2016年の秋、安全性能が更に向上された国産乗用車が登場するとのニュースが目に留まりました。

それは富士重工業が「新型インプレッサ」に標準搭載する事を決めた「衝突時に歩行者を守るエアバッグ」の話題でした。

 

このエアバッグは衝突時にボンネットの後端でフロントウィンドウ下部に沿ってU字型に膨らみ、歩行者の身体や頭部が受ける衝撃を和らげようとするものであり、ボルボ「V40」、ランドローバー「ディスカバリー・スポーツ」に次いで世界で3番目との事です。

スポンサーリンク

ボルボが最初にこのシステムを市販車に搭載してから約3年、ついに国産車メーカーのトップバッターとなった富士重工業には「やったねスバル!」と拍手を送りたい気持ちです。

富士重工は、車載カメラによる前方監視で危険を察知し、自動的にブレーキを作動させる「アイサイト」と言う運転支援システムの採用でその安全技術には既に定評がありますが、今回の歩行者保護用エアバッグの採用で、更に安全への取り組み姿勢が評価される事でしょう。

勿論、「やっちゃえ日産」やトヨタその他各社の安全への取り組みも活発化していますので、燃費などの経済面、排気ガスなどの環境面に加え、これら安全面での開発競争は大いに歓迎できます。

今や各社に「やっちゃえ日本の、いや、世界の自動車メーカー!」と大声で応援したいところです。

ところで、こうした安全技術への取り組みの背景には、何があるのでしょう?

これには世界の中でも特に日本が直面している「高齢化社会」と「若者の車離れ」が関係していると考えられます。

4055682971_3d305b3650【by:Kamil Porembiński】

高齢化社会と交通事故

今や、日本が高齢化社会である事に疑いの余地はありません。

総人口の4人に1人強が65歳以上であり、8人に1人が75歳以上、そしてこれが2060年になると4人に1人が75歳以上になると予測されています。

スポンサーリンク

この背景には「少子化」や「医学の進歩」がありますので、高齢化自体はその結果であり、決してそれ自体が問題な訳ではありません。

しかしながら、高齢者の人口比率が高くなると言う事は、高齢者の歩行者数や高齢者が運転する自動車数も増えると言う事であり、それに伴う交通事故の増加は、現実の問題として注目すべき状態になっています。

l201209031200【by sara biljana】

警察庁の資料によれば、平成15年には40%程であった65歳以上の事故死者の比率は、平成24年には51%以上に増加しています。

さらに最近では運転中に加害事故を起こす高齢者が確実に増えているとの事です。

「アクセルとブレーキの踏み間違い」や「ハンドル操作の誤り」等による事故のニュースは度々見聞きしますし、「高速道路での逆走」の7割は高齢者の運転によるものとのデータもあります。

こうした状況を改善する為には、高齢者でも安全に歩行出来る「道路への対策」や、高齢化社会に対応した運転適性検査制度の導入などによる「高齢運転者への対策」が必要な事は勿論、高齢者が運転する「自動車への対策」も急務になって来ていると言えます。

そしてそれが前述の自動車メーカー各社の安全面での開発競争に繋がっているのではないでしょうか。

スポンサーリンク

若者の車離れと交通事故

一方高齢者以外、特に若者の方はどうでしょう。

日本の若者は車を買わなくなったと言われ始めてから10年以上になりますが、今や20代の男性で車に興味や関心がある人の比率は40%程度とのデータもあります。

こうした「若者の車離れ」も、安全な車の開発必要性に間接的に関係していると思えます。

若者の車離れの背景には「経済的な理由」がある事は勿論ですが、これは単に収入面の理由だけではなく、収入に対する支出の優先順位、即ち限られた収入の使い途の多様化が考えられます。

公共交通機関に不便さを感じる地域の若者にとっては、移動手段としての車購入の優先順位は依然として高いでしょう。

しかし、それに不便さを感じていない地域の若者たちにとっては、車は高価な遊び道具に過ぎず、余程の高収入者でない限り、優先順位の低い支出と考えるのでしょう。

インターネットを通した各種エンターテイメントやコミュニケーションに時間を費やす事を惜しまず、スマホを使ったゲームに夢中になる若者たち、そしてLCCや民泊等を使った海外旅行等をもっと気軽に楽しみたいと考える若者たちは、車を購入し、それを維持する為の費用があったらそちらに回したいと考えるのは当然かもしれません。

とは言っても、たまにはドライブデートを楽しみたいとのニーズは確実にあり、そのニーズをレンタカーやカーシェアリングなどの利用で満たしている若者がいる事も事実です。

実はそこに「若者の車離れ」と「交通事故」の因果関係がありそうなのです。

運転免許は取得したが車は持たない、所謂ペーパードライバーが、たまのドライブデートで慣れないレンタカーを運転する。

ましてはスマホ無しでは暮らせなくなっている若者が、歩きスマホどころか運転中に・・・ その結果は火を見るより明らかです。

lgf01a201306242000

【by srslyguys】

若者の車離れにはもう一つの背景があります。

これは卵が先か鶏が先かの話になりますが、高価な車を持つ代わりに経済的な「自転車」を使う若者が増えているのか、健康志向の高まりによって「自転車」を使う若者が増えているので車を持たなくなっているのかのどちらか或はその両方です。

電動アシスト付の自転車に幼子を乗せて走り回るママさんたちの増加に加えて、街中をスポーツサイクルで走り抜ける若者たちも確実に増えています。

そしてその走り方には目を覆いたくなるような場面が溢れています。

自転車の通行に関する法整備がなされ、道路の整備も進んではいますが、運転免許のいらない自転車の運転ルールとマナーは十分に守られているとは言い難い状況です。

そんな中でも自動車との接触事故があれば、運転免許が必要な自動車運転手は何らかの責任を問われ、加害者となるケースが多くなってしまうのが今の日本の法律です。

故に、それを避ける為には自動車側に何等かの衝突回避システムが必要になるのです。

このように「若者の車離れ」は間接的に交通事故への影響があり、それが自動車メーカーの安全技術への取り組み活発化の背景にあると考えられます。

安全への取り組みの現状と今後

このように、「高齢化社会」や「若者の車離れ」は交通事故の原因にもなっていますし、それが自動車メーカー各社の安全面での開発競争を加速させているとも考えられます。

その結果が冒頭に記しました、富士重工の安全運転支援システム「アイサイト」や「衝突時に歩行者を守るエアバッグ」の導入に繋がっているのでしょう。

それでは他の会社、特に国産乗用車メーカー大手3社での取り組みはどうでしょう?

トヨタ自動車

トヨタ自動車は、交通事故死傷者ゼロを究極の願いとして、ミリ波レーダーやレーザーレーダーと単眼カメラを使った「Toyota Safety Sense(衝突回避支援パッケージ)」を開発しました。

このパッケージには

☑衝突の危険回避をサポートする「プリクラッシュセーフティシステム(歩行者検知機能付衝突回避支援型)」

☑車線逸脱の危険を知らせる「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御機能付)」

☑夜を見やすくする「オートマチックハイビーム」

☑車間距離を保ちながら適正走行させる「レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付/全車速追従機能付)」

…等が含まれています。

日産自動車

日産自動車は、「Safety Shield(クルマが人を守る)」という考え方の下、各種安全運転サポートシステムを開発しました。

その中には、

☑4つのカメラで撮影した映像を処理し、まるでクルマの真上から撮ったような映像をモニター画面に映し出す事で、車のまわりにある見えにくい障害物を見逃さない為の「アラウンドビューモニター」

☑車両前部に設置したレーダーセンサーを使って、先行車両の車速(約40~100km/h)に応じて、車間距離を一定に保ち、先行車両がいない場合には設定した車速を維持する「車間自動制御システム&インテリジェントクルーズコントロール」

☑車線逸脱しそうな場合の運転者支援としての「レーンデパーチャープリベンション・ワーニング」

☑追突回避の為の「インテリジェントブレーキアシスト」

…その他があります。

 

これらに加え、2018年には高速道路・複数レーンでの自動運転、2020年には一般道路での自動運転を実用化するとの計画もあります。

ホンダ技研工業

ホンダは、事故に遭わないようにする「アクティブセーフティ」と、事故の傷害を最小限にする「パッシブセーフティ」と称する技術の下、レーダーとカメラによる安全運転支援システム「Honda Sensing」を開発しました。

この中には、

☑前走者・対向車・歩行者との衝突回避を支援する「衝突軽減ブレーキ」

☑路側帯の歩行者との衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」

☑車速と車間を適切に制御する「アダプティブ・クルーズ・コントロール」

☑車線からのはみ出し防止を支援する「車線維持支援システム」

☑路外への逸脱防止用にステアリングやブレーキを制御する「路外逸脱抑制機能」

☑前に障害物が有る場合の急発進を制御する「誤発進抑制機能」

…その他があります。

 

国産自動車メーカー以外の取り組み

こうした安全への取り組みは勿論国産自動車メーカーだけに限った事ではありません。

自動車メーカーではないGoogle社による自動運転実験車の開発と公道を使った走行実験は余りにも有名ですし、メルセデス・ベンツも「Intelligent drive」を掲げ、究極の安全とは車が知性を持つ事とし、自動運転リサーチ・カーを使っての公道走行実験を繰り返しています。

 

そしてその成果の一つとも思われる技術で、車外からスマホでの操作で狭い駐車場に駐車させる「リモートパーキングパイロット」を開発し、新型車に搭載するとの発表がありました。

交通事故を未然に防止する運転支援システム、そして万が一の事故でも人的被害を最小限にする保護システム、更に究極の安全として運転者の人為的ミスを無くす自動運転システム。

これらの開発によって「自動車はどこまで安全な乗りものに出来るか」が高齢化社会や若者の車離れに直面している日本のみならず、世界中の車社会の最大課題ではないでしょうか。

2021年@某サーキット

「東京オリンピック関連施設の跡地に「FSレース用サーキット」が建設され、そのオープニング・レースが開催されました。

「FS」とは「フォーミュラS(Self-driving car)」の略であり、参加資格は、電気自動車(EVカー)をベースにした「無人運転車(SDカー)」であります。

今回は日本で初開催の国産車だけによるFSレースであった事から、参加したSDカーの過半数は、情報機器メーカー、家電メーカー、建設機械メーカー製であり、従来からの自動車メーカー製SDカーへの挑戦となりました。

レースに先立ち、デモンストレーションで行った「有人ドライブによるF1カー」5台のレースでは、1分11秒111のベストラップが記録され、このサーキットでのコースレコードとなっていましたので、SDカーがこれを上回る好タイムを出せるかが注目されていました。

ちなみに、F1でのデモンストレーション・レースでは、5台中2台がスタート直後の第1コーナーで接触し、その内の1台が大破し、ドライバーは救急搬送されましたので、FSレースでは接触事故が無いかどうかも大きな注目点でしたが、そのレースの結果は・・・」

こんな日が来る事を期待して、是非「やっちゃえ日本の全メーカー!」と応援したいものです。

(ライター:ゴル)

スポンサーリンク