国産スポーツカーと言えば、あなたなら何を思い浮かべますか?
現在、国内のディーラーが取り扱っている新車のスポーツカーはとても少なく、極端に高額なものでは数千万円を超えるものも。
今から10年ほど前までは、どの自動車ディーラーでもスポーツカーをいくつかラインナップしていました。
しかし時代は移り変わり、流行はハイブリッドカー、低燃費のエコカーへと様変わりしてしまいました。
あわせて、道路交通法が年々厳しくなり、車体や車検の取り締まりも強化。
スポーツカーはこうした逆風に煽られ、次々と生産終了になっていきました。
トヨタはスープラ、カローラレビン、スプリンタートレノ、ソアラ、チェイサー、マークⅡ、アルテッツァなど。
ホンダはシビック、インテグラ、NSX、ビート、アコード、CR-Z、S2000など。もちろん後継車として車名を変えて新型が販売されているものも中にはありますが、名前を挙げたほとんどが廃盤となっている名車ばかりです。
特に日産自動車がかつて販売していたスポーツカーは、廃盤になってから10年以上経った今でも若者を中心に人気を集めています。
スカイライン、シルビア、フェアレディZ、そして180SX。
スカイラインやシルビアの人気の陰に、180SXというスポーツカーがあったことをみなさんご存知ですか?
今回は隠れた?いや、間違いなく名車!な180SXについて紹介いたします。
【http://history.nissan.co.jp/】
180SXってどんな車?
180SX(ワンエイティエスエックス)は日産自動車がかつて販売していたスポーツカーで、シルビアの姉妹車種として発売されました。
ボディベースはシルビアをもとにして、当時流行だったリトラクタブルヘッドライトにクーペボディというスタイルで人気を博しました。
名前となっている「180(ワンエイティ)」は、初期モデルに搭載されたエンジンCA18DET(1800㏄のターボエンジン)から名付けられています。
180SXは何かに後継されるわけでもなく、1モデルで惜しまれつつも生産を終了したスポーツカーです。
180SX(型式RS13)が登場したのは、1989年。
【goo-net.com】
前年(1988年)に発売されたS13シルビアの姉妹車種として発売されました。
当時のスペシャリティカー市場では、ホンダ プレリュードが独走状態。
S13シルビアは30万台というヒットでプレリュードから王座を奪いました。
その勢いのままニッサンは姉妹車となる180SXを発表。180SXは1989年から1998年までの9年間生産され、その間に2度のマイナーチェンジをしました。
180SXは9年の販売期間を通して、同じボディスタイルで一貫しました。
リトラクタブルヘッドライトに、総ガラスのハッチバック、20年近く経った今でも、古さを感じることのないスタイルです。
前期モデルではCA18DET型ターボエンジンを搭載。
前期の見分け方は、ニッサンのエンブレムにもなっている翼の形をイメージしたダミーのフロントグリルが付いていること、運転席、助手席のシートがヘッドレスト一体型になっていること、フォグランプの形状、などがあります。
グレードは、TypeⅠ、TypeⅡ、TypeⅢの3つが設定されました。
その中でもTypeⅠは競技用のベース車両を意識していたためにオーディオのスピーカーや、パワーウィンドウが付いていないなど“攻めた”グレードでした。
3年の販売期間を経て、中期モデルへマイナーチェンジ
最初のマイナーチェンジでは、1800㏄のCA18DET型エンジンから、2000㏄のSR20DET型エンジンへと変更。
クルマ好きの間では「SR(エスアール)」と言えば、このシルビア、180SXのエンジンをさしています。
【goo-net.com】
排気量アップに伴って、これまでRS13だった型式も、RPS13へ。
見た目にも、ダミーのフロントグリルを廃止し、ボンネットからダイレクトにバンパーへつながるスタイルに。
この中期ではグレードの名称も変更されて、TypeⅠは廃止、TypeⅡはTypeR、TypeⅢはTypeXと改名されました。
中期モデルは5年の販売期間をもって生産終了。
1996年、180SXの最終モデルとなる後期モデルが発売されました。
2度目のマイナーチェンジでは、エンジンなどはそのままSR20DETを継承、フロントはフォグランプの形状をこれまでは横長だったものをやや正方形に、リアのテールランプをフラットなものから丸型コンビネーションランプに、リアウィングも大胆に変更し、生産終了までの2年間販売されました。
【goo-net.com】
シルビア、180SXともに、とてつもなく人気のある車種だったにもかかわらず、時代は次第にエコを意識し始め、ハイオクかつ高燃費のこうしたスポーツカーは浮いた存在になっていきました。
あわせて、こうしたスポーツカーオーナーの乱暴な運転や、公道においてのマナーの悪さも目立つようになり、だんだんとスポーツカーの居場所が失われていったように思います。
任意の自動車保険の料金は毎年、前年のその車種の事故率によって決められ、変更されますが、180SXの保険料はどの保険会社もかなり高額だったと記憶しています。
最近では、趣味性の高い車は嫌煙されがちで、いかに燃費がよくて、スタイリッシュかが問われる時代ですが、180SXはノーマルで乗っているオーナーさんのほうが少ないのではないかと思うほど、みんながみんな改造やドレスアップをしていました。
見た目にはエアロから始まり、アルミホイールの社外品への交換。
何といってもニッサンの素晴らしく面白いところは、パーツに互換性のあるところだと思います。
型式が同じ、S13やS14、S15のパーツ、さらにはスカイラインのパーツまでもが180SXに取り付けが可能なのです(パーツによっては加工が必要)。
実は、私も3台乗り継ぐほど180SXに魅了された一人です。
最初に180SXに出会ったのは19歳の免許を取って1年経った頃、中期モデルの180SXを知人から譲っていただきました。
もちろんマニュアル車です。
ガンメタのボディカラーにフルエアロ、社外アルミを履いた“いかにも”な出来栄えの180SXでした。
あまり細かい仕様は覚えてはいませんが、2000㏄のエンジンは、女性の私にも扱いやすく、非常に運転しやすい車でした。
180SX、シルビアが今でも若者に人気があるのは、ドリフト走行に向いているうえ、チューニングのしやすさ、パーツの豊富さからです。
FR(フロントエンジン、リアドライブ)の180SX、シルビア、スカイライン、AE86などのスポーツカーはリアのタイヤが滑りだしやすく、ドリフトするのに操作しやすい設計になっていました。
特に180SXはタイミングベルトではなく、タイミングチェーンだったので交換も必要ありませんでしたし、その分エンジンもタフだったように思います。
昔は友人みんながこうした愛車に乗って峠道で夜な夜なドリフト走行の練習をしたものですが、現在は取り締まりも厳しくて、ドリフトをしたいのならサーキットへ出向かなければいけません。
【著作者: Keeedo (改変 gatag.net)】
みんなで“遊んだ”田舎の山道は、今では減速帯やかまぼこと呼ばれる反射板の付いた突起物が車道真ん中に点々と鎮座していますので、そんな道路でドリフト走行しようものならば、タイヤがバーストするというオマケがついてきます。
道路整備、道交法整備もいいことですが、こうしたスポーツカーを街中で見かけなくなってしまったのは本当に寂しいものですね。
話は戻って、私が初めて乗った180SXは確か12万キロ近かったと思うのですが、すこぶる快調で、不具合もなく、快適なカーライフをともにしていたのですが、ある日信号待ちで近所のおばちゃんにカマを掘られるという思わぬアクシデントに遭い、泣く泣く代替えを決意しました。
まさかの公道でもらい事故…友人にしばらく笑われました。
気持ちを切り替えて次にお嫁に来たのは、一目ぼれした後期の180SXでした。
2代目180SXは、かなり本気仕様。
180SXにシルビアS15スペックRエンジンを搭載した、完全に「宝の持ち腐れ」状態。
SR乗りには有名な話ですが、シルビアS15のミッションは6速。
この6速ミッションは不具合が出やすいと評判でしたので、あえてミッションはそのまま5速のものを搭載。
燃料ポンプにはスカイラインGT-Rのものに交換しました。
そこに定番チューンではありますが、車高調、LSD、社外マフラーなどを投入。
それはそれは大事にしました。
180SXあるあるなのですが、ハッチバックが総ガラスのため、かなりの重量なのです。
クーペラインでかっこいいのですが、このガラスの重さがあるために、ドリフトのような横滑りでボディにGがかかるとボディに歪みが起こることもよく耳にしました。
そのため、180SXオーナーのほとんどがロールバーを組みボディを補強していました。
ボディが歪むと、リアのハッチバック内で雨漏りがするなんて話も聞きました。
ロールバーほど大げさなものではなくても、エンジンルームとトランクにタワーバーを組むのは絶対だったような気がします。
最後の180SXを手放してから6年以上経ちますが、今こうしてコラムを書いていると懐かしい思いでいっぱいです。
あの頃は若かったですし、街中にも本当に楽しい車がたくさん走っていました。
今はどこを見てもプ○ウスばかりで、目を引く車にあまり出会えません。
180SXのおすすめポイントとは?
180SXのおすすめポイントは、廃盤から20年以上たった今でも、古さを感じさせないデザインと、やっぱり乗って走って楽しいところではないでしょうか。
スポーツカーであることを除けば、180SXも2000㏄の普通車ですからもちろんオートマチック設定もあります。
ですが、この手の車を欲しがる人はマニュアル車を希望するはずです。
ノーマルの車高でも、やや低めに造られていますから、地面に吸い付くような走りも楽しんでほしいポイントです。
SR20DETエンジンは、低回転から高回転への“立ち上がり”がとてもパワフルなエンジンです。
シビックやインテグラのような高回転VTECゾーンからがおもしろいエンジンとはまた一味違ったトルクあるエンジンが回る感触を感じることのできる車ではないかな、と思います。
だから私のようなドリフトカー初心者でも扱いやすいと感じたポイントはそこかもしれません。
中古車価格はピンキリですが、欲を言わなければ比較的手ごろな価格なので、免許を取りたての若い子でも購入しやすいのではないでしょうか。
また、パーツの互換性が高いと書きましたが、特に姉妹車種であるシルビアとは相性がよく、顔面移植も簡単にできてしまいます。
一時期、180SXにシルビアの顔面を移植した「シルエイティ」や、シルビアに180SXの顔面を移植した「ワンビア」なんていうニコイチ車両も流行しました。
このワードに懐かしさを感じたあなたはきっと私と同世代ですね!
180SXのマイナスポイントとは?
「維持費が高い」この一言です。
ガソリンはハイオクが基本ですし、任意保険に入ろうと思うと等級によっては結構高額です。
ハイオクなうえに燃費も“高燃費”なので、ガソリン代もバカにはなりません。
勤務先の上司に「100円玉ばらまいて走っているようなもんだな」と例えられた時には、うまいこというなぁと笑ってしまいました。
自動車税も10年以上経過している車種なので10%増額、これから乗りたい人にとって自動車税は増額されていくばかりです。
20年近く前に廃盤になっている車種ですから、もちろん中古での購入になります。
ですが、どうしても車種が車種なだけに「酷使されている」可能性があることを頭において、購入してのほしいのです。
たとえ走行距離が5万キロでも、街乗り以外でも使用されていた可能性はないとは言えません。
エンジンに負担のかかる走り方をしていたかもしれないし、車体に歪みのあるものかもしれない。
購入して3ヶ月でエンジンパンクしてしまう可能性だってあるということ。
どんな中古車にも言えることかもしれませんが、こうしたスポーツカーではさらに確率が高くなります。
特に旧車になりますから、イマドキの車とは造りや装備が全く違います。
新しい車と比較すれば、やはり故障率も高いでしょう。その都度、愛情をもってメンテナンス、手をかけてあげなければならないということを理解したうえで購入に踏み切ってほしい車です。
そんな180SXの中古車相場とは?
正直、修復歴のない極上中古車はかなり少ないかと思われます。ではどんな中古車が出回っているのでしょうか。
1996年(平成8年)17.2万キロ・2000㏄・中期・MT・修復歴無し→64万円
1998年(平成10年)9.4万キロ・2000㏄・後期・AT・修復歴無し→68万円
1997年(平成9年)15.5万キロ・2000㏄・後期・MT・修復歴無し→95万円
1996年(平成8年)1.2万キロ・2000㏄・後期・MT・修復歴無し→—-万円
修復歴のないものを紹介しましたが、全国でも台数は極めて少ないです。
そして状態の良いものはもっと少ないですね。
15万キロで95万円とか、びっくりしますね。それだけ、希少価値の高い車になってしまったということでしょうか。
180SXについて若干(かなり)私情も入りつつ紹介しましたが、本当に素敵な車だと思います。
「走ることの楽しさ」「運転することのおもしろさ」を教えてくれる1台です。
私もアラサーになってしまった今、180SXに乗りたいかと聞かれると、大人げなくて恥ずかしい気もしますが、こうしてコラムを書かせていただいていると少しあの頃に戻ったようで気持ちがウズウズしたりもしました。
読んでくださっているあなたが、この気持ちに同感してくださると嬉しいのですが…
今、180SXやシルビアに乗っている世代の人は、きっと若くて車に乗ることが楽しい時期だと思います。
自動車は、自分の鏡のような存在です。
若いうちはただ楽しみたい、一緒に走ることのできる相棒のような感覚を愛車に求めます。
年を重ねると、体裁や建前、見栄なんかが混じってきて大人の階段を昇ります。
そうするといつまでもこうした中堅スポーツカーには乗っていられないわけで…そのうち家庭を持つと趣味性より実用性が勝って、ミニバンなんかに乗るようになってしまって…
私もそうでした。
20歳のころは「生涯マニュアル車に乗る」と高々に宣言していたものです。
180SXを二台乗り継ぎ、22歳になった頃、私も大人の階段を昇っていました。
次に選んだのはニッサン シーマでした。22歳にして初めてオートマチックに乗りました。
でも、物足りないのです。
もちろんシーマはかっこいい車でしたし、満足はしていましたが、走る楽しさは得られませんでした。
そこで私が踏み切ったのはセカンドカーに再び180SXを購入という無謀な人生プラン。
25歳までシーマと180SXを維持し続けました。
そんな私も結婚し、レクサスLSを購入。
しかし子供が生まれて今ではトヨタ アルファード。
便利ですが、楽しくない。
これが本音です。
きっと私のような人、たくさんいると思うのです。
ですが、こんな噂を耳にしました。
シルビア・180SXの後継車種が販売?
「シルビア・180SXの後継車種が販売される」と。
これが本当ならばスポーツカーファンにはたまらなく嬉しい知らせです。
エコカーブームに押され、どの自動車ディーラーも生産終了してしまったスポーツカーたち。
2012年にトヨタ自動車が名車カローラレビン・スプリンタートレノAE86の後継車種「86(ハチロク)」を発売しました(スバルからはBRZという車名での販売)。
マニュアル車なんて、時代に見合っていないかもしれません。
100円玉をばらまいていると笑われるかもしれません。
クーペなんて室内狭くて実用的じゃないと奥さんに叱られるかもしれません。でも「楽しさ」は、そこにしかないと思います。
現在、車がただの移動手段となっていることを寂しく思っている人も少なくはないと思います。
シルビア・180SXの後継車は通称「S16(エスイチロク」。シルビアがS15を最後に生産終了してから今年で14年経ちます。
もしもこの噂が本当ならば、180SXが再び注目される日も近いのかもしれません。
シルビア・180SX世代の私たちには、気になるS16。
2017年に発売されるのではないかと予想されていますが、果たしてその姿はいつ見れるのか、今後もニッサンから目が離せませんね。
(ライター:中古車査定士ryo)
コメント
記事、興味深く読ませて頂きました。女性のオーナーは珍しいですね。
私のクルマは1997年11月に購入したタイプGという、
最後に追加されたモデルです。
NAエンジンでレギュラーガソリン仕様です。
140PS、18.2kgです。
フルノーマルで乗っていますが、ブレーキホースがメーカー在庫になく、
社外品の普通のものになっています。
エンジンが「はずれ」でした。普通に乗っていたのに、
2万キロくらいで部品の破損とそれに伴い、シリンダーにダメージが
発生し、交換する羽目になってしまいました。
中古のベアエンジンをディーラーに探してもらい、25万の出費となりました。
それ以外ではトラブルもなく、順調です。
昨年の11月で丸20年経ちましたが、NAで正解だったと思います。
色はシルバーです。
エアコンの効きが当初から若干弱いのが気になりますが、寒冷地仕様ですので、
バッテリーが大きく、暖房は強力ですので、東京とはいえ、冬場は快適です。
ドアミラーヒーターが装備されていますので、水滴の乾燥もできるので、
便利です。
20年も経ちましたが、走行距離は3万キロくらいです。
殆どチョイノリ(買い物など)ですので、こんなもんです。
さすがに塗装のダメージがでてきたので、ボンネットとルーフを、
市販のスプレー塗料で2日かけて塗りましたが、輝きはありません。
(クリア塗装もしたんですけどね。)
これ以上の劣化によるサビ防止が目的です。
お金が出来たら、業者にペイントしてもらう予定です。
因みに、その前は昭和53年のサニークーペ5速赤に乗っていました。
サニー最後の後輪駆動です。おまけにEGI仕様で結構早かったですね。
このころのクルマはパワーステアリングがないので、ハンドルは結構
重かったですね。
エンジンはOHVでしたが、レッドゾーンが6750rpmでした。
とにかくよく回るエンジンでした。
リミッターがないので、180キロ以上出せました。
こちらもほぼノーマルでした。ダンパーだけニスモに替えていました。
シフトパターンがヒューランドタイプで、
左上がR、左下が1速、2・3速が真ん中で、右上が4速、右下が5速
という一般車にはないもので、購入当初は練習が必要でした。
が、慣れると真ん中が2・3速なので、街中では大変便利で、
今でも、このパターンのマニュアル車が欲しいと思っています。