「2560×1440」の高解像度に対応したドライブレコーダー「X-RUN M7」を開発元のアーキサイトさんにお借りする事が出来ましたのでレビュー報告いたします。
「アーキサイト」という社名からアルミニウムの原料である「ボーキサイト」を連想してしまいましたが、それはさておき…
「アーキサイト」という会社は、サーバー管理事業やPCパーツの輸入代理店業務などを行う秋葉原の会社ですが、専用のサポートフォームの設置など、ユーザーサポートはかなりしっかりしているような印象です。
台湾の電子機器メーカーの「INSTANT TECHNOLOGY社」と共同で立ち上げた「X-RUN」というブランド自体が、2017年の3月に生まれたばかりで「X-RUN M7」自体も3月に発売されたばかりの新製品です。
国内のドライブレコーダー市場はやや飽和気味となっていますので、後発メーカーにはなかなか厳しい状況となっています。
ただし、そのような状態でも他社との差別化が出来ており、さらに製品の完成度が高く、サポート対応もしっかりしているメーカーであればまだまだチャンスは充分にあると感じています。
「X-RUN M7」は高画質でなかなか面白いと感じましたので、画質重視のハイエンドモデルを探しているユーザーは検討してみる価値はあるかと思います。
「X-RUN M7」のスペックと特筆すべきポイント
「X-RUN M7」は内蔵バッテリーによる駐車監視を行うタイプのドライブレコーダーでGPSは内蔵していません。
これは今時のハイエンドモデルとしては珍しい構成かと思います。
また、一部の台湾メーカーはパパゴなどの一部のメーカーを除いて、西日本LED信号に対応していないように見受けられますが、「X-RUN M7」についてはフレームレートを補正する事で対応済みとなっています。
下のスペック一覧をご覧頂けるとお気づきになるかと思いますが、「X-RUN M7」の特筆すべきポイントは次の3つの解像度とフレームレートです。
- 2880×2160/24fps(アスペクト比 4:3)
- 2560×1440/30fps(アスペクト比 16:9)
- 1920×1080/60fps(アスペクト比 16:9)
このうち「2880×2160/24fps」の設定は30fpsの動画を見慣れているとややカクツキが強く感じられます。
その理由からかメーカーのセールススペック的には「2560×1440/30fps」となっていますので、「X-RUN M7」の詳細については「2560×1440/30fps」を基準として説明を行います。
※部分的に「2880×2160/24fps」「1920×1080/60fps」の比較動画もあり。
発売日:2017年3月
解像度:2880×2160/24fps
2560×1440/30fps
2304×1296/30fps
1920×1080/60fps
1920×1080/30fps
全国LED信号:対応
フレームレート:60fps/30fps/24fps
水平視野角:118°
逆光対策:WDR
GPS:なし
付属microSDカード:8GB
microSDカード最大対応:32GB
駐車監視の起動:エンジンオフで自動起動(内蔵バッテリーを使用)
駐車監視の仕様:動体検知、もしくは衝撃検知のいずれかを設定
「X-RUN M7」の比較ポイント
「X-RUN M7」を評価する上で他社のハイエンドモデルと比較したポイントは以下の7点です。
- マウントを含めたコンパクトさや設置のし易さ
- 視野角の広さ
- 精細感やナンバー認識の精度
- 逆光補正の強さ
- 夜間の明るさ
- 駐車監視の利便性の高さ
- その他の付加機能の充実度
マウントを含めたコンパクトさ
デザインや大きさの面では、このクラスでは標準サイズと言ったところで、横長の形状を含めてケンウッドの「DRV-610」と同等クラスです。
他の同じクラスのモデルとの比較ではユピテルの「DRY-ST7000c」よりも大きく、コムテックの「HDR-352GH」よりも小さいと言った感じです。
ミラー裏への設置に関しては普通の車であれば問題ないレベルでしょう。
因みにAmazonの評価では「マウント」のシールが白系で目立つ点、マウントの剛性不足で振動を広い易いなどの指摘が見られます。
確かにこのクラスのドライブレコーダーを購入する層をイメージすると「なぜ白?」と私も感じる部分がありました。
マウントの剛性に関しては、確かに柄が長いので振動が増幅され易い構造だと思いますが、他社モデルと比べて特別にブレが多いと感じるほどではありません。
ランエボXのエンジンの振動はかなりハンパないですし、足回りは普通の車と比べるとガチガチですが(笑)、ブレについては動画でご判断下さい。
視野角の広さ
水平視野角についてはスペック表には118°と記載されていますが、録画された動画の視野角は121°の「DRV-610」よりもかなり広めで、ユピテルの「DRY-ST7000c」とほぼ同等となっています。
なかなか控え目なスペック表記は良いんじゃないでしょうか?(笑)
多分123~124°位はあると思います。
精細感やナンバー認識の精度
解像度的には「2560×1440/30fps」はユピテルの「DRY-ST7000c」と同等で、現状知る限りナンバーの認識精度が最も高いのは「DRY-ST7000c」となっています。
その「DRY-ST7000c」との比較は以下の動画の通りです。
同じ解像度の設定では「DRY-ST7000c」の方がコントラストが強く、ナンバーの認識精度は高そうです。
とは言え「1920×1080」とは比べるまでもない高い精細感だと言えますね。
因みに解像度を最大の「2880×2160」に上げると「DRY-ST7000c」とほぼ同等の精細感となります。
精細感は高い感じがしますが、やはりコントラストが弱いからか、CMOSセンサーがボトルネックなのかは分かりませんが、若干「DRY-ST7000c」の方が文字の判別がし易いように感じます。
「2880×2160」のデメリットはややカクツキが感じられる点ですが、気にならない人もいるかも知れませんので以下の動画で判断してください。
因みにケンウッドの「DRV-610」は27.5fpsなのでそれよりも1割程度fpsが少ないだけです。
私の場合は普段30fpsを見慣れているので若干カクツキが感じられます。
因みに「X-RUN M7」の売りであるフルハイビジョン60fpsの動画はこんな感じです。
再生環境や普段見慣れている動画にもよりますが、この動画が「滑らかで良い!」と感じられる人にはドライブ動画の撮影など、趣味利用でもおすすめですね。
逆光補正の強さ
逆光補正については強すぎず、弱すぎず一般的なレベルだと思います。
状況証拠能力を考えるとガッツリ補正が入っていた方が良いですが、あまりにも強すぎる補正は景色などの色目がおかしな感じになります。
コムテックの「HDR-352GH」は視野角と補正に特化したモデルなので状況証拠能力は高いですが、その分ナンバーの読み取り精度が低く、色目も自然ではありません。
この辺りは好みやドライブレコーダー導入の目的によりますが、要はどの程度までナンバーの読み取り精度を求めて景色も綺麗に撮りたいを考えているかですね。
まあ、このクラスのモデルを検討している方はその辺りには詳しいと思いますので、好みで選んで良いのではないでしょうか。
夜間の明るさ
夜間の明るさに関しては「X-RUN M7」はトップクラスだと思います。
というのは、ここで比較している「HDR-352GH」はガッツリ補正を効かせた鬼レベルの明るさ、「DRY-ST7000c」は補正なしではかなり明るめのドライブレコーダーになるのですが、「HDR-352GH」と「DRY-ST7000c」の間の明るさだからです。
この動画だけを見ると「DRY-ST7000c」が暗く感じますが、他のドライブレコーダーに比べるとかなり明るい方です。
という訳なので補正で無理矢理明るくしているコムテックの「HDR-352GH」を除くと、ひょっとすると今まで見てきたドライブレコーダーの中で夜間は一番明るいかもしれません。
駐車監視の利便性の高さ
駐車監視に関しては内蔵バッテリーで40分の駆動が可能となっており、動体検知か衝撃検知を選択して運用する仕様となっています。(動体検知はかなり敏感)
内蔵バッテリータイプは満充電にかなり時間が掛かりますし、長時間の駐車監視を行うのであれば他社の常時電源ケーブルを流用するか、モバイルバッテリーなどの外部電源が必要となります。
■ ドライブレコーダー 駐車監視用の常時電源ケーブルを5つ紹介
■ モバイルバッテリーから給電・充電出来るドライブレコーダー
なお、試しに13,000mAh程度の蓄電量があるモバイルバッテリーで録画しっ放しにしてみましたが、25~26時間の連続録画が可能でした。
「X-RUN M7」は0.5~0.6Aの電流が常時流れている感じですね。
なお、「X-RUN M7」で長時間の駐車監視を行う場合は、内蔵バッテリーからの給電で作動する「動体検知」は使用出来ませんので、走行時と同様に常時録画+イベント録画で駐車監視を行う事になります。
その他の付加機能の充実度
「X-RUN M7」には安全運転支援機能などはありませんが、microHDMI端子から家庭のテレビなどへの動画の出力が可能となっています。
テレビで再生するにはこのタイプのケーブルが必要になります。
大容量のmicroSDカード使用状況
「X-RUN M7」は解像度やフレームレートが高い為、ドライブなどの長時間の録画を要する場合にはそれなりの容量のmicroSDカードが必要となります。
スペック表では32GBまでとなっていますが、1ファイル5分の録画容量が「2880×2160/24fps」では1G近くなります。(1時間で12GB)
「2560×1440/30fps」と「1920×1080/60fps」でも750MB程度になりますので3時間ちょいで上書きされてしまう計算です。(1時間で9GB近く使う)
規格外の容量のmicroSDカードに関しては以下のブランドの物をテストしました。
「X-RUN M7」本体のフォーマットで1時間以上の録画・再生を行い、問題が確認出来なかったものを○としています。
アーキサイト | X-RUN M7 標準32GBまで | |||
---|---|---|---|---|
128GB | Team 128GB | TOSHIBA 128GB | Transcend 128GB | SanDisk 128GB |
使用フォーマッター | ドラレコ○ | ドラレコ○ | ドラレコ○ | ドラレコ○ |
200GB | - | - | - | SanDisk 200GB |
使用フォーマッター | - | - | - | ドラレコ○ |
〇の物は1時間以上の正常な動作・再生を確認 |
結論としては試した全てのカードで録画・再生が可能でしたので、最高解像度でも200GBのmicroSDを使用すれば18時間程度の録画が可能となります。(メーカー保証対象外です)
インターフェイスは直観的で使いやすい
「X-RUN M7」は本体が大き目ですが、その分液晶も2.7インチと大きく、左右に3つずつボタンが配置されています。
インターフェイスも直観的に操作が可能な為、比較的操作し易い部類に入ると思います。
「X-RUN M7」の総評
このクラスのドライブレコーダーの購入を検討している方は、事故の際の状況証拠だけでなく、当て逃げ対策やドライブ動画を撮影したいなどの趣味的な利用を考えている人、もしくはガジェット好きでオーバースペックなものについつい手を出してしまう人でしょう(笑)
「X-RUN M7」について細かい部分を抜きにして一言で評価すると、画質などの面では「精細感」・「視野角」・「夜間の明るさ」の3つともかなりの高評価です。
駐車監視を考えないのであればユピテルの「DRY-ST7000c」がガチで競合してくると思いますが、動画の画質自体に明確な差はないので、フルハイビジョンの60fpsをどう受け取るかといったところでしょうか。
フルハイビジョンで水平視野角120°超(体感では)なら、かなり実用的にも優れていますが、プラスアルファの部分で精細感を求めるか、滑らかさを求めるかという事ですね。
なお、長時間の駐車監視は可能ですが、使用電力がそこそこあるので(0.5~0.6A流れている)、その部分を考えると0.3A~0.4Aの「DRY-ST7000c」の方が有利になります。
「X-RUN M7」は全体から見ると好バランスで、オールマイティですが、対「DRY-ST7000c」で考えるとやや趣味寄りの特性が強いドライブレコーダーだと思います。
「DRY-ST7000c」との違いをまとめると以下の通りです。
- MAX解像度での文字の認識精度~「DRY-ST7000c」の方がほんの少しだけ高い
- 夜間の明るさ~「X-RUN M7」は超明るい、「DRY-ST7000c」はかなり明るい部類
- GPSの有無~「X-RUN M7」なし、「DRY-ST7000c」あり
- 外部出力の有無~「X-RUN M7」あり、「DRY-ST7000c」なし
- 駐車監視用の専用ケーブル~「X-RUN M7」なし、「DRY-ST7000c」あり
- 駆動電流~「X-RUN M7」0.5~0.6A、「DRY-ST7000c」0.3~0.4A
- 安全運転支援機能~「X-RUN M7」なし、「DRY-ST7000c」あり
- サイズ~「X-RUN M7」やや大きい、「DRY-ST7000c」小さい
因みにGPSがなくても内蔵バッテリーがありますので、常にバッテリーが空に近い状態でなければ設定はそんなに簡単には飛ばないと思います。
価格的には「X-RUN M7」の方が若干安いですが、このグレードは価格で選ぶところではないと思いますので、あとは好みで決めて下さい(笑)
個人的には画質設定が豊富で高性能、高次元のバランスモデルなのでかなり面白いドライブレコーダーだと感じました。
(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣)
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