ヘッドライトを明るくする事のメリットとデメリット

以前から夜間のドライブレコーダーの録画映像の視認性を高める為には、「ヘッドライトを明るいものに交換する事が有効であろう」と考えていたのですが、明る過ぎるヘッドライトは対向車や先行車両のドライバーを眩惑する可能性があります。

このような理由から、個人の趣味で楽しむならともかく、LaBoon!!として公式にヘッドライトの交換を推奨するような記事は積極的には書いて来ませんでした。

ただし、ドライブレコーダーの映像の視認性が向上するというメリットは確実にありそうですので、いずれは何らかの形で実証してみようと考えていたところ、ライト関連の国内人気メーカーの「fcl.」さんよりサンプルご提供のお話を頂きましたので、改めて明るいヘッドライトのメリットとデメリットについて考えておこうと思います。

■ fcl.公式サイト

明るいヘッドライトのメリット

ヘッドライトを明るいものに交換する際のメリットは、敢えて深く考える必要もなく、①夜間運転時の視認性が増し、事故を起こす確率が下がる事が期待出来る点です。

また、②夜間の見通しの悪い交差点などでも、相手側の車両に自車の存在を早めに認知させる点でも有効でしょう。

これらに関してはおそらく異論がある方はいないだろうと思いますし、自動車メーカーも原則としては限られたコストと出力の中でより明るさの出るヘッドライトを採用しているであろうかと思います。

さらに私が期待する3つ目のメリットは、ドライブレコーダーの夜間撮影能力の向上です。

この点に関しては未だ未検証ですので、確定事項ではありません。

明るいヘッドライトのデメリット

逆にヘッドライトを明るくする事で考えられるデメリットについて考えてみましょう。

純粋にヘッドライトが明るくなる事で考えられるデメリットは、冒頭でも述べたように①対向車や先行車両のドライバーを眩惑する可能性が高くなるという点に尽きるかと思います。

ただし、自動車メーカーは少ない出力でより明るいヘッドライトを限られたコストの中で採用する傾向がありますし、対向車や先行車からの見え方よりも、該当車両を運転するドライバーの視認性の改善を重要視して、なるべく明るいものを選んでいると言えそうです。

因みに、fcl.さんによれば、メーカーのLEDヘッドライトの明るさは熱対策の面で限界に達しているようで、現状のトレンドは上記で挙げた問題点である対向車への眩惑対策を盛り込みつつ、単純な明るさに頼ること無く、従来よりも視認性を高める方向性との事です。

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保安基準や車検におけるヘッドライトの扱い

明るいヘッドライトの是非を考える上で最も参考になるのは、法令として強制力を備える保安基準です。

まずは最も気になる保安基準や車検におけるヘッドライトのロービームに関する規定ですが、明るさの下限は特定の測定ポイントにおける明るさが「6,400カンデラ以上」とされています。(平成10年9月1日以降の制作車)

■ 国土交通省~整備工場における前照灯の取扱いについて

③光度測定点(路面点相当)における光度が 6,400 カンデラ以上であること。

一方で、明るさの上限については保安基準の第42条には以下のような記載がありますが、明るさの上限が適用されるのはハイビームのみのようです。(ホントかよ?…と思ったので国土交通省に問い合わせてみたのですが、ロービームには明るさの上限の基準はないそうです)

以下、走行用前照灯はハイビームすれ違い用前照灯はロービームを指します。

■ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2018.07.19】〈第1節〉第42条(前照灯等)【2018.07.19】

イ 走行用前照灯は、その全てを同時に照射したときは、夜間にその前方100mの距離にある交通上の障害物を確認できる性能を有し、かつ、その最高光度の合計は430,000カンデラを超えないこと。

※平成17年以前に制作された車の場合は上限は225,000カンデラ年々明るさの上限の基準については緩和されている)

また、近畿運輸支局の掲載している文書でもハイビームのみ、合計で43万カンデラ以下となっていますし、ロービームの上限は記載されていません。

■ 近畿運輸支局 整備事業関係

2個又は4個(二輪車等は1個可)白色又は淡黄色 同一色 左右対称位置(二輪車にあっては走行用、すれ違い用であれば可)

夜間前方100m、進行方向を照射合計最高光度43万カンデラ以下

ここで「フォグランプはどうなのよ?」という疑問が湧きますが、フォグランプは「前部霧灯」と表記され、明るさの基準については以下のような記述があります。

■ 道路運送車両の保安基準の細目を定める告示【2018.07.19】〈第1節〉第43条(前部霧灯)

第 43 条 前部霧灯の灯光の色、明るさ等に関し、保安基準第 33 条第2項の告示で定める基準は、協定規則第 19 号の技術的な要件(同規則第4改訂版補足第 10 改訂版の規則5.、6.、7.及び 8.に限る。)に定める基準とする。

段々と訳が分からなくなりつつありますが、ここで言うところの協定規則第 19 号の規則5~7には、フォグランプの明るさに関する基準について以下のように記述されています。

■ 協定規則第19号 動力駆動車両用前部霧灯の認可に関する統一規定

6.3.5. 照明 (附則4の2.1項参照) は以下の要件を満たすものとする。

この訳の分からない基準は、車検などの現場で運用されているのだろうか…と疑問に感じますが、明るさの最小値と最大値の規定は存在していますね。

ただし、先程のハイビームの下りで出てきた43万カンデラには、フォグランプもロービームも含まれません。

なお、1カンデラは蝋燭1本の光度を指すようですが、蠟燭43万本と言われてもちょっと想像がつきません。よって、見た目での判断は無理っぽいですね。

法令に違反していなければ良いのか?という問題

保安基準ではハイビームについては43万カンデラを超えなければセーフという事になっており、ロービームには明るさの上限の基準はありませんが、夜間に走行している車でやたらとロービームが眩しいと感じる事もあります。

仮にその車の光軸がズレており、保安基準に適合していないだけならばそのドライバーの整備不良やモラルの問題になりますが、光軸が規定通りになっていた場合には「保安基準に適合していても眩しく感じる事もある」という事になりますね。

とは言え、車種や車のタイプによって車高やヘッドライトの高さも異なり、車高が高い車から低い車にヘッドライトを照射すると眩しく感じ易いですし、その逆であれば眩しく感じにくくなります。

コペンに乗っている時と、アルファードに乗っている時では後続車両との距離感、ヘッドライトの眩しさの感じ方が全く変わります。

さらに人によって眩しいと感じる明るさも異なりますので、この問題を深く考えても答えは出ない気がします。

従ってヘッドライトを明るいものに交換する場合に、以下の2つのうち、いずれの考え方をするのかは個人の自由でしょう。

①法令に違反しなければ問題ない

②他の車が眩しいと感じる可能性があるなら倫理・道徳的に問題がある

 

ただし、ヘッドライトを交換した際にはバルブのみの交換でも光軸が変わってしまう可能性があるので、光軸調整だけはディーラーや整備工場などで確実に実施した方が良いと思いますね。(まぁ、これも考え方なので個人の自由と言えば自由です)

なお、法令に適合しているヘッドライトの明るさの是非について、倫理・道徳的な面から議論するつもりはありませんので悪しからずご了承ください。

(ドライブレコーダー専門家 鈴木朝臣

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