みなさんは「デートカー」というワードをご存知ですか?
「デートカー」とは、まだ日本がバブルの時代に流行った言葉で「この車に乗っていれば女性にモテる!」なんていう定番自動車のことを言います。
デートカーは「スペシャリティカー」とも呼ばれ、スペシャリティカーというワードは現在でも自動車のボディタイプをカテゴリ分けするのに用いられている言葉でもあります。
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そのデートカーの先駆けはアメリカのマスタングだそうです。
確かにマスタングは今でもスポーツカーの代名詞ともいえるほど、歴史も人気もある定番車種です。
女性が助手席に乗りたくなるような車、運転していて気持ちの良い車、スタイリッシュな車、これらを併せ持つ車をデートカーと呼びます。
昔は人気のデートカーに乗っていること、またはデートカーに乗る彼氏を持つことがステータスだったようですよ。
デートカーという言葉自体が耳慣れませんが、今でいうとニッサン GT-R、ニッサン フェアレディZ、ニッサン スカイライン、トヨタ 86、トヨタ マークX、レクサス IS、Audiといったところでしょうか。
確かにどれもスポーティで、デートにはぴったりな車種ばかりです。
最近では、なんとトヨタ プリウスも人気デートカーのランキングに入るのだとか。
時代ですね。
そんな一世を風靡したデートカーですが、デートカーと言えば当時は「ホンダ プレリュード」がナンバーワンだったのですが、実は、意外な車がデートカーとしてものすごく人気でした。
実は人気のデートカーだった!ニッサン シルビアの魅力とは
ニッサン シルビアと言えば、アラサーの私の中のイメージは「S13」「S14」「S15」「ドリフトカー」が真っ先に出てきますが、これはS13以降の話のようでそれ以前は実はシルビアと言えば若者に絶大な人気を得ていたデートカーだったことをご存知ですか?
デートカーという甘い響きとは裏腹に、シルビアはかなりスポーツテイスト強めな車。
昭和から平成初期までは“となりに彼女を乗せたい車”として人気を誇っていました。
そんなシルビア、実は歴史の長い車種でもあるのです。
今回はそんなシルビアについて紹介いたします。
初代シルビア CSP311
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ニッサン シルビアが誕生したのは1965年。
今から50年以上も前にさかのぼります。
シルビアが発表された当初は「ダットサンクーペ1500」という名前でした。
当時は、自動車産業のはしりの時代でしたから、今ほど自動車のラインナップもなく、車種名も多くはありませんでした。
シルビアも当初はダットサンの派生、という位置づけでした。
ダットサンクーペ1500は50年経った今見ても、そのボディスタイルは大変美しく、斬新ですが、販売されていた3年間は、そのころから爆発的人気を誇ったスカイラインやフェアレディの陰に隠れてしまい販売台数は伸びず、生産をいったん終了させてしまいます。
その一方で、ダットサン1500の流麗なクーペラインは、当時の技術では機械式で生産することが大変難しく、手法でたたき出し、鈑金し、製造されていました。
生産コストがかかっていた背景から、スカイラインやフェアレディよりも新車価格が高額で一般庶民にはなかなか手の出せない車格となっていたことが生産台数の少なさに繋がったようです。
1965年から1968年、わずか3年間で500台ほどの生産台数でした。
生産台数が限りなく少ないこと、その中でも現存しているシルビアが少ないことが相まって、現在では中古車価格1200万円以上つけて店頭に並べられるほどのレアな車とされています。
2代目シルビア
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その後、7年間の潜伏期間を経て1975年実質2代目となるS10「ニューシルビア」が誕生します。
名前の通りエンブレムにも「NEW」の文字が掲げられ、のちのシルビアに受け継がれる「S」という型式もこのS10ニューシルビアから始まりました。
どの車種にも、ライバル車というものは必ず存在します。
ニッサンで言えば、スカイラインのライバル車種はトヨタのマークX(以前はコロナ)、フーガ(以前はセドリック・グロリア)のライバル車はトヨタのクラウン、シーマのライバル車はセルシオ(現在のLS)といった感じです。
このニューシルビアの当時のライバル車はトヨタのセリカでした。
初代シルビア、2代目シルビアともにボディデザインは欧州の斬新なデザインを使用していましたが、日本ではあまり受け入れられなかったことが原因でセリカとの販売台数の差は歴然となってしまいます。
4年の販売期間を経て、3代目となるシルビアへフルモデルチェンジされます。
3代目シルビア
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3代目となるS110型シルビアは1979年に誕生しました。
それまでの長い販売不振とは反対に月間目標販売台数を上回る受注で、シルビアでも初のヒット作となりました。
ヒットの裏には、これまでのように欧米を意識したボディデザインではなく、当時の日本での流行を取り入れたデザインにすることにより顧客の獲得に成功しました。
また、S110系シルビアでは、北米市場での展開にも成功し、シルビアの北米仕様である200SXはアメリカでもヒットする人気車種となりました。
4代目シルビア
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4代目となるS12シルビアはリトラクタブルヘッドライトを採用した流行に沿ったボディデザインを採用しました。
リトラクタブルヘッドライトといえば、トヨタの名車であるトヨタ2000GTやスプリンタートレノにも使用されていたヘッドライトで、車体内部に格納できるヘッドライトのことです。
主にスポーツカーに採用され、自動車メーカー問わずさまざまな車種に使用されました。
また、シルビアは初代から7代目となるS15シルビアに至るまで2ドアのボディスタイルを貫き通しました。
5代目シルビア
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5代目シルビアは、みなさんご存じであろうS13です。
初代から7代目通してS13系が歴代シルビアの中でもダントツの販売台数を誇っています。
それまでデートカーの王座にはホンダ プレリュードが長年居座っていましたが、このS13シルビアの登場によってプレリュードはその座をシルビアへと引き渡すこととなりました。
S13シルビアと言えば、そのデザイン性で「グッドデザイン賞」を受賞したことでも有名ですが、なんといってもマイナーチェンジによってSR20エンジンへ変更されたことが話題となりました。
それまで1800㏄のエンジンを搭載していたシルビア。
2000㏄のインタークーラーターボエンジンを搭載したことにより、さらに走行性能を増し、力強い走りを実現しました。
S13以降、すべてのシルビアにはこのSR20エンジンが搭載されることになります。
SR20エンジンは馬力もそこそこ、なんといってもタフ。
そしてチューニング次第ではとんでもない伸びしろのあるエンジンでした。
デートカーとして街乗りするユーザーはノーマルスタイルで、スポーツカーとして乗りたいユーザーはチューニングをして個性的に乗りこなしていました。
その中でもコンバーチブルタイプの発売も行われましたが、販売台数は思うように伸びず、S14には引き継がれませんでした。
S13ではグレードにJ’s、Q’s、K’sといったトランプのジャック、クイーン、キングをイメージさせた名称を採用。
この他にもダイヤセレクションという特別仕様車も発売されました。
このS13のヒットによって生まれたのが姉妹車種である180SXです。
もともと180SXは北米市場向けに製造されていた240SXをベースとして日本仕様に生産されました。
S13の売れ行きは好調でしたが、人気を継続させるためのコテ入れとして180SXは導入されたとも言われています。
1993年にS13は生産終了しましたが、6代目S14シルビアへと引き継がれます。
しかしながらS14シルビアはS13ほど人気が出ず、逆にS13で製造された180SXの人気が高まりました。
6代目シルビア
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6代目となるS14シルビアは、前型S13の期待を背負い発売されましたが、時代はすでにスペシャリティカー、デートカーの市場が販売不振になりつつあったことやシルビア史上唯一の3ナンバーであった(車幅の拡大によって余儀なくされた)こともあり、販売台数はS13に比べ減少。
当時とは裏腹に現在の中古市場ではいまだに人気の車種となっています。
その一端として今でもスポーツカー好きの間で人気の漫画イニシャルDに登場したことや、FR(フロントエンジンリアドライブ)設定の車種が絶滅寸前であることが挙げられています。
特にS14シルビア後期モデルは、優しい顔面の前期モデルとは打って変わり攻撃的な釣り目に変更。
好みでわかれますが、個人的にはS14後期モデルの顔面はイケメンで好きでした。
そんなユーザーさん、多いのではないでしょうか?
アラサーである私の時代では、S15は高額で手は届かないけど、S14前期モデルなら予算内という友人も多くて、S14前期を購入して後期顔に顔面移植するユーザーばかりでした。
この記事を読んで「懐かしい」と楽しかったあの頃を思い出してもらえると嬉しいです。
S13、S14の時代には自動車のモデルチェンジも5年スパンが主流になりました。
1993年から5年間販売されたS14も1998年年末をもって生産終了。
翌年1999年にはシルビアの最終モデルとなるS15が販売開始されました。
7代目シルビア(最終モデル)
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1999年、恐怖の大魔王が降臨するなんて言われ、世間が騒いでいたころニッサンは最終モデルとなるS15シルビアを発売しました。
S15ではそれまでJ’s、Q’s、K’sと設定されていたグレードがシンプルなスペックS(ノンターボ車)、スペックR(ターボ車)という名称へ変更し、それまで5速だけだったミッションにも6速を追加設定しました。
また、S14で不評だった3ナンバーを再び5ナンバー規格へ戻しました。
S15の発売と同時にS13,S14とともに活躍した180SXの生産を終了させました。
S15シルビアは3年という短い販売期間だったために、現存する車両台数も少なく、極上車となると生産終了から14年経過した今でも高額で取引されています。
シルビアのおすすめポイントは?
最近の自動車は低燃費で、いかにエコかどうかが基準となっていますが、シルビアを選ぶとしたらそうした概念は捨てなければなりません。
決して燃費もよくはないですし、維持費も高額です。メンテナンスもまめにしなければなりません。
ですが、シルビアを選ぶとしたらやっぱり「運転の楽しさ」を一番に感じられる車だということです。
今現在販売している新車に、マニュアルミッションを搭載した車両はどれほどあるでしょうか?
限りなく少ないはずです。
そのため、ミッション車に乗りたいユーザーはこうした生産終了を余儀なくされた車種を探すしかないのです。
その選択肢の中に必ずシルビアは入るのではないでしょうか?
S13、S14であれば中古車台数も十分ありますし、オートマチックと同じくらいミッション車両も出回っています。
シルビアのイマイチなポイントとは?
個人的にはとても大好きな車種なのでイマイチなポイントは「ない!」と声を大にして叫びたいところですが、挙げるとすれば
維持費が高い…事故率の高い車両ですので、比例して保険料も高額になっているようです。
また、ハイオク設定だったりしますから、レギュラーガソリンよりも1リットル当たりの単価が高いうえ、かなり食いしん坊のため、燃料補給が頻繁であることは間違いないです。
極上車両が少ない…上にも書きましたが、車種が車種なだけに事故率がとても高く、修復歴のない車両を探すと少ないかもしれません。
時代にそぐわない…私が若かったころは、街中でもこうしたスポーツカーをよく目にしましたが、今はあまり見かけることもなくなりつつあるように感じます。
むしろ走っていたらジッと見ちゃいます。
今は車検を取るにもこうした車両には厳しいですし、目立ちすぎて警察のお世話にもなりかねません。
スポーツカーである以上、やはり車高が高くてはミスマッチですし、マフラーも変えたいところですよね。
でも、公道で乗り回すには、ある程度常識の範囲内での改造になります。
そうすると、シルビアならではの“おもしろみ”が半減してしまうのでは?と悩むところです。
そんなシルビアの中古車相場とは?
シルビアは歴史が古く、7代もありますのでいくつか私の気になるものの相場を紹介いたします!
なんといってもS15 最終モデル
1999年(平成11年)8.7万キロ・2100㏄(?)・サンルーフ・修復歴無し→410万円
1999年(平成11年)0.8万キロ・2000㏄・スペックR・修復歴無し→315万円
2000年(平成12年)4.6万キロ・2000㏄・スペックS・修復歴無し→141万円
2001年(平成13年)22.3万キロ・2000㏄・スペックS・修復歴無し→50万円
生産終了から15年経っているとはいえ、この価格。
プレミア化しつつありますね。
普通、中古車は走行距離や修復歴で価格が左右しますが、22万キロでも50万円。
5万キロでも140万円。
若い子が手の出せる金額ではなくなっていますね。
少し年式を落としてS14
1996年(平成8年)6.2万キロ・2000㏄・K’s・修復歴あり→103万円
1993年(平成5年)6.5万キロ・2000㏄・K’s・修復歴無し→203万円
1994年(平成6年)8.2万キロ・2000㏄・K’S・修復歴無し→113万円
1996年(平成8年)8.5万キロ・2000㏄・Q’s・修復歴有り→64万円
S14でも修復歴有り無し・グレードに関係なく今でもかなり中古車相場は高めですね。
むしろ年々相場が上がってきている印象を受けます。
それだけ希少車種になっているということでしょう。
参考:http://www.goo-net.com/catalog/NISSAN/SILVIA/index.html#199805
実はS14シルビアの新車価格は上記の通り。
最高グレードのK’sでも250万円~という設定なのですが、中古車価格を見ると値減りが少ないですよね。
中古車として販売されているほとんどが100万円を超えますから、シルビアがいかにプレミア化されているかがうかがえます。
ご自宅にナンバーの外れたシルビアは眠っていませんか?
いま売却するともしかしたらかなり良い金額で買い取ってもらえるかもしれません!
番外編
1976年(昭和51年)3.0万キロ・1800㏄・修復歴無し→459万円(諸経費すべて別)
シルビアが長い歴史に幕を閉じてから14年 さらなる進化のウワサとは?
ニッサン シルビアのファンは数多くいます。
私自身もその一人です。
スカイラインの2500㏄は私には持て余しますが、シルビアの2000㏄は程よくドライバーに応えてくれます。
きっと自動車選びは憧れと自分との相性が大切だと思います。
扱いきれないほどの車だと、乗りこなせないからです。
S13、S14、S15の総販売台数はおおよそ40万台だと言われています。
決して一般大衆とは言えないシルビアですが40万人の人が、ニッサン シルビアという車に夢中になり、ともに過ごしました。
あれから14年あまりの月日が経ちましたが、ここへきてなんと「シルビア復活」のウワサを耳にしました。
そのウワサの全貌とは…
正式発表…2017年
エンジン…1600㏄ 直列4気筒ターボエンジン、1800㏄ 直列4気筒ターボエンジン
ボディ…2013年東京モーターショーで発表されたID×NISMOがベースとなるのではないか
車種名…シルビア 通称S16(エスイチロク)
今のところこれくらいの情報しか出回っていません。
また、搭載されるエンジンの候補はどのサイトもメルセデスベンツ製直列4気筒が有力ではないかと書く一方、排気量については1600㏄という情報もあれば1800㏄、2000㏄だという情報もあり錯綜しています。
2017年に発表というのも確たる裏付けがあるわけではないものの、メルセデスベンツCクラスが2017年にフルモデルチェンジをするタイミングで同エンジンを搭載したS16も発表に至るのではないかという予想がされています。
シルビアが生産終了になってから、当時の日産自動車の副社長は「もうあんな車は作らない」と雑誌のインタビューで答えたそうですが、どの自動車メーカーでもやっていないことを先駆けて挑戦してきたのがこれまでの日産自動車の歴史です。
2012年トヨタ自動車はかつての名車であるスプリンタートレノ、カローラレビンの後継車種「86(ハチロク)」の復活に成功しました。
これを受けてニッサン シルビアが今後どう展開していくのか、ファンならずとも目が離せませんね。
(ライター:中古車査定士ryo)
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