に廃盤になってしまいましたが、今でも愛車として乗り続けているユーザーさんは多い車種です。
今回はそんなホンダ インテグラを紹介いたします。
ホンダ インテグラ その魅力とは?
改めてホンダ インテグラについて紹介します。
初代クイント インテグラ
ホンダ インテグラは1985年にクイントという車種の後継車として登場しました。
【http://www.honda.co.jp/】
初代インテグラは全グレードにおいてDOHCエンジンを搭載させ、スポーツテイストを売りにして販売されました。
5ドアのセダンと、3ドアのクーペ、当時は実用性よりもかっこよさが一番でしたから、クーペタイプのインテグラは大変注目を集めました。
今はまったく見かけることはありませんが、この初代インテグラは、リトラクタブル・ヘッドライトといって、ヘッドライトを点灯させるとレンズ部分が開閉するものを採用。
1980年代はトヨタ スプリンタートレノやニッサン 180SXなど、リトラ(リトラクタブル・ヘッドライトの略称)の車が人気でしたね。
4年の販売期間を経て1989年には2代目へとフルモデルチェンジされます。
初代では「クイント インテグラ」という名称で発売されたインテグラも、2代目へのフルモデルチェンジとともにクイントからは切り離され「インテグラ」として確立されました。
インテグラの人気は、日本国内にとどまらず、アメリカでもアキュラブランドとして発売されました。
高級車ランク・アキュラとしての販売は、レジェンドに次いでインテグラが2車種目でした。
2代目 インテグラ
2代目インテグラはホンダ初のVTEC(ブイテック)エンジンを搭載したことでも注目されました。
【http://www.honda.co.jp/】
今ではホンダと言えばVTECが代名詞になっていますが、インテグラが初の試みだったんですね。
そしてこの2代目インテグラは“あること”でも有名なのをご存知でしょうか?
なんと天皇陛下の愛車として今でも皇居内で活躍しているのが、この2代目インテグラなのです。
2016年には、愛車のインテグラで高齢者運転講習を受けられている天皇陛下のお姿まで披露されるなど、現役で活躍しているのです。
2代目インテグラも4年という短い販売期間をもって販売終了。
1993年、3代目インテグラへフルモデルチェンジを果たします。
3代目 インテグラ
3代目インテグラは印象をがらりと変えて丸目4灯のヘッドライトを採用。
【http://www.honda.co.jp/】
インパクトはあったものの、見慣れないマスクに評判は振るわず…。
2年という販売期間で早々にマイナーチェンジをし、後期モデルでは2代目を彷彿とさせる横長のヘッドライトへ変更されました。
1980年代から1990年代は4年でフルモデルチェンジというスパンが通常でしたが、この3代目インテグラは当時非常に珍しい計8年もの間、販売されました。
4代目 インテグラ
日本が21世紀を無事に迎えたころ、長く愛された3代目インテグラもようやくフルモデルチェンジを迎えます。
【http://www.honda.co.jp/】
4代目となるインテグラは、それまでの3ドア・5ドア設定を廃止し、3ドアのみの販売となりました。
また、ホンダの主力車種のプレリュードが廃盤となり実質インテグラへ統合され、5ナンバーだったインテグラは3ナンバーへと変更されました。
排気量もこれまでの1600㏄、1800㏄から2000㏄に改良。
エコカーブームの到来でインテグラは販売不振に
しかし2000年代に入り、日本ではエコカーブームが到来します。
プリウスをはじめ、ホンダでもインサイトやシビックにハイブリッドが登場するなどして市場人気はエコカーに傾き始めました。
こうした逆風を受けてフルモデルチェンジを最後に、2006年インテグラは販売を終了しました。
インテグラと言えば、単純にスポーツカーとして有名ですが「Type-R(タイプアール)」というスポーツグレードも世界的に有名ではないでしょうか。
インテグラType-Rは3代目インテグラのスポーツグレードとして発売されました。
搭載されたエンジンはVTECエンジンスペック-R、さらには車体全体も軽量化するなどし、「世界最速のFF」として愛されました。
インテグラType-Rは、シビックType-Rと同様にエンブレムが赤色のものを付けて一目でわかるようにされていました。
「赤バッジ」なんて呼ばれていましたね。
世界最速のFFとうたわれ、世界中で愛されたインテグラType-Rも、インテグラの販売終了に合わせて生産を終了させました。
ホンダ四輪としての販売を終了したインテグラはその後、二輪へバトンタッチ。
同じく「インテグラ」という名称でオートバイとして活躍しています。
さて、低燃費・エコカーの波にのまれて生産を終了させてしまったインテグラですが、最近になってホンダは同じく非エコカーをつらぬき、最後までハイパフォーマンスカーとして幕を閉じた名車「NSX」の復活を発表しました。
ハイブリッドカーとしての復活、価格帯は2300万円と、初代NSXと同様、強気な価格設定。
それだけNSXを望む声が多かったのでしょう。
ホンダは平成初期に販売していた軽自動車のビートも、よりスポーツテイストを濃くして「S660」という名前で復活させたばかりです。
大手自動車ディーラーがスポーツカーの生産から撤退する中、ホンダはここへきて「あえてスポーツカー」しかも「時代に見合ったスポーツカー」を次々と発表しています。
インテグラにおいても、廃盤となった今でも中古車価格は高値を維持し続けています。
もしかしてインテグラの復活を耳にする日もそう遠くないかもしれませんね。
インテグラのおすすめポイントとは?
いつもならば、このおすすめのポイントの段落には機能的なことや、実用性、価格帯、おすすめの年齢層などを書くのですがホンダ インテグラについて書くのに、それは後回しだな、と思っています。
インテグラはスポーツテイストの車種には珍しくFF(フロントエンジンフロントドライブ・前輪駆動)であることは有名ですよね。
そしてNA(ノンターボ車)であることも。
スポーツカーにおいてはFR(フロントエンジンリアドライブ・後輪駆動)が主流ですが、正直、公道においては走りに大きく違いは出ません。
ただし、サーキットになれば、やはりFF車両とFR車両ではステアリングを切ったとき、カーブに進入したときなど車体の感覚はかなり違うものだと言います。
FFが好みのユーザーさんにとっては、インテグラ、特にType-Rは憧れの存在でもあります。
インテグラを購入した人に聞くと「ずっと憧れていた車だった」「エンジンをかけた瞬間に購入を決めた」などの声が多く、こだわりを強く持ったユーザーさんがほとんどです。
クーペボディのインテグラは、決してファミリー向けの車ではありません。
2ドアですから、後部座席への乗り降りも大変ですし、スペースも広くはありません。
実際にインテグラユーザーさんでインテグラをメインの車として乗っているのは独身の人、または子供の手が離れて自分の好きな車に乗れるようになったような年配の人が多く、子育て世代で乗っているのはセカンドカーとして…というスタイルです。
それでも、インテグラは意外に荷室も広いですし、2シーターとして考えるならば後部座席も活用できます。
5ドアのセダンタイプならば、後部座席のスペースもしっかりとってありますが、Type-Rに5ドア設定はないので注意してください。
ボディやエンジン自体には特にトラブルが起こりやすい車種ではありませんから、可愛がってあげれば、それに応えてくれる相棒になってくれるような車です。
メンテナンスをしっかり行うと、15万キロでも不具合なく乗り続けることができるほど、丈夫なエンジンです。
ホンダ インテグラのマイナスポイントとは?
一番のネックは廃盤になっているという点で、状態のいい中古車があまり出回っていないところです。
もしも稀に市場に極上な中古車が出てきても、価格はかなり高騰しています。
インテグラは日本国内だけにとどまらず、海外でも大変人気な車種ですから、一時期はスバル インプレッサ、三菱 ランサーエボリューションと並んで盗難車リストの上位でした。
気に入る中古車を見つけ出すことが、まずは第一関門かな?と思います。
ホンダ インテグラ その中古車相場とは?
インテグラは30年以上前から販売されていますが、さすがに初代の中古車で状態の良いものはインターネット上にもなかなか売りに出されてはいません。
こうしたレトロカーは、意外にもワンオーナーで地方の田舎でひょっこり出会えたりします。
私も、父親譲りの車好きが高じて高校生の頃からフェアレディZやスカイラインに憧れていました。
ずっと「ケンメリに乗りたい」と言っていた女子高生の私(今思えばかなり変わっている)。
唯一、話が合ったのは担任の先生くらいでした。
免許を取りたての私に父が与えたのが、S130フェアレディZでした。
もう好きな人にはきっとたまらない車だと思います。
そのS130も、私が住む地方、それもかなりど田舎へ父が仕事へ出向いた時、普通の農作業小屋のようなところにナンバーを外して置いてあったものです。
偶然出会ったS130。
「本当はS30がいいけど、欲張ってはいけない!」と思った父が持ち主のかたに交渉し、格安で譲っていただきました。
ノーマルでしたがとても素敵なS130でした。
このフェアレディZが置いてあった近所にはマツダ コスモスポーツが置いてあったり、一番近いホンダのディーラーにはN360が車検で入庫していたりと、ノスタルジックカーが潜んでいるような地域です。
もし、こうしたレトロなノスタルジックカーが欲しい人は、田舎へ足を運んでみると私の父のような出会いがあるかもしれませんね。
そのフェアレディZで大学へ通学していた私。
はい、変わっています。
同級生よりも、大学の事務局のおじさま方によく声をかけられました(笑)。
でも、車好きの良さってこういう部分でもあると思います。共通の話題や趣味から、知人や友人が増えていく。
とても素晴らしいことですよね。
話はそれてしまいましたが、初代インテグラはきっと希少ですので今回は3代目、4代目最終モデルの相場を紹介したいと思います。
3代目 インテグラ
1994年(平成6年) 9.2万キロ・1800㏄・グレードSi・修復歴無し→106万円
1995年(平成7年) 11.4万キロ・1800㏄・グレードType-R・修復歴無し→160万円
1995年(平成7年) 13.8万キロ・1800㏄・グレードSi・修復歴無し→85万円
1996年(平成8年) 5.9万キロ・1800㏄・グレードType-R・修復歴無し→161万円
2000年(平成12年) 9.7万キロ・1800㏄・グレードType-R・修復歴無し→127万円
4代目 最終インテグラ
2001年(平成13年) 5.0万キロ・2000㏄・グレードType-R・修復歴無し→173万円
2001年(平成13年) 2.9万キロ・2000㏄・グレードiS・修復歴無し→59万円
2003年(平成15年) 10.1万キロ・2000㏄・グレードプレミアムスタイル・修復歴無し→50万円
2005年(平成17年) 5.5万キロ・2000㏄・グレードTypeS・修復歴無し→93万円
2006年(平成18年) 7.1万キロ・2000㏄・Type-R・修復歴無し→174万円
この手の車種の相場を見るといつも思うのですが、やっぱりType-Rってスゴイ。
最終モデルのType-Rが100万円以上の値段がついているのは「やっぱりな」という感じですが、3代目の平成初期(上記紹介だと平成8年のもの)で160万円ですよ!?
20年以上も前の車にこの価格。
各自動車メーカーからスポーツカーは発売されてきましたが、スカイラインGT-RやインプレッサWRX、ランサーエボリューション、スープラなど、やはりこの辺りは「別格」と表現せざるを得ません。
特にこうしたスポーツカー、ラリーカーの価格を引き上げる要素となっているのが事故の多さです。
車のタイプがタイプなだけに、交通事故も多いのがこうした車種。
修復歴のない中古車となるとかなり台数が減ります。
インテグラも、修復歴のある車体も含めれば台数も多いですが、修復歴無しで絞るとグッと台数が減ります。
いくら発売当初の生産台数が多くても、事故によって廃車になってしまっている台数も相当なもの。
加えて、廃車まではいかずとも、修復歴になるような事故をしているものも含むと、状態の良いインテグラはあまり残っていないことが、中古車価格の高騰につながっています。
「希少車」になってしまっている、という状態なわけです。
おすすめのグレードはコレ!
ホンダ車、中でもインテグラの代名詞ともいえるグレードがあります。
再三書いてきましたが、絶対に外せないのが
インテグラ Type-R!
3代目では直4 1.8L、スペックRエンジンを搭載して“走り”をとことん追求したインテグラType-R。
初代はエアコンやオーディオ類、細かいところではリアワイパーまでもが標準装備では「ない」という徹底した車体の軽量化を進めました。
4代目では直4 2.0LVTECエンジンを搭載。
さらにパワフルになって登場しました。
しかし、3代目で徹底していた軽量化も、4代目では緩和し、エアコンは標準装備になっていますし、リアワイパーもパッケージによっては標準仕様にされています。
Type-Rと言えば、通称「赤バッジ」と呼ばれるエンブレムが目印となっていますが、この赤バッジに憧れて、ベースグレードにエンブレムだけを交換する「エンブレムチューン」も流行しましたが本物のType-Rはボンネットを開けるとエンジンカバーも赤色のType-R専用のもの、という完全なる差別化を図っていました。
こうした徹底したグレードの差別化が、Type-R人気に拍車をかけ、ワンランク上の存在になりました。
インテグラ Type-S
最終モデルのインテグラではType-SとType-Rの販売でしたが、それまではⅰSがベースグレードとされていました。
極端な話、Type-RかベースグレードであるType-Sかの選択だったわけです。
Type-Rほど面白味はないかもしれませんが、インテグラという車種自体に魅力があるので、ベースグレードも人気でした。
中古車を探すと、Type-Sに比べてType-Rの台数がやや少ない、といった印象です。
もちろんType-Sにもマニュアル設定がありますから、スポーツカーとして乗り回すにはオートマチックよりもマニュアルをおすすめします。
※プレミアムスタイルはⅰSプレミアムスタイルという特別仕様のグレードです。
個人的な印象としては「車なら何でもいい」という感覚のユーザーさんは少なく「乗るならインテグラ!」という意気込みのユーザーさんが多いように思います。
こうした人を魅了する車が、最近では少なくなっていることに寂しさを覚えます。
ホンダは二輪事業も展開していますし、F1にも力を入れています。
現在はエンジン提供という形でF1に携わっていますよね。
今年はインテグラと同年に生産終了したNSXの新型も発表されましたし、なんとなくインテグラの復活も予感させますね。
今後もホンダの四輪車展開から目が離せません。
(ライター:中古車査定士ryo)
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