埼玉県秩父地方と言えば、四季折々の自然や温泉、文化財、牧場やテーマパークなどの観光施設なども盛りだくさんの首都圏では屈指の日帰り観光エリアです。
都心から日帰りでドライブやツーリングが可能でありながら、都会の喧騒から逃れてほっと一息つける場所でもあり、また、地理的には群馬県・長野県・山梨県の3県に接しており、八ヶ岳周辺のワインディングや山梨・群馬の観光地へのアクセスも良好です。
■ 国道299号線の十石峠を長野側から秩父方面へドライブ~所要時間は約35分
私自身は秩父への日帰りドライブや他所への通過点として秩父方面に出かける機会が増えているのですが、冬の間はただの置物と化してバッテリー上がりにも見舞われたコペン号をフル活用すべく、2018年の春~秋にかけては今まで以上に秩父地方へのドライブの頻度を上げつつ、おすすめのドライブコースや観光スポットなどをご紹介して行こうと考えてます。(やるやる詐欺にならないように頑張ります)
なお、観光系の大手キュレーションメディアでは万人向けで幅広い無難な観光情報を掲載している事が多いですが、LaBoon!!は車に特化したサイトで、私自身もただ車を運転するだけで楽しいと感じるタイプの人間ですし、元々はアミューズメント施設などよりも、事前に充分な下調べを行った上で史跡や文化財などを巡るのが趣味でした。
従って、あまり一般受けしない内容になる可能性もあるのですが、一人でもドライブやツーリングを楽しめちゃう系の方に幾分興味を抱いて頂ける部分があれば良いかな?と考えています。
また、今回は秩父のご当地B級グルメとして全国的に有名な「わらじかつ丼」についての紹介記事になりますが、通常の食レポとは異なり、単純に味がどうこうという部分よりも「わらじかつ丼」が有名になった背景から見た、マーケター的な視点で各店舗の運営方針などを踏まえた上で、おすすめのポイントを紹介します。(マーケター視点なので他所では書けないような辛口コメントもあり)
秩父のわらじカツ丼の歴史
現在では全国的に知名度が上がっている秩父小鹿野町のわらじカツ丼の歴史は、大正5年に創業した「安田屋」が発祥の起源であると言われています。
どうやら最近では2014年に放映された吉高由里子さん出演の西武鉄道のCMで認知度が高まっているようですが、わらじカツ丼がブームになり始めたのは10年~20年単位の昔の話だそうです。
この辺りは現地の人に聞いても、いつからなのか良く分かりませんでした。
少なくとも、元祖である「安田屋」の2号店は30年前から存在し、他のわらじカツ丼のお店も10~20年前に開業しているようですので、20~30年前からブームになり始めたと見ても良いかと考えています。
最近ではテレビなどのメディアにも採りあげられている事もあり、ここ3~4年で知名度が急上昇しているようです。
「わらじカツ丼」おすすめ3選
最初にお断りしておきますが、秩父エリアにはわらじカツが食べられるお店が少なくとも10店舗程度はあるかと思います。
ここで取りあげている3つのお店は、その他の全てのお店を食べ歩いて選定したのではなく、他メディアなどで有名店として紹介されている為に、取っ掛かりとして訪れてみたに過ぎませんので、今後の状況に応じて掲載店舗は増やしていく予定です。
元祖わらじカツ「安田屋」小鹿野店
「安田屋」小鹿野店は秩父郡小鹿野町の国道299号線と並走する県道209号線から更に裏路地に入ったところにあります。(かなり分かりにくいところにあります)
安田屋:〒368-0105 埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野392
秩父のわらじカツ丼の歴史は「安田屋」小鹿野店から始まったと言われていますが、「元祖わらじカツ」という事でメディアへの露出度も高い事から、おそらく人気No.1のわらじカツ屋さんである事は間違いないでしょう。
駐車場は店舗脇に数台分ありますが、数10m離れた位置に小鹿野町営の駐車場があり、こちらには「観光客・買い物客専用」と書かれていますので、安田屋を利用する目的であればこちらの駐車場に停めても問題ないでしょう。
安田屋のわらじカツ丼の特徴は、とにかく「サッパリ・あっさり系」だと感じました。
味や食感については感じ方に個人差がありますので、参考程度と捉えて頂きたいのですが、私自身は肉汁たっぷりで脂身の多いこってり系が好きですし、B級グルメと言えばどちらかというとこってり系を連想しがちかと思います。
胃腸に優しいというメリットはありそうですが、こってり系を期待して行くと肩透かしを食らったような気分になるかも知れません。
先程、人気No.1と述べていますが、その要因はやはり「元祖」という話題性により、メディアなどへの露出度が高い点に集約されていると感じました。
特に接客面については「当店の辞書に接客という文字はない」という言葉が最もしっくり当てはまるように思え、入店の際や注文を取る際にも客への「あいさつ」などは皆無で、戦前の配給所での食料の配給を連想してしまいます。
100%家族経営なのか、従業員を雇用しているのかは不明ですが「元祖わらじカツ」という名前だけで商売をしているお店だというのが私の評価です。
たまたま私が訪れた日が、接客をしない方が店頭に出ていただけかも知れませんが、店舗経営の方針として少しでも「接客」というものを重視していれば、ああはならないだろう…というのが私の感想です。(繁盛はしているので、経営状況は悪くないのでしょう)
良く言えば歴史と伝統のある老舗、悪く言えば先行者メリットだけで商売をしている工夫のないお店、と言ったところでしょう。
従って「安田屋」小鹿野店がおすすめなのは、話題性の高い「元祖わらじカツ丼」を味わってみたい、こってり系よりもサッパリ系が好みである、接客なんかどうでも良い、と考えている方となります。
実のところ、私自身は自分が店を選ぶ際には接客はほとんど気にしないのですが、肝心の食感や味も好みではなかったので、残念ながらこちらのお店は一度だけの訪問に終わっています。
「三峯山 大島屋」
「三峯山 大島屋」は、吉高由里子さん出演の西武鉄道CM「秩父さんぽ旅2014 秋冬編」の撮影に使用されたお店で、関東のパワースポットとして有名な三峯神社正参道の三つ柱鳥居前にあります。
大島屋:〒369-1902 埼玉県秩父市三峰 三峰297−2
駐車場については個別にはありませんので、510円の三峯神社駐車場を使用する事になります。
こちらのお店は「わらじカツ」を専門的に提供している「わらじカツ屋さん」ではなく、その他のメニューやお土産なども販売している「道の駅」的な運営スタイルのお店です。
こちらのお店の人気の要因は、数あるわらじカツ屋さんの中でも「三峯神社」の正参道前にあるという恵まれたロケーションと、「三峯神社」と合わせて西武鉄道のCMの撮影場所として使用された、という2つのポイントかと思います。
ただし、このお店が「三峯神社」の正参道前ではない場所に立地していたとしたら、CMで撮影される事もなかったのではないかと考えられますので、やはりロケーションに恵まれているという事が人気の最大の要因ではないかと考えられます。
味や食感についてはこってり系とは違いますが、比較的B級グルメっぽいサクサクした所感と濃いめの味付けが特徴的だと感じました。
ざっくり言うと名古屋発の大衆居酒屋「世界の山ちゃん」で出てきそうな揚げ物類のイメージが近いと思います。
また、食感については駄菓子のビッグとんかつソースを彷彿とさせる、衣のサクサク感が印象的です。
いわゆる駄菓子系、おつまみ系の味と食感であるという感想を持ちましたが、私の個人の好みに近いものではありました。
先程、「三峯山 大島屋」の人気の要因はロケーションによるものが大部分であると述べていますが、三峯神社自体が秩父の観光エリアのはずれにあり、山梨に通じる「国道140号 彩甲斐街道」から峠道を20分ほど登った場所である事から、秩父に行ったついでに「大島屋」に寄る、というルートは少しハードルが高くなり、あくまでも三峯神社の訪問を主体に、ついでに大島屋でわらじカツを食べる、というコースの組み方がおすすめですね。
接客面などに関しては特にこれと言った特徴はなく、高速道路のSAのフードコートや道の駅の食堂などと同様です。(特に工夫もなければ悪いと感じる点もなかった)
最も工夫と努力が見られるのが「メガわらじカツ丼」で有名な「東大門」
こちらのお店は「わらじカツ丼」の専門店ではなく、精肉店が運営している焼き肉屋なのですが、上手く「わらじカツ丼」ブームに乗っかって人気となってるお店です。
私が最も好みなのがこちらのお店で、最近1年の間に4回ほど足を運んでいます。(笑)
大島屋:〒368-0105 埼玉県秩父郡秩父郡小鹿野町小鹿野 小鹿野2806
小鹿野でわらじカツ丼を出しているお店は、「安田屋」から始まったブームに乗っかってわらじカツを扱い始めたところが多いようですが、「東大門」では巨大なカツが2枚乗っている「メガわらじかつ丼」が話題のメニューとなっています。
TBSの「王様のブランチ」や「News every」などのTV番組で紹介されたこともあり、週末には入店待ちの渋滞が出来るほどの人気だそうです。(平日はそこまで混雑はしていないがガラガラでもない)
店内には「メガわらじかつ丼」を完食したお客さんの記念撮影の写真がボードを埋め尽くしています。
ただし、この「メガわらじかつ丼」はカテゴリー的には大食いの部類に含まれるくらいのボリュームで、総重量が1kgもありますので、腕(腹)に自信がある方以外にはちょっと厳しいかも知れません。(残った分はテイクアウト可能ですので、夕食に残りを食べるという前提でチャレンジするのも良いとは思います)
私は東大門でメガわらじカツ、わらじカツ、またぎ豚ぶりの3種類のメニューを試したことがありますが、メガわらじカツと普通のわらじカツは、カツの大きさとご飯の量には圧倒的な差はあるものの、肉質や食感などは同様で他のお店と比べて脂身が多く柔らかくジューシーな味わいであるとの感想を持っています。
やはり、精肉店直営ですので肉質が良いのでしょうか。
因みに最初は「わらじかつ丼」よりも「またぎ豚ぶり」の方に個人的な興味が強かったのですが(脂身が大好きなので)、こちらの方は事前の印象通り肉質が柔らかく脂身も適度に使われていますので、コッテリ系が好きな人なら誰でも美味しいと感じるでしょう。
東大門はわらじカツ屋としては後発ではあるものの
私が「東大門」を訪れたのは3月中旬の月曜日でしたが、平日にしてはお店にお客さんが多いという印象を受けました。
客層を見ると、ほとんどがドライブやバイクのツーリングでわざわざ「わらじかつ丼」を食べに「東大門」にやって来たという印象です。
秩父に来たついでに「わらじかつ丼」を食べた…のではなく、「わらじかつ丼」を食べる為に秩父に来た人が多いようです。
コピーライターが考えたようなネーミングセンス
商品やサービスを売り出すには、人の注意を引き付けるようなネーミングが不可欠です。
特に競合する似たようなサービスや商品がたくさんある場合には、商品そのものでの差別化よりもネーミングと打ち出し方による差別化の方が重要になります。
「東大門」には「わらじカツ屋」としては後発である事、ロケーションが微妙である事、などのハンデがありますが、「メガわらじかつ丼」という企画とネーミングセンスで話題を呼んで人気店となっているように見受けられます。
他店に比べてロケーションや歴史で劣るところですが、肉屋である事の強みと、ネーミングセンスや企画力で対抗しているという印象ですね。
複数の飲食店を家族で経営しているようなので接客は良い
「東大門」は併設されている居酒屋と経営元が同じであるそうで、家族経営であるかどうかは確認した訳では無いので不明ではありますが、従業員同士の会話を聞いていると家族経営っぽい雰囲気ではあります。
精肉店やその他の飲食店など、複数のお店を運営しているようですので、ノウハウの蓄積があるのでしょうが、接客面では非常に積極的で、お客が少ない時はお店のおばちゃんに話し掛けると延々とお店のセールストークをして下さいます。(笑)
まあ、こう言った飲食店であれば普通の事かも知れませんが…。
こってり系が好きな人におすすめ
私は他の2店舗と比べると東大門のわらじカツが一番好みですので、年に4回も立ち寄ってしまったのですが、味や食感については個人差がありますし、こってりが苦手な方もいるかと思います。
こってり・ガッツリ系が好きな方は「東大門」、サッパリ系なら「安田屋」がおすすめになるかと思いますね。(主観なので異論はあるでしょう)
「お食事処 ななたき」
「お食事処 ななたき」は、小鹿野町の道の駅「両神温泉 薬師の湯」のある、県道37号線から横道に入って数百mのところにある定食屋さんです。
こちらのお店は丼物・麺類・定食など、メニューが豊富な定食屋さんで、周辺の会社勤めの方が毎日利用しているような定食屋さんのイメージです。
訪問した当日も、団体のサラリーマンの方が目立ち、わらじカツ丼目当てのツーリング客は少な目でした。(平日に訪問したからかも知れないが)
このお店の名物メニューは、実はわらじカツ丼ではなく「ジャンボ唐揚げ」だったりしますので、わらじカツ丼は秩父エリアで話題性が強く、折角なのでついでに取り扱っているという位置付けのようですね。
ジャンボ唐揚げについては大振りの鶏の胸肉の唐揚げが5つ載っており、かなりボリューミーでジューシーな肉汁があふれ出るこってりガッツリ系ですが、味付けは薄目で個人的にはやや物足りなさを感じました。
わらじカツ丼の方は肉に脂身がほとんどなく、良く言えばサッパリですが、こってり系が大好きな私の好みからは大きく外れています。
わらじカツ目当てでは再訪しようとは思わないですが、メニューが豊富でどれも無難な味付けになっているような印象を受けましたので、私が近くの会社に勤務していたら週に何回かは訪れてしまうかも知れません。
まあ、もともと定食屋として普段からかなりお客さんが付いていますし、観光客向けに特化したお店ではないと思いますし、この界隈はそれほど会社が多くなさそうなので同じ客さんに毎日来てもらうようにする為には、学食や社員食堂などのように豊富なメニューで無難な味付けにせざるを得ないと言ったところでしょうか。
日常で利用する定食屋さんとしては好印象ですが、わらじカツ目当てに行くお店ではないかな…というのが私の感想です。
秩父の「わらじカツ丼」のまとめ
「わらじかつ丼」が一体いつから話題になり始めたのかはよく分かりません。
最近のブームは西武鉄道のCMが一役買っている部分もあるようですね。
西武鉄道にとっては、電車を利用して秩父に来て貰う事が第一の目的だと思いますが、わらじカツを食べられるお店は、駅から歩いていける場所ではないので、車やバイクでの来店が大部分であろうかと思います。
自治体がこのブームにどれだけ絡んでいるか分かりませんが、結果として地域振興に一役買っており、地元の経済にプラスの効果をもたらしているのは間違いないでしょう。
私が調べた限りでは「わらじかつ丼」ブームは自治体手動で計画的に持ち上げられたというよりも、口コミで静かなブームになっていたものが、ここ数年のスマホの普及でネット経由で大きなブームになり、テレビなどのメジャーなメディアで採りあげられた事でさらに知名度が高まったと言ったところになるかと思われます。
秩父という恵まれたロケーション
「わらじかつ丼」がヒットした重要な要素には首都圏から車で1~2時間の観光地という、秩父特有のロケーションがあります。
首都圏から日帰りで気軽に出かけて現地で1~2箇所の観光施設に寄って帰って来られるという、交通の利便性の良さもポイントになります。
さらにB級グルメという価格面での気軽さも相まって「わらじかつ丼」がこれだけヒットしているのでしょう。
同じような条件の自治体であればチャンスは充分にあると思う
首都圏から車で1~2時間程度のロケーションであれば、「わらじかつ丼」のように打ち出し方次第では地域に人を呼ぶ事は可能だと思います。
今はネットを使用して個人による情報の発信と拡散のスピードが非常に早くなっています。(因みにLaBoon!!は、ほぼ一人で運営ですが、月間で100万PV程度の閲覧数があります)
最終的にはTVなどのメジャーなメディアによる紹介も必要だとは思いますが、個人ブロガーなどによる情報拡散も初期の段階では重要な要素となります。
TV局などは視聴率を上げる為に日々ネタ探しをしている筈ですから、ネットでの知名度が上がれば何ればTVなどのメディアなどでも紹介される日が来るでしょう。
民間企業などは個人ブロガーと連携して自社のサービスや商品の情報を拡散していますから、自治体もこれに倣って個人ブロガーなどを活用してみたらどうかと思いますね。(間に企画会社を挟んでそう言った事をやっている自治体もあるようですが)
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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