数多くの砲台跡が残る戦火の痕跡を走破、国境の島を一周するドライブは全てがスペシャル、異国の雰囲気に浸りながら。
ドライブだけでなく、文化財や重要スポットを本気で見て回るならば絶対に1日では終わりませんので、綿密な計画を立てて行きたい盛りだくさんの島です。
特に宿は空きが少なくなかなか取りにくいので、時期によっては早めの予約が必要になる場合があります。
時間的に余裕があるなら3日間ぐらいのプランをオススメします。
対馬について
東西18km南北82km、韓国まで約50kmの位置にあるこの島は、大陸との特異な位置関係のため古来より重要な役割を担ってきました。
ユーラシア大陸と日本との間で文化や物品の往来が盛んで、交流の窓口としての役割を果たしてきました。
大陸との交流の起点となる一方で武力衝突の要衝であり、防人(さきもり)が置かれたなどの歴史から始まり、元寇の侵略を受けるなど常に争いにさらされてきた戦火の絶えない場所です。
壱岐島と違って全体的に山がちで急峻な山稜もあり、90%近い面積を占める山林を縫いながらのドライブは遥か海を見下ろす素晴らしい景観の場所もあり、他には無い雰囲気が楽しめます。
対馬、下島のドライブ
長い航路を経て辿り着く離島、またドエライ所へ来てしまったという感覚からのスタートになります。
カーフェリーが就航する対馬最大の町厳原へ、徒歩圏内に様々な要素が集約されていますので、点在する立派な寺院や街並みを楽しむなどドライブの前に港に車を停めて散策してみるのもオススメです。
沢山の石塔が立ち並び、杉の巨木を擁する「万松院」は押さえておきたい名勝です。
八幡宮神社や武家屋敷跡など、計画にゆとりがあれば訪れたい情緒あふれる街並みです。
県道24号線を南へ
南西端の町豆酘崎(つつ)を目指します。
道中まず最初の見どころ「お船江跡」は、船を係留するために久田川河口に築かれた石積みの突堤で、1663年造成と言われています。
とても見つけにくい場所にありますのでうっかり通り過ぎてしまわないように注意が必要です。
標高を上げながらのドライブからは時おり海岸線が見え、古くからの集落を見下ろしながら人々の暮らしと歴史を感じつつ南下していきます。
豆酘崎には1909年初灯の豆酘崎灯台が立っており、キャンプ場や遊歩道が整備された尾崎山自然公園となっています。
この集落にある多久頭魂(たくづだま)神社は879年建立の歴史ある古社で、素晴らしい叢林の中に鎮座する佇まいは神妙な風格が漂います。
県道192号線経由で再び厳原へ
豆酘から北上していくと「美女塚」の石碑が見えてきます。
この地区には美人に生まれてしまったが故の悲しい物語があるそうで、美人が産まれないようにとの願が込められた石碑だそうです。
情報によりますと豆酘には今も美人が多いそうです、一回引き返そうかな・・・という気になります(笑)。
*こぼれ話、明治時代から始まったミス日本(的コンテスト)の初代グランプリは対馬の女性だそうですwww。
厳原へと山を半分ほど登り返すと「鮎もどし自然公園」が見えてきます。
全国でも珍しいという、滑らかな1枚の花崗岩で形成された渓流で、国定公園の中にあって更に特別保護区に指定されている貴重な自然景観です。
山を越え西海岸へ
厳原へ戻ってさらに北上、県道44号線は西へと山を越える峠から「上見坂(かみざか)公園」に立ち寄りましょう。
ここは正に絶景!、展望台からは北には日本有数のリアス式海岸「浅茅(あそう)湾」が望め、神秘的な山容を誇る信仰の山「白嶽」が遠望できます。
条件が良ければ韓国や九州まで見えるイチオシの展望スポットなのです。
恐らく対馬を訪れた多くの人が初めて目にするであろう戦時中の砲台跡も残っており、戦火の様子が生々しく想起される貴重な場所です。
西海岸へと下りきると「体験であい塾、匠」にて「せん」を食してみてはいかがでしょう。
せんとは芋を発酵させて乾かせ、粉末にしたものだそうで、ざるそば形式で食する不思議な風味と食感の食べ物です。
この周辺の若田石硯(すずり)は、かの紫式部が源氏物語を執筆した際に愛用したと伝えられている対馬を代表する伝統工芸、漆黒に輝く素晴らしい逸品でございます。
椎根(しいね)の石屋根に足を運びましょう。
石屋根は日本でも対馬だけに見られる建造物で、しかもこの椎根地区の他に数か所のみに見られる大変貴重なものです。
海風の強いこの地方で屋根が飛んでしまわないための対策だったとか、気候の厳しさを物語っています。
これだけの石が積んである屋根、逆に何かちょっと恐い気もしますが・・・。
県道44号線を登り返して東海岸に戻ってもいいのですが、折角ですから県道24号線を北へと海沿いをドライブしましょう。
十分に時間が許すなら「金田城跡」への登山も面白いです。
ここは岩山の上に気付かれた延々と長い石垣が続きます、よくもまぁこれだけの石を山中に積み上げたなぁと、先人の物凄さを感じることができます。
頂上には大規模の軍施設跡があり、往時の緊張感が垣間見えます。
再び東海岸へ
「対馬ふるさと伝承館」に立ち寄りましょう、ここでは対馬名物「いりやき蕎麦」がオススメです。
地鶏とたっぷりの野菜を入れた鍋風の蕎麦で、醤油が効いていてとても美味しいです。
上記のコースをじっくり見て回ったならばこのあたりで1日目が終了します、併設の温泉でドライブの回想に浸るのもいいですね。
厳原で宿泊するのであれば、港から北へと延びる川沿いに雰囲気のあるディープな飲食店が立ち並んでいますので、ドライブに上乗せで楽みたい場所です。
海産物の宝庫であるこの島は言うまでもなく素晴らしい料理が出てきます。
私は居酒屋を5件ほどハシゴしてしまいました(苦笑)。
下島から上島へ、対馬最北端を目指して
北へ向かうと程なく現れる「万関橋」は1900年に旧日本海軍が海運のショートカットとして岩を削り抜いた人工的な海峡です。
橋のそばに対馬万関憩いの広場があり、先述の椎谷の石屋根の模した休憩所などがあります。
展望所から眺めていると、岩を掘削して海を繋げるなんて凄い事するなぁ・・・、という純粋な驚きの念がこみ上げてきます。
上島時計回りドライブの最初のスポット「和多都美神社(わたづみじんじゃ)」です。
境内から振り返ると5つの鳥居が一直線に立ち並び、そのうちの2つが海に建っているという珍しい神社です。
海幸彦山幸彦伝説の発祥と言われるこの神社、入り江深くにひっそりと建つ、何とも言えない雰囲気が漂う名刹です。
「烏帽子岳(えぼしだけ)展望台」は浅茅(あそう)湾を俯瞰する絶好の展望台で、素晴らしいリアス式海岸が広がります。
白嶽も遠望できますし、これほどまでに美しい海岸美はなかなかお目にかかれるものではありませんので、必見とも言える是非とも立ち寄りたい場所です。
国道382号線を北へと走ります。
対馬には素晴らしい神社が数多くあります、その中でも最も格式が高いとされるのがこの「海神神社」です。
荘厳な空気が漂う境内と立派な社殿、信仰の深さが伝わってきます。
海岸沿いに立ち並ぶ奇妙な石積み「藻小屋」も併せて見ておきたい、興味深いドライブスポットです。
漂着した藻を拾い集めて貯蔵するための蔵だったようで、先出の石屋根も含め文化の特殊性を感じることができます。
日本最北西端へ
さらに北へと進むと「ツシマヤマネコに注意!」なる看板が出てきます、面白い冗談だと思っていたらヤマネコの交通事故による個体数減少は深刻な問題だそうです。
棹崎公園(さおざきこうえん)までは走りやすい道ののんびりドライブ。
ここも数基の砲台跡があり、武力衝突の最前線だったであろう何とも言えない威圧感漂う場所です。
隣接されている対馬野生生物保護センターではツシマヤマネコが飼育されています、愛らしい姿を是非みてください。
野生のネコなので厳しい顔つきかと思いきや、とても柔和で柔らかくて可愛らしいです。
「異国の見える丘展望台」は千俵蒔山(せんびょうまきやま)の中腹にある展望台で、標高が高いのでより遠くまで見渡せるようです。
私が訪れた時には何らかの理由で通行止めになっていましたが、開通していればドライブスポットとして訪れてみてはいかかでしょうか。
いよいよ対馬最北端「韓国展望所」です。
いかにも韓国風の展望台があり、対岸に異国を望める数少ない場所の一つです。
眼下には海栗島(うにしま)があり、良質のウニが採れることから名付けられました。
今でも自衛隊がレーダー警備をしているようで、現代にも緊張を引き継いでいる施設です。
地殻の鰐浦(わにうら)地区は、対馬市の木の指定されてるヒトツバタゴという木の大群落があり、国指定天然記念物にも指定されています。
4月下旬から5月上旬に物凄い数の白い花が咲き、月光を反射して海を照らす様子からウミテラシの別称があります。
豊砲台跡は「撃たずの砲台」とも言われる当時世界最大級の圧巻の迫力を持つ砲台で、多くが山中にある砲台の中、足を運びやすい立地ですので是非とも見ておきたい建造物です。
じっくり見て回ったならばこのあたりで2日目が終了します、「上対馬温泉渚の湯」でドライブの回想に浸るのもいいですね。
対馬北部で最も開けた比田勝地区はハングルの記述が多く目につく、韓国の雰囲気が漂う町です。
飲食店のメニューも基本ハングル併記です、むしろ日本語よりハングル重視な店もあります。
厳原と同じく、路地裏に入ると雰囲気のあるディープな飲食店が立ち並んでいますので、ドライブに上乗せで楽みたい場所です。
対馬のアナゴは全国の15%を漁獲高を占める名ブランド、特に西の漁場で捕れるものは格別で、シンプルな味醂干し焼きは素晴らしい旨味でございました。
厳原港への帰還
比田勝から県道39号線を南へ、「琴(きん)の大イチョウ」は日本最古のイチョウと言われています。
推定樹齢1500年、防人の時代からこの場所でずっと人々を見守り続ける生き証人なのです。
大陸から日本に伝わった初のイチョウとも伝えられている銘木で、樹高40メートルの堂々たる体躯は悠久の歳月を感じさせる迫力があります。
一路南下、快走路が続きますのでついついスピードが出てしまいがちになりますので気を付けて運転してください。
私が通った時も1ヶ所サイン会場が開設されており、盛況を博しておりました。
「姫神山砲台跡」は日露戦争に備えて建設された対馬でも代表的な遺構で、天空の要塞と看板が書かれた案内板には否が応でもテンションが上がります。
軍用施設としての役目を終えて長い歳月が経ち、廃墟と化した戦争の遺産は一種の不気味さを醸し出しています。
登山口から徒歩30分程かかりますが、古代都市のような大規模な要塞で眺望も素晴らしく、訪れる価値の高い場所です。
一通りの見どころを押さえて厳原港へ、濃密なドライブはえも言われぬ達成感を残してエンディングを迎えます。
対馬の名峰、白嶽
独特な白い山頂部が目を引く霊峰、標高こそそれほど高くはありませんが屋久島を想起するような風格ある山です。
浅茅湾が眼下に広がり対馬全体を俯瞰し、遠くに韓国を望む秀峰からの眺めは筆舌に尽くしがたい素晴らしいものです、是非とも登ってみてください。
昼間撮影された素晴らしい写真はたくさん検索できると思いますので、私からは珍しい山頂からの夜景の写真を提供します。
生月大橋から大バエ鼻灯台へ
生月(いきつき)島はほぼ陸路最西端、16世紀末にはほとんどの島民がキリシタンだったという土地柄も相俟って、不思議な最果て感が込み上げてくる稀有な場所です。
長崎県は平戸島から北に連なる南北約10km・東西約2kmの縦長の島で、1991年に開通した美しい水色の生月大橋を渡ると左手に間もなく生月サンセットウェイがはじまります。
島へ渡って早速この絶景シーサイドロードに飛び込んで・・・といきたいのはヤマヤマなのですが、私の推奨はまず東海岸から入る時計と逆回りコースなのです!
西海岸は断崖が連なっているため都市機能は島の東側に集中しており、まずはこちらの町の風景を楽しみつつのドライブ、島の雰囲気をじっくり味わいながら気分を盛り上げていきましょう。
集落を抜けてさらに北へと車を走らせると次第に人里から遠ざかり、行き着くところまで北上するといよいよ島の最果て、大バエ鼻灯台に到達します。
この灯台からは言うまでもなく360度の素晴らしい景色が広がり、眼下には的山大島と度島。
深いブルーの美しい海は高台から見下ろしてより一層青く、これまで走ってきた道や島の姿までが一望できる絶景スポットです。
いよいよドライブは佳境へ
さぁ、息を飲む様な景観を楽しんだ後は西海岸の生月サンセットウェイを南下、10.4kmの壮大なドラマの始まりです!
この道の最大の魅力は、太平洋に忽然と浮かぶ孤島のような露岩がむき出しになった「日本離れした景観」なのです。
はて・・・、日本離れしているとは言いながら、この風景は何となくどこかで見た事あるような気が・・・
そうです!、この道は数々の自動車のCMが撮影されていることで名高い “自動車CM撮影の名所” のドライブコースなのです。
景観的にも希少なこの地域は西海国立公園に指定されており、ここは本当に日本か?!と疑うような断崖が連なるワイルドなドライブが楽しめます。
島を一周!
そんな景観に圧倒されながら進んでいると、最初によぎった最果て感はいつの間にか未知なる孤島を走っている感覚へと変わり・・・、そしてその心の小旅行は島を一周して生月大橋が目に入ってきた瞬間に突然終焉を迎える。
このハッと我に返る瞬間の感動、これが冒頭で申し上げました「時計と逆回りコース」をオススメする理由なのです。
素晴らしいトラスの生月大橋、これまでの道程を締めくくるにふさわしい景観があなたを迎えてくれます。
距離にすればたった10.4kmのドライブなのかも知れません。
しかし心に焼きついて消えないストーリーがそこにあります。
陸路の果てからの東シナ海へと沈む夕陽・・・、他では味わえない感慨としていつまでも心に刻まれることでしょう。
ドライブの締めは生月大橋たもとの道の駅「生月大橋」にて一息ついて、ゆっくりと回想にふけるのも良いですね。
ドライブだけで終わるのは勿体ない
この生月島、ドライブだけで終わるのは勿体ない程の見どころ満載の島なので、是非ともゆとりある計画で島全体を満喫していただきたいものです。
- 生月大橋~400mの海中橋脚間はこの建造方式では世界最長を誇る。
- 大バエ灯台~断崖絶壁に立つ最北端の灯台。
- 塩俵の断崖~六角形の柱状節理が荒々しい景観を醸す断崖。
- 塩俵の断崖~六角形の柱状節理が荒々しい景観を醸す断崖。
- 生月町博物館「島の館」~ 島の歴史や捕鯨・隠れキリシタンに関する資料を蔵する博物館。
- カトリック山田教会~島の核心部を見下ろす、荘厳な教会。
- 生月大魚籃観音~舘浦漁港を俯瞰する高台に立つ、日本一大きいブロンズ像。
- 長瀬八洞、はなぐり洞門~玄武岩をえぐり出した、玄海の荒海が作り出した造形。
- 山頭草原~牧歌的な景色が広がるのどかな草原。/li>
- 道の駅 生月大橋~の前に架かる橋は圧巻!、生月島の入り口にある可愛らしい道の駅。
TEL:0950-22-4111(平戸市観光課)
生月(いきつき)という島名の由来
遣隋使・遣唐使の時代に中国から日本へ帰国する旅人が、船上からこの島を見つけると無事に帰ってこられたと安心してホッと息をついたことから、といわれている。
– 出展 Wikipedia –
(ライター:セレス)
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