ユーザー車検とは
ユーザー車検とは、自動車のユーザー(使用者)自らが必要な点検整備等を行い、各都道府県の運輸支局などへ車を持ち込み、継続検査(車検)を受ける事が出来る制度の事です。
軽自動車に関しては、運輸支局ではなく軽自動車検査協会で継続検査を受ける事が可能です。
ユーザー車検のメリット
車検の際に掛かる費用には、重量税や自賠責保険料、印紙代などの法定費用の他に点検・整備・車検代行費用などが含まれますが、ほとんどのユーザーは一般の整備工場やディーラーなどへ車検を依頼する為に、非常に高い車検費用が掛かってしまっています。
車検をお願いする業者さんにもよりますが、法定費用+20,000~100,000円といったところが車検総額のベースとなる金額だと思います。(部品や消耗品の交換が発生した場合はさらに追加料金が発生します)
因みに法定費用だけを考えるのであれば、以下の通りとなります。
例えば2t以下で新車登録からの経過年数が13年未満の普通自動車の場合、重量税は32,800円です。
エコカー減税適用なし | 重量税 | |||
---|---|---|---|---|
新車登録からの年数 | 13年未満 | 13年経過 | 18年経過 | |
0.5トン以下 | 軽自動車 | 8,200円 | 10,800円 | 12,600円 |
~1トン | 普通自動車 3・5ナンバー | 16,400円 | 21,600円 | 25,200円 |
~1.5トン | 24,600円 | 32,400円 | 37,800円 | |
~2トン | 32,800円 | 43,200円 | 50,400円 | |
~2.5トン | 41,000円 | 54,000円 | 63,000円 | |
~3トン | 49,200円 | 64,800円 | 75,600円 |
自賠責保険料については、普通自動車が24ヶ月で27,840円、軽自動車が26,370円です。
この他に印紙代が5ナンバー車で1,700円、3ナンバー車で1,800円、軽自動車で1,400円掛かります。
従って、この場合は重量税32,800円+自賠責保険料27,840円+印紙代1800円の62,440円が法定費用になり、この金額にさらに20,000円~100,000円が加算された82,440円~162,440円程度が実際の車検費用のベース金額になります。
因みにあまり安すぎるところは、車検にギリギリ通す為だけの点検だけしかしない場合もありますので、安いのにはそれなりに理由があると思った方が良いでしょう。
さて、肝心のユーザー車検のメリットですが、自動車メンテナンスの知識をある程度持っている方であれば、ユーザー車検を行うことにより、法定費用だけをベースとした金額で、とても安く車検を済ませることができます。
ユーザー車検のデメリット
ユーザー車検のデメリットとしては、点検・整備・代行費用が抑えられる代わりに、自分で責任を持って点検整備を行い、自動車の安全を確保する義務があります。
この義務を果たす事を怠り、良い加減に点検を済ませてしまえば、パーツが痛んでダメージが別の場所に広がって車の本来の寿命を縮めてしまったり、最悪の場合には大きな事故に繋がる恐れもあります。
継続検査はその後の安全を保証するものではありませんので、これから説明する決められた箇所の点検・整備はしっかり行いましょう。
ユーザー車検に必要な点検・整備
前述のとおり、自動車に求められる最も重要な事は安全性ですので、ユーザー車検であるからこそ、しっかりと点検・整備する必要があります。
専門的な知識が必要な点検項目もあるため、自分で出来ない項目に関してはその部分だけ車屋さんに点検・整備してもらうのも良いでしょう。
重要な事なので繰り返しますが、多くの場合点検を省略しても車検は通るものの、安全面では不安が残ります。
整備に起因する事故を起こさないためにも責任を持って点検することが大切です。
なお、経年車・多走行距離車など傷みの激しい車両の場合、十分な予防整備等を行う必要があるためユーザー車検は推奨いたしません。
では、実際に点検の準備をしましょう。今回行うのは24ヶ月定期点検というものです。
24ヶ月定期点検記録簿の準備
まずは、整備した項目を記録する「24ヶ月定期点検記録簿」を準備します。
24ヶ月定期点検記録簿は運輸支局で購入することもできますが、インターネットにて無料で公開されているものもあります。
【24ヶ月定期点検記録簿の記入例】
記録簿への記入方法
まずは右上の欄から書いていきましょう。
- ①点検または整備した者の氏名または名称 : ご自身のお名前を記入します。
- ②点検または整備した者の住所 : ご自身の住所を記入します。
- ③自動車登録番号または車両番号 : 車検証に記載されているものを記入します。
- ④車台番号 : 車検証に記載されているものを記入します。
- ⑤初度登録または初度検査年 : 車検証に記載されているものを記入します。
- ⑥点検時の総走行距離 : 現在の総距離を記載します。
- ⑦認証または指定番号 : 空欄のままでOKです。
- ⑧点検整備の年月日 : 点検を始める日を記入します。
- ⑨整備を完了した年月日 : 整備を完了した日を記入します。
交換や締付等を行った場合も、良好と記載しても問題ありません。
記入ミスがあっても、点検はしっかりとしていると見なして検査員から指摘されることはほとんどありません。
プロであっても、しっかりと点検は行っても記録簿の記入を間違えていることがあります。
それでは、ユーザー車検の落ちやすいポイントなどをご覧いただき、点検に入っていきましょう!
点検前に知っておきたいポイント、これってユーザー車検に通るの?
ユーザー車検に通るか通らないか、わかりづらいポイントの紹介です。
点検前に是非お読みください!
- ヘッドライトレンズやリフレクターなどのヒビ
レンズのヒビは水が入らない程度の浅いものであればユーザー車検には通ります。
リフレクター(反射板)も同様に深いヒビでなければ通ります。 - 競技用パーツ
マフラーなどは競技用部品であっても近接排気騒音が基準値内であればユーザー車検は通ります。
足廻りなどの競技用パーツは、検査員の判断で不合格になる可能性はあります。 - 社外ステアリングホイール
ステアリングホイール(ハンドル)を変えて運転席エアバッグがなくなってもユーザー車検は通ります。
ただし、ホーンボタンは必ず付いていなければなりません。 - タイヤ・ホイール
軽トラや、軽バンなどの貨物車に乗用車用のタイヤやホイールを取り付けた場合はユーザー車検に通りません。
乗用車はJWL規格のホイール、貨物車はJWL-Tのホイールに貨物車用のタイヤを取り付ける必要があります。
タイヤサイズを大きく変更した場合はスピードメーターと実速度の差が基準値を超えてしまい、ユーザー車検に合格しない場合があります。 - メーター内警告灯
エンジンチェックランプや赤色の警告灯(充電警告灯、SRS警告灯など)が点灯する場合、ユーザー車検は合格しません。
また、警告灯の球が切れている場合もユーザー車検には合格しません。 - リアワイパー
リアワイパーが付いていない場合でもユーザー車検は通ります。■ リアワイパーの故障や取り外しは車検に通る? - 異音
異音の種類によりますが、足廻りからギシギシ音がする場合などでも異常はありませんのでユーザー車検には通ります。
次は、ユーザー車検で落ちやすいポイントを紹介です!
ユーザー車検でよく落ちるポイントはここだ!
ユーザー車検を受けようと思っている皆さん、次の点検は特に気をつけて行いましょう!
- ダストブーツの切れ
ダストブーツが切れてグリスが出ているのはアウト!早急に修理が必要です。 - オイル漏れ
オイルの若干のにじみは、どの車両でもよく起こります。
大量に漏れている場合は修理が必要ですが、にじみ程度であればホームセンターなどで売られているブレーキパーツクリーナ等できれいに洗い流しておきましょう。
きれいにしておけばユーザー車検は合格します。 - 冷却水の漏れ
冷却水がにじんで乾いた形跡があっても現時点で漏れていなければユーザー車検は通りますが、再度漏れてくる可能性があるので早めに修理しましょう。
冷却水の漏れがある場合はエンジンが温まってくると甘いにおいがします。放っておくとエンジンがオーバーヒートする原因になるので絶対に修理が必要です。 - 最低地上高
車高を落とした車は要注意!
車両を水平な場所に停車し、水平な面と車体の一番低い箇所までの垂直距離です。
これにはマフラーも含まれます。一番低いところで9cm以上なくてはなりません。 - タイヤのヒビ
タイヤに細かいヒビが大量に入っている場合、溝は十分にあっても安全上問題があると判断されればユーザー車検は通りません。 - マフラーの音量
ユーザー車検で測定するのは近接排気騒音と呼ばれるものですが、これが基準値を上回る場合、ユーザー車検は通りません。
年式やエンジンのレイアウトによって異なりますが、マフラーを交換した車両は要注意です。 - マフラーの排気漏れ
小さな排気漏れだと、ユーザーも意外と気づいていないことがありますが、排気漏れはユーザー車検でも重点的にチェックされますので少しでも漏れていれば落ちてしまいます。 - シフトパターンの表示がない
意外と盲点なのがMT車でシフトノブを変えていて、シフトノブにシフトパターンの表示がない場合。
運転者本人がシフトパターンをわかっていても、これもユーザー車検は通りません。
シフトノブ付近にシフトパターンのステッカーを貼付するか純正のシフトノブでユーザー車検を受験するなどしましょう。 - 灯火類
各灯火類には発光色の指定があります。
例えばヘッドライトやナンバー灯の色が白を通り越してどう見ても青い、左右でバルブの色が異なるなどという場合はアウトです。
青白いくらいなら大抵はセーフですが、検査員の判断になるので必ず合格するという保証はありません。■ ポジションランプやナンバー灯をLEDに交換すると車検に通らない?しかし、ユーザー車検の方がカーディーラー等ほど色の判断には厳しくありません。
あとは、ウィンカーのバルブをLEDに変えたりしてハイフラ(点滅回数が多すぎる状態)している場合などもアウトです。
方向指示器(ウィンカー)の点滅回数は60~120回/分となっているのでハイフラの場合はそれを大幅に超えてしまいます。
ではこれを踏まえて、エンジンルームから点検に入っていきましょう!
ユーザー車検「エンジンルーム点検編」
まずは記録簿の順番に基づいてエンジンルームから点検していきましょう!
パワーステアリング
いわゆるパワステです。パワステには電動式(EPS)と油圧式があります。
電動式の場合、ベルトの緩み・損傷・オイルの漏れ・量は省略です。
油圧式の場合は、リザーブタンクの油量と、パワステポンプや配管などからオイル漏れがないか、ベルトにヒビや亀裂などがないかを点検します。
点火装置
- スパークプラグの状態
ノーマルプラグとイリジウムプラグがあり、イリジウムの場合は10万キロ交換不要となっておりますので特に不調がなく、走行距離が10万キロ未満の場合は点検不要となります。
イリジウムの場合、多くはボンネット裏などに貼り付けてあるステッカーでその旨の記載があります。
ノーマルプラグの場合は車検ごとに外して点検しましょう。
プラグの状態はプロでないとわからない上、プラグの取り付け時に締め付けが足りないと不具合を起こす可能性があるので不安であればプロに任せましょう。 - 点火時期
エンジンの吹け上がりに問題がなければOKです。 - ディストリビュータキャップの状態
ディストリビュータキャップの状態現在新車で販売されている車はディストリビュータを用いていないのでこの項目は省略します。
平成10年以降の車両はほぼこの項目には該当しません。
バッテリー
バッテリーのプラス端子、マイナス端子が緩んだり腐食したりしていないか、バッテリー本体がしっかり固定されているか手で揺するなどして点検します。
エンジン
- 排気ガスの状態
マフラーから異常に白煙を吹いたりしていないか確認します。 - エアクリーナエレメントの汚れ・詰まり
エレメントがそれほど汚れていなければゴミをはらう程度でOKです。
高圧エアでゴミを飛ばせる場合は飛ばします。通常のエレメントの水洗いは厳禁です。
あまりにも汚れている場合は交換しましょう。
冷却装置
ラジエータの配管やウォーターポンプなどから水漏れがないか、ベルトにヒビや亀裂などがないかを点検します。
燃料装置
- 燃料漏れ
車両周辺から燃料のにおいがしなければ問題ないでしょう。 - リンク機構の状態・スロットルバルブ・チョークバルブの作動
アクセルの踏み込みに対してスロットルバルブが正しく動いていれば問題ありません。
公害発散防止装置等
- メターリングバルブの状態
別名PCVバルブです。通常、問題が起きることはありません。
バルブがヘッドカバーから抜けて外れそうになっていないか確かめてください。 - ブローバイガス還元装置配管
ヘッドカバーからの配管です。通常、交換が必要になることはありません。 - 燃料蒸発ガス排出抑止装置、チャコールキャニスタ
チャコールキャニスタとそれに関わる配管です。燃料のにおいがしなければOKです。 - 触媒等の排出ガス減少装置取付けの緩み、損傷
触媒がしっかりと取り付けられているか。また、触媒の損傷などによる排気漏れがないかどうか。 - 二次空気供給装置
通常は取り付けられていません。 - 排気ガス再循環装置
EGRと呼ばれるものです。最近市販されている車両の多くにはこの装置が取り付けられています。 - 減速時排気ガス減少装置
通常は取り付けられていません - 一酸化炭素等発散防止装置
通常は問題ありません。
エンジンルームの点検おつかれさまでした!
次は室内点検をしていきましょう!
ユーザー車検「室内点検編」
では、次は室内点検ですね。
張り切っていきましょう!
- ハンドル
操作具合
特に違和感がなければOKです。 - ブレーキペダル
遊び、踏み込んだときの床とのすき間
ペダルを踏み込んで床との距離が十分にあればOKです。 - ブレーキのきき具合
通常走行において十分にブレーキが効くかどうか。 - パーキングブレーキレバー(ペダル)
引きしろ(踏みしろ)・パーキングブレーキのきき具合
レバーを強く引いたり、ペダルを強く踏んだりして、パーキングブレーキをかけたままAT車ならDレンジにいれてフットブレーキを踏まずにエンジンを少し吹かす、MT車ならエンジンを少し吹かしながらクラッチをつないで車が前に出ないか確認する。 - クラッチペダル
通常走行でクラッチの操作具合に違和感がなければOKです。
ATの場合は省略。
メーター内の警告灯も点灯確認が必要です!
記録簿にこの点検項目はありませんが、メーター内の次のランプが切れているとユーザー車検は通りません。
- 方向指示器(ウインカー)左、右
- エンジンチェックランプ(エンジン警告灯)
- シートベルト警告灯
- ハイビーム(走行用前照灯)インジケーター
- ブレーキ警告灯
- 充電警告灯(チャージインジケーター)
また、エンジンが始動した後もエンジンチェックランプや赤色の警告灯(充電警告灯やSRS警告灯など)が消えずに点灯している場合は、ユーザー車検は通りません。
室内の点検は以上となります。おつかれさまでした。
次は足廻りの点検です!
ユーザー車検「足廻り点検編」
一般ユーザーの方には点検が困難な項目がある、足廻り点検です。
自動車の分解整備に該当する、専門的な技術や知識を要する項目があります。
- かじ取り車輪 ホイールアライメント
前輪のサイドスリップのことです。
ダウンサスや車高調などを組んで、サイドスリップを調整していない場合はおそらく調整が必要です。
足廻りは特に何も変えていない場合は、あまり落ちません。
これは検査ラインで測定されます。 - ショックアブソーバ
損傷・オイル漏れ
オイルが漏れ出ていなければOKです。 - サスペンション
取付部、連結部の緩み、ガタ、損傷
ガタや緩みがあれば異音や不自然な挙動を示すため、それらがなければ問題ありません。
- ブレーキ・ディスク・ドラム
ブレーキキャリパーやブレーキドラムを取り外す作業は、分解整備に該当します。
この作業を行うには専門的な技術や知識が必要です。
安全上非常に重要な部品であり、ご自身での作業が困難な場合、この部分の点検は車屋さんに依頼してください。
命に関わることですのでこの点検項目は絶対に省略しないでください。 - ディスクとパッドのすき間
タイヤが路面に接していない状態かつギアはN(ニュートラル)でタイヤを回してみます。タイヤが軽く回ればOKです。重くて回りにくい場合・全く回らない場合は修理が必要です。 - ブレーキパッドの摩耗
ディスクブレーキの場合、ブレーキパッドは新品時10mm程度で、3mmが一般的に使用限度です。
パッドの残量はキャリパーのすき間などから確認します。見えない場合や交換が必要な場合等は車屋さんに点検を依頼するなどしましょう。
- ディスクの摩耗・損傷
ディスクローターが異常摩耗していないか、腐食してボロボロになっていないかなど点検してください。
- ドラムとライニングのすき間
ディスクとパッドのすき間同様の点検です。
後輪もディスクブレーキの場合は省略です。 - ブレーキシューの摺動部分、ライニングの摩耗・ドラムの摩耗・損傷
分解整備に該当しますので、点検方法の記載は差し控えさせていただきます。 - ブレーキマスターシリンダ・ホイールシリンダ・ディスクキャリパの液漏れ・機能、摩耗、損傷
マスターシリンダとはブレーキのリザーブタンクがついている部分の部品です。
MT車でクラッチマスターシリンダが付いている場合は、一緒に液漏れがないか点検してください。
機能、摩耗、損傷はブレーキの効き具合やクラッチの切れ具合に問題がなければOKです。
ホイールシリンダはドラムブレーキ、ディスクキャリパはディスクブレーキのみです。
ディスクブレーキの場合はキャリパーからブレーキフルードの漏れがないか点検してください。
ホイールシリンダの点検は分解整備に該当します。 - ホイール
タイヤの残り溝の深さ・異状な摩耗
タイヤの溝は一番少ないところで1.6mm以上なくてはなりません。
スリップサインが出ている場合は1.6mm未満になっている可能性があります。
また、タイヤに細かいヒビが大量に入っている場合は検査員の判断でユーザー車検に通らない可能性があります。 - ボルトナットの緩み
ホイールナットがしっかりと締め付けられていればOKです。
ユーザー車検ではホイールナットの打音検査を行うので、ホイールカバーでホイールナットが隠れてしまう場合はホイールカバーを外して検査に行かなくてはなりません。 - フロント・リアホイールベアリングのガタ
ガタがある場合は30~40km/h以上の速度域からゴーーーといううなり音がするようになり、車速が上がるに従って音や振動が大きくなります。
うなり音がする場合は早急に修理が必要です。
足廻りの点検は以上となります。おつかれさまでした。
次は下廻り・外廻りの点検です!
ユーザー車検「下廻り・外回り点検編」
ジャッキアップして車の下に入る必要がある作業となります。
本来はリフトアップが望ましいです。
ご自分での作業が困難であれば足廻り点検とともに車屋さんに依頼されることをおすすめします。
- エンジンオイルの漏れ
エンジン外周を見回してオイル漏れがないかどうか点検します。
特に漏れやすいのはヘッドカバーガスケットやオイルフィルタのガスケットからです。
オイルフィルタのガスケットから漏れている場合はオイルフィルタを増し締めするか交換します。 - ステアリングギアボックスの取付けの緩み
ギアボックスを手でつかんで揺するなどして動かなければOKです。
ラックブーツも切れていないか点検します。
- ステアリングロッド・アームの類の緩み、ガタ、損傷
タイヤの左右をつかんで操舵時にタイヤが動く方向へ軽く揺すります。
大きなガタがなければOKです。 - ボールジョイントのダストブーツの亀裂・損傷
ブーツは亀裂ならセーフの場合が多いですが、裂けてグリスが出ている場合、ユーザー車検は通りません。
水や砂などが入ってしまうとボールジョイントにも大ダメージを与えてしまうため早急に修理が必要です。
ラックブーツはハンドルを据え切りにして伸びきった状態にすると点検が容易です。
- トランスミッション・トランスファオイル漏れ、量
オイルが漏れていなければ量は点検せず良好として構いません。■ ATフルード、CVTフルード、ミッションオイルの交換時期の目安 - プロペラシャフト・ドライブシャフト連結部の緩み
プロペラシャフトをつかんで揺すってしっかり取り付けられていること、損傷がないことを点検します。 - ドライブシャフトのユニバーサルジョイント部のダストブーツの亀裂・損傷
ドライブシャフトのブーツは裂けたり穴が開いたりしてグリス出ていなければOKです。
小さい穴であれば瞬間接着剤で埋めたりくっつけてしまったりします。
ドライブシャフトブーツはドライブシャフト1本につき2カ所あります。
- デファレンシャルオイルの漏れ・量
ミッションケースやデファレンシャルケースのオイル漏れを点検します。
オイルが漏れていなければ量の点検は省略して良好として構いません。 - ブレーキのロッド・ケーブル類の緩み、ガタ、損傷
ブレーキの作動に問題がなければOKです。 - ブレーキホース・パイプもの漏れ、損傷、取付状態
ブレーキホースは安全のため10年または10万キロ程度ごとの定期交換が推奨されます。
ブレーキパイプはひどく腐食している場合などは交換が推奨されます。
しかしながらブレーキフルードの漏れがなければユーザー車検は通ります。 - エキゾーストパイプ・マフラーの取付部の緩み、損傷・マフラーの機能
排気漏れがないこと、マフラーハンガーの溶接が疲労や腐食で取れていないことを点検します。微少な排気漏れであればマフラーパテで埋めても通ります。
- 熱害防止装置の遮熱板の取付部の緩み、損傷
ヒートプロテクターがしっかり取り付けられていることを確認します。
ヒートプロテクターの一部が外れたり壊れかけたりしている場合は一部または全てを壊して外してしまってもユーザー車検は通ります。 - フレーム・ボデーの緩み、損傷
フレームやボデーに穴あきや大きな腐食などがある場合はユーザー車検に通りません。
板金屋さんなどで修理してもらう必要があります。
これで、記録簿で指定された点検は終わりです。
では、最後に日常点検をしておきましょう!
日常点検
ユーザー車検を受ける皆さんは日頃から日常点検をされているかと思いますが、ユーザー車検を取るのでこの機会に今一度点検しましょう。
- エンジンオイルの量
オイルレベルゲージを抜いてエンジンオイルがEとFの中間以上にあることを確認します。
通常はFまで入っているのが望ましいです。■ エンジンオイルの交換は車検ごとにすれば良い?■ エンジンオイルの交換方法 - 灯火類
全てのバルブが点灯するか確認してください。
ブレーキランプは誰かに見てもらうか、ペダルが戻らないようにつっかえ棒をしたりおもりを置いたりして確認しましょう。
ハイマウントブレーキランプも切れていないか要チェックです。バルブが複数個ある場合は全て点灯しなければなりません。
照度にばらつきがあっても点灯すればOKです。 - 空気圧
空気圧が適正値よりも低いとサイドスリップでユーザー車検に落ちる原因となります。
高い分には問題ありません。 - ブレーキフルード(ブレーキオイル)の量
MINとMAXの中間以上にあるか確認してください。少ない場合は補充します。
指定されたDOT規格のものを補充します。こぼした場合は水で十分に洗い流さないと塗装を浸食します。
定期交換の消耗品ですので、できれば車検ごとの交換を推奨します。■ ブレーキフルード、入っていればいいと思っていませんか? - 冷却水の量
サブタンクまたはコンデンスタンク内の冷却水の量が適正か確認してください。
エンジンが冷えている時に水位がMINとMAXの中間程度であることが望ましいです。
長期間点検していない場合は、漏れがなくてもサブタンクが空になる場合があります。
その場合はエンジンが冷えている時にラジエータキャップを開けてラジエータにも水を補充します。■ 知ってますか?クーラントの交換時期の目安 - ウォッシャー液の量
冬場であれば凍結しないように希釈の限度を守って補充してください。
検査場でウォッシャーが凍結して出ない場合は、ウォッシャーが出るまでユーザー車検に合格しません。■ 知ってますか?ウォッシャー液の種類と効果 - ウォッシャーの噴射状態・位置
ウォッシャーが、ワイパーの払拭範囲に噴射しているか確認します。
一部のノズルが詰まっている場合はユーザー車検に通らない可能性があります。
ユーザー車検ではリアワイパーは点検しない場合があります。■ リアワイパーの故障や取り外しは車検に通る? - ワイパーの払拭状態
噴射したウォッシャーをかきとって良好な視界が確保できるか確認します。
良好な視界が確保出来ない場合はワイパーゴムの清掃、それでも改善しなければワイパーゴムやブレードの交換を行ってください。
ユーザー車検ではリアワイパーは点検しない場合があります。 - ホーン(クラクション)
音色が変化しないか、十分な音量が出るか点検します。■ 車のホーンの安全基準や交換方法
ユーザー車検に必要な書類や、その他調整など
皆さん、点検おつかれさまでした!
あとの調整は設備がないので残念ながらご自身では出来ません。
残りはヘッドライト調整・サイドスリップ調整です。
テスター屋さんの利用
運輸支局などの近くにそれらの調整をやってくれるテスター屋さんがあると思います。
調整は数分~15分程度なので、当日で大丈夫です。
ヘッドライト調整
現在の車両のヘッドライト(前照灯)は、下向き(すれ違い用前照灯)での検査となっており、以前の上向き(走行用前照灯)の検査に比べてとても合格しづらくなっています。
下向きで落ちた場合はそのあとすぐ上向きで検査してもらえますが、調整せずに下向きで合格する可能性は極めて低いです。
※フィット、フリード等の一部ホンダ車などは上向きの配光特性が一般とは異なるため、上向きでの検査はできない
サイドスリップ調整
サイドスリップを調整する際はハンドルのセンターを基準に合わせます。
ハンドルをどちらかに切らないとまっすぐ走らない場合は、どちらにどれくらいずれているか、大まかで良いので申告しましょう。
サイドスリップは足廻りをかまっていなければあまり落ちませんが、不安であれば測定してもらうと良いでしょう。
検査は同日内に限り3回までは追加料金なしで受験可能なので、テスター屋さんが近くにあればサイドスリップは落ちてから調整してもらいに行っても良いでしょう。
テスター屋さんで自賠責を一緒に切ってもらうと調整料金がお得になる場合もありますよ!
■ 車検のサイドスリップ検査とは?1発合格するためのポイント
ユーザー車検に必要な書類・予約
運輸支局などへ行く前に自分で用意が必要な書類
- 自動車検査証(車検証)
- 点検整備記録簿
- 自賠責
- 納税証明書
改造車などで触媒を社外品に交換した場合
- 触媒の性能試験書(必ず提示を求められる)
運輸支局などで用意できるもの
- 重量税印紙
- 検査手数料印紙または領収印
- 検査手数料印紙または領収印
各種書類や重量税・検査手数料の印紙などは当日現地で用意できますので、心配ありません。
納税証明書は提示の必要がない運輸支局などもありますが、所持している場合は持参します。
前年度今年度に関わらず自動車税の未払いがある場合はユーザー車検を受けられません。
では、車検を受ける準備ができたら次は予約です。
インターネットから運輸支局または軽自動車検査協会に検査の予約をしましょう。
無予約もユーザー車検の受験はできますが、混みあっている場合は受験することができない可能性があります。
予約したらあとはユーザー車検に行くだけです!
ついにユーザー車検の検査です!
重量税・検査手数料の印紙または領収印を購入して検査受付を済ませたら、検査ラインに並びます。
検査ラインは2WD用、2WD/4WD共通用で分かれている場合がありますので並ぶときは確認しましょう。
検査場では、検査員の指示で灯火類、ウォッシャーの噴射状態・フロントワイパーの払拭状態、ホーンの音量・音色を点検します。リアワイパーは点検しない場合もあります。
ホイールナットの打音検査も行われますのでホイールナットが見えるように、ホイールカバーは外しておきましょう。
エンジン型式と車台番号の確認もしますので、指示があったらボンネットを開けます。
ユーザー車検では、ユーザーがしっかりと点検しているという前提で検査されます。
下廻り検査では下から見える範囲は検査員がしっかりと点検します。
エンジンのアンダーカバーなどがついている場合でもそのままでOKです。
検査ラインに入る時は初めてなのでわからないという旨を検査員に伝えると丁寧に教えてくれます。
検査ラインの紹介
- サイドスリップテスタ
進入線に対して垂直方向に動く鉄板が左右1枚ずつ設置されています。
進入の際にスピードが速すぎたり、ハンドルを切ったり斜めに進入したりすると合格しない可能性があります。
必ず進入線に対してまっすぐにゆっくりと進入してください。■ 車検のサイドスリップ検査とは?1発合格するためのポイント - スピードメータテスタ兼ブレーキテスタ
スピードメータの測定ではゆっくりとスピードを上げていき、40km/hでパッシングします。
その後ブレーキの検査に移行します。フットブレーキとパーキングブレーキを検査します。
もしフットブレーキの制動力不足の場合は、Nレンジで4,000~5,000rpmくらいまでエンジンを吹かして一気にアクセルを離したあと、ブレーキを思い切り踏んでください。
アクセルを一気に離すのがポイントです。
また、アクセルを離した後すぐにブレーキを踏み込む必要はありません。
パーキングブレーキの検査はパーキングブレーキを一気に強くかけないと合格しない場合があります。 - ヘッドライトテスタ
乗車している場合は動かずに静かにしていましょう。
動くと光軸がぶれて合格しない可能性があります。 - 排気ガス検査
マフラーに検査機器のプローブを入れて測定を行います。
エンジンが十分に暖機されて触媒が温まっていないと合格しない場合があります。 - 下廻り検査
検査員が下廻りのボルト類をハンマーで打音検査します。
検査員から指示されたように自動車を操作します。
ブレーキをかけたりハンドルを揺すったりエンジンをかけたり止めたり簡単な指示です。
検査が終わったら
無事に全て合格すれば検査は終了です。
全て合格しなかった場合は限定自動車検査証を発行してもらい、不適合箇所を整備したあとに再度運輸支局へ持ち込むなどします。
全て合格した場合は受付に書類を提出して新しい車検証とステッカーを受け取ります。
車検証の記載内容に誤りがないかその場でよく確認してください。
これでユーザー車検は終わりです。
ユーザー車検を受験された皆様、大変おつかれさまでした!
このように説明するととても長いのですが、実際にやってみると意外とすぐに終わってしまうものです。
ユーザー車検に興味のある方は是非一度ご自分でやられてみてはいかがでしょうか。
(ライター:自動車整備士 SkyLight)
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