この世に初めて自動車が誕生したのは1769年、日本がまだ江戸時代であった頃のフランスで発明された蒸気自動車で、最高速度は時速10km以下だったようです。

それでも馬車で荷物を運んでいた時代としてはとても便利なものであったに違いありません。

また、この程度の速度であれば、大変安全な乗り物であったとも考えられます。

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その後100年以上の年月を経て、イギリスで初めて時速100km超えを記録する電気自動車が発明され、ドイツでは更にスピードの出るガソリンエンジン自動車の開発へと続きますが、そうなると自動車は必ずしも安全な乗り物とは言えなくなっていたのでは、と想像出来ます。

勿論当時は交通量も少なく、自動車同士の衝突事故などはめったに発生しなかったのかも知れませんが、それだけに安全装備が充実していたとは考えられませんので、運転ミスによる単独事故や、対人事故等があれば、その被害は相当大きかったことでしょう。

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日本での乗用車の普及とそれに伴う事故の増加

日本では1960年代に入ってから大衆に乗用車が普及し始め、1964年の東京オリンピック後からは急増しましたが、それは本格的なモータリゼーションの始まりであったと同時に、交通事故増加の始まりであったとも言えます。

この時代は歩道や信号機の整備がまだ十分でなかった為に、歩行中の交通事故被害者が最も多く、1970年には死亡者数がピークに達したことから、第一次交通戦争とまで言われていました。

勿論それに対する対策がとられ、交通違反の取締り強化、交通安全教育の実施、横断歩道・ガードレール・道路標示等の交通安全施設の整備が本格的に推進されました。

その結果、1971年からは全体としての交通事故死者数は減少に転じたのですが、歩行中の事故死者に代わり、運転中の事故死者の比率が高まり始めたのです。

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事故発生時に人的被害を最小化する安全装備の導入

交通事故によって運転者や同乗者が死亡したり重傷を負ったりすることを防止する為には新たな対策が必要であり、その一つが「シートベルト着用の義務化」でした。

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日本国内で生産される乗用車には、運転席用のシートベルトを設置する事が1969年に義務化されていましたが、それを着用しない運転者は少なくなかったようです。

そこで、1971年には、高速道路や自動車専用道路での着用が努力義務とされ、その後罰則付きの義務化を経て、1992年には一般道でも運転席・助手席でのシートベルト着用が義務化されました。

更に2008年には、後部座席を含む全座席、全道路でのシートベルト着用が義務化され、今日に至っています。

そして、シートベルトに次ぐ安全装備として開発された「エアバッグ」は、1990年代の後半から急速に普及し、現在では世界中の大手自動車メーカーが生産する殆ど全ての車種の標準装備となっています。

但し、このエアバッグシステムは、SRS(Supplemental Restraint System(補助拘束装置))と呼ばれるように、あくまでもシートベルト着装を前提とし、そのSupplemental(補助)として効果を発揮するものです。

従って、シートベルト未装着の場合の効果は低く、事故時にエアバッグの衝撃で運転者が死亡するケースさえありました。

また最近では、エアバッグを膨らませる装置が異常破裂し、飛び散った破片で死傷事故が起きて大規模なリコールになるという問題も発生しています。

そうした問題があるにせよ、1970年にピークであった交通事故での死亡者数が、今や四分の一程に減少している事実から、シートベルトやエアバッグが事故発生時の運転者や同乗者の安全確保に大きく貢献していることに疑いの余地はありません。

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またこの間、運転者や同乗者のみならず、人身事故発生時に歩行者が受ける被害を最小化する目的での安全装備の開発にも力が注がれてきました。

そして誕生したものの一つが、衝突時にボンネットのフードがポップアップし、歩行者への衝撃を緩和するシステムであり、トヨタ、ホンダ、日産、マツダなど多くの国産自動車メーカーで既に導入されています。

更に最近では、衝突時にボンネット上でエアバッグを膨らませることで、歩行者の身体や頭部が受ける衝撃を和らげる安全装備が国産車で初めて、世界でもボルボ、ランドローバーに次いで3番目としてスバルの「新型インプレッサ」に標準装備されることにもなりました。

 

これらのような、事故発生時の被害を最小限にするための装置を「パッシブセーフティ」を高める安全装備と言いますが、高齢者の運転中や歩行中の事故が社会問題化する今、事故そのものを未然に防止するための装置、即ち「アクティブセーフティ」を高める安全装備の充実が各自動車メーカーの重点課題と言えます。

事故自体を未然に防止する安全装備への取り組み

アクティブセーフティを高める為の安全装備としては、急ブレーキを踏んでもタイヤをロックさせない「ABS(アンチロック・ブレーキシステム)」や、強いブレーキ力が必要な時にブレーキペダルを踏み込む力を補助する「ブレーキアシスト」、そして「横滑り防止機能」等が普及していますが、最近では以下のような機能を持った安全装備も開発されています。

1⃣走行車線をキープして自動的に車線の逸脱を防ぐ

2⃣車や人との衝突の危険を察知し、自動的にブレーキをかけて衝突を回避する

3⃣前方を走行している車に合わせて自動的に速度や進行方向を制御する

4⃣発進時にアクセル操作を間違えての誤発進を防ぐ

これらは代表的なものであり、各自動車メーカーの取り組みはこれが全てではありませんが「アクティブセーフティ」の更なる向上を目指した安全装備は確実に進化していると言えます。

アクティブセーフティを高める安全装備の充実度比較

こうして進化を続けるアクティブセーフティを高める安全装備ではありますが、その殆どが英文字やその略字、そしてカタカナの名称であったり、また、機能が同じであってもメーカーによって名称が違ったりすることから、その内容や機能が理解し難くなっています。

そこで、前述の各安全装備の4機能について、先ず国産乗用車販売台数上位5社(トヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダ)の、標準装備又はオプションでの導入状況を確認し、本年(2016年)7月に各社で最も販売台数が多かった車種(軽自動車を除く)での比較をしてみました。

そしてその中で最も安全装備が充実していると思われる車種を選んでみました。

但しこれはあくまでも安全装備の充実度での比較であり、その装備の性能や価格を考慮したものではないことを予めご承知おき下さい。

1⃣走行車線をキープして自動的に車線の逸脱を防ぐ機能

2⃣車や人との衝突の危険を察知し、自動的にブレーキをかけて衝突を回避する

3⃣前方を走行している車に合わせて自動的に速度や進行方向を制御する機能

4⃣発進時にアクセル操作を間違えての誤発進を防ぐ機能

走行車線をキープして自動的に車線の逸脱を防ぐ機能

車種詳細
トヨタ・プリウスレーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付)
単眼カメラで白線(黄線)を認識し、運転者のウィンカー操作がない状態で車線を越えそうになった場合にはディスプレイ表示ブザーで警告し、さらに電動パワーステアリングの制御で、車線逸脱の回避をサポートする。
ホンダ・フィットこの車種には未装備
日産・ノートLDW(レーンデパーチャーワーニング:車線逸脱警報)
注意を与え、車線内走行に戻すことを促す。
スバル・インプレッサアクティブレーンキープ
高速道路や自動車専用道路などを時速約65km以上で走行時、ステレオカメラによって走行車線を認識し、車線を越えそうになるとステアリング操作をアシストして車線逸脱を抑制する。
マツダ・デミオLDWS(レーンデパーチャーワーニングシステム:車線逸脱警報システム)
走行中の車線を感知し、クルマが車線を逸脱すると予測された場合に運転者に警告するシステムであり、ウィンカー操作中や加速中など、運転者が意図的に車線を越えようとしていると認識した場合には警告がキャンセルされる。

車や人との衝突の危険を察知し、自動的にブレーキをかけて衝突を回避する

車種詳細
トヨタ・プリウスプリクラッシュセーフティシステム(歩行者検知機能付衝突回避支援)
時速10km以上(180kmまで)で走行中、ミリ波レーダーと単眼カメラの組み合わせで先行車を検知し、衝突の危険を察知した場合にはディスプレイ表示ブザーで運転者に危険を知らせ、それでも安全に減速されなかった場合には、緊急ブレーキが作動して衝突の回避、もしくは衝突による被害の低減を図る。また、歩行者に対しては、時速10km~80kmの速度域での作動となる。
ホンダ・フィットシティブレーキアクティブシステム(低速域衝突軽減ブレーキ)
時速30km以下で走行中、レーザーレーダーが先行車を認識し、衝突の危険を察知した場合にはブザーインジケーターの表示で運転者に危険を知らせ、それでも減速されなかった場合には、緊急ブレーキが作動して衝突の回避、もしくは衝突による被害の低減を図る。
日産・ノートエマージェンシーブレーキ
時速約10~80kmでの走行中、フロントカメラで先行車を検知し、衝突の危険を察知した場合には警告灯ブザーで運転者に危険を知らせ、それでも減速されなかった場合には、緊急ブレーキが作動して衝突の回避、もしくは衝突による被害の低減を図る。但し、停止している車両や歩行者に対しては、時速約60km以上では作動しない。
スバル・インプレッサプリクラッシュブレーキ
ステレオカメラでの監視によって、前方のクルマと衝突の危険があると判断された場合には運転者に注意を与え、それでも回避の為の操作がなされない場合にはブレーキ制御が作動して減速または停止させ、衝突の回避、もしくは衝突による被害の低減を図る。
マツダ・デミオスマート・シティ・ブレーキ・サポート[前進時](SCBS F)
時速4~30kmでの走行中、赤外線レーザーレーダーで先行車を捉え、衝突の危険を察知した場合にブレーキを自動制御して衝突の回避、もしくは衝突による被害の低減を図る。

前方を走行している車に合わせて自動的に速度や進行方向を制御する

車種詳細
トヨタ・プリウスレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)
先行車がない場合は設定した車速にて定速走行し、ミリ波レーダー単眼カメラの組み合わせで先行車を認識した場合には、その車速に応じた車間距離をキープしながらの追従走行を支援する。
ホンダ・フィットこの車種には未装備
日産・ノートこの車種には未装備
スバル・インプレッサ全車速追従機能付クルーズコントロール
先行車がない場合は時速40km~100kmの速度域で設定した車速にて定速走行し、ステレオカメラで先行車を認識した場合には、0km~100km/hの速度域でその車速に応じた車間距離を保ちながら追従走行する。
マツダ・デミオこの車種には未装備

発進時にアクセル操作を間違えての誤発進を防ぐ機能

車種詳細
トヨタ・プリウスドライブスタートコントロール
駐車場などで、アクセルを踏んだ状態で「R」レンジから「D」レンジへのシフト変更など、通常とは異なる操作をした場合には画面表示にてドライバーに注意を促し、エンジンやモーター出力の制御で急発進・急加速を抑制する。
また、インテリジェントクリアランスソナー(巻き込み警報機能付)により、車の前後にある障害物を検知した時も、エンジン出力が制御され、障害物との距離が近づくとブレーキが作動して衝突を回避する。
ホンダ・フィットシティブレーキアクティブシステム(誤発進抑制機能)
停止中や時速約10km以下での前進時に、前方約4m以内に障害物があるにも関わらず、必要以上にアクセルが踏み込まれた場合にはブザーやインジケーターの点滅で運転者に危険を知らせると同時に、エンジンの出力を抑えて急発進を抑制する。
日産・ノート踏み間違い衝突防止アシスト
低速での前進時及び後退時に、ブレーキ操作の遅れやアクセルペダルとブレーキペダルの操作間違いなどによってクルマの前後にある障害物と衝突する危険を察知した場合には、警告灯とブザーで運転者に危険を知らせ、さらに、自動的にエンジンの出力やブレーキを制御することで、衝突の回避をアシストする。
スバル・インプレッサAT誤発進抑制制御]&[AT誤後進抑制制御]
駐車場などで、前方に障害物があるとシステムが検知した場合、警告表示と警報音で運転者に注意を与えると同時に、エンジンの出力を抑えて急発進を抑制する。また、Rレンジでの急なアクセル操作とシステムが検知した場合にも、エンジンの出力を抑えて後退の飛び出しを抑制する。更に、「後退速度リミッター」によって、後退時の制限速度も設定出来る。
マツダ・デミオAT誤発進抑制制御
時速約10km以下での徐行前進時、或は停車時、前方に障害物があるにも関わらず、一定以上にアクセルが踏み込まれた場合には警報を出すのと同時に、エンジンの出力を抑えてする。

以上で分る通り、各社の現行売れ筋全5車種の中ではプリウスとインプレッサのみ、4つの機能全てが標準装備又はオプションで導入されています。

勿論、これらの車種間では車格の違いがありますが、これは、プリウスやインプレッサクラスでないとこれら4機能全ては揃わないのだ、とも言えます。

また、その2車種の中でも、インプレッサは後退時の制限速度設定も出来ることから「アクティブセーフティを高める安全装備ではインプレッサが最も充実している車種」と考えられます。

なお、現行のフィット、ノート、デミオの3車種には未装備の機能でも、今後のモデルチェンジでは導入される可能性がある事、そしてこの3社にも既に装備されている上位車種がある事などを考え合わせ、実際の購入検討時にはそれらの最新情報の収集が必要でしょう。

(ライター:ゴル)



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